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恋人に浮気され親友に裏切られ両親に見捨てられた俺は、学校のマドンナに救われた  作者: 夜空 叶ト


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第129話 妹離れができない兄でした

「空先輩って意外とそういう服似合ってるっすよね」


「空! 写真撮ってもいいかしら!? というか撮るわね!」


「別にいいけど興奮しすぎじゃない?」


 文化祭三日前。

 今日は前に注文したテイルコートが納品された日だった。

 テイルコートを受け取ったら永遠が試着してみてほしいというからこうやってきているのだがさっきから永遠が俺の全方位を回ってスマホで写真を撮っている。

 なんだか少しだけ恥ずかしい。


「いや、そんなことないわ! これはこうなって仕方ない物よ!」


「永遠姉さん少し落ち着いてくださいよ。ツーショット撮りましょうか?」


「美空ちゃん! あなた最高よ! 是非お願いするわ!」


「じゃあお二人ともハイチーズ」


 美空が構えたスマホに視線を向けて写真を撮ってもらう。


「こんな感じですけどどうですか?」


「良い感じね! 後で私のスマホに送っておいて頂戴」


「了解です!」


 こんな感じで写真を撮ったりして文化祭三日前の夜は終わった。


 ◇


「空先輩のメイド喫茶は結構順調そうですね」


「まあね。執事服とかメイド服は何とか用意できたしメニューも決まってるから後は本番でドジらないようにするだけ。接客とかそこらへんは練習したし当日のシフトも大方決まってる。あとは当日を待つのみってね」


「先輩は接客とか得意そうですしね。永遠先輩はどんな感じですか?」


「永遠も大丈夫そうだよ。もともと人が少し苦手なとこがあるけど接客くらいなら大丈夫だろうしシフトに関しても俺と一緒だからカバーできるしな」


 永遠が人のことを苦手になる理由は知っているし支えたいとも思ってる。

 でも、永遠があのトラウマを克服しようと努力するのなら協力したい。

 というか絶対にする。


「なら安心っすね」


「ああ。七海はなにするんだっけか?」


「私のクラスは少し前の事件もあって普通に物を展示するだけですね。モザイクアート? とか言うのを作ってましたよ? 私は全然参加してませんでしたけど」


「少しは参加しなさいよ」


 全くこの子はもう少し俺たち以外の人間と関わろうとしてもいいのに。

 まあ、職業的にあまり他人を信用できないのはわかるんだけどな。


「だって面倒なんですもん。メリットもないですし」


「文化祭とかってみんなと一致団結して頑張るからいいのであってメリットデメリットを求めるものじゃないだろう?」


 そこに関しては俺も人のことは言えないんだけどさ。

 正直俺はクラスの連中に興味なんか無いし。

 興味があるのは永遠だけだし。


「言い分はわかるっすけどクラスの連中は幼いし全く仲良くなろうとも思いませんし」


「そこらへんは君の勝手だけどさ。ま、いいんじゃないか? 展示ならうちのクラスに来なよ。歓迎するからさ」


「良いんすか? 後輩がずっと居座ってたら迷惑じゃないっすか?」


「そんなことないさ。気軽に来てくれればいい」


 変なナンパとかに絡まれても近くにいてくれた方が対処しやすいし。

 それにこの前あんな事件があったばかりだ。

 正直七海のクラスの人間はそこまで信用できない。

 というか信用しないほうが普通だ。

 そんな危険な場所にいるくらいなら俺の目の届く範囲にいてくれた方がありがたい。


「先輩がそういうなら行きましょうかね~」


「そうしてくれよ。サービスはできないけどな」


「そこはサービスしてくださいよ!」


 そんな話を永遠の部屋のリビングでしていたら永遠がやってくる。


「何の話をしているの?」


「普通に文化祭の話だよ。永遠は緊張とかしてない?」


「う~んどうだろ? 私一人だったらそういう事もあったかもしれないけど今回は空がいるしそこまでではないかしら。もともと人前に立つことに関しては全くと言っていいほど緊張しなかったし」


「さすがですね永遠先輩。絶対に遊びに行きますね!」


「ええ。楽しみにしているわね」


 ……そういえばだけど最近永遠と七海の仲が前よりもよくなっている気がする。

 なんでなんだろ?

 見た感じ永遠が変わったってことはなさそうだけど……

 じゃあやっぱり七海が変わったんだろうな。

 多分だけど仕事関係での後ろめたさがなくなったからなんだろうな。


「メイド服の感じはどうだった? 永遠はクラスのみんなが借りたやつを着るんだろう?」


「ええ。サイズはちょうどよかったし特段変なところはなかったわね」


「なら見せてほしかったんだけど? 永遠、頑なに俺に見せてくれないし」


「それはまあ、当日のお楽しみってやつよ。楽しみにしてて頂戴」


 どうやら自分は昨日あんなにも俺の写真を撮ったくせに俺には当日しか見せてくれないらしい。

 仕方ない。当日は眼球が破裂する寸前まで永遠のメイド服を目に焼き付けることにしよう。

 いや、目だけじゃだめだから脳裏にも焼き付けよう。

 文化祭当日に脳のしわを増やしてやるんだ。


「……これを毎日近くで見せられてる美空さんに同情するっす」


「………わかってくれた?」


 今まで一言も話していなかった美空がしみじみと七海に同調していた。

 そこまでなの?

 そんなにしみじみするくらいヤバイの?


「はい。これからは二人で頑張りましょう。糖分過多で死なないように!」


「うん! 今日は私の部屋に泊まっていきなよ!」


「じゃあお言葉に甘えてそうするっす!」


 美空とも前よりさらに打ち解けたみたいで結構安心した。

 今まで美空はあんまり友達がいなかったからあんなふうに仲良くしてる子を見ると兄としてはとても安心する。

 これで恋人の一人でも連れてきたら……

 ダメだ。耐えられそうにない。

 顔面を殴り飛ばしてしまうかもしれない。

 勿論彼氏の。

 当分妹離れができそうにない俺でした。

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