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恋人に浮気され親友に裏切られ両親に見捨てられた俺は、学校のマドンナに救われた  作者: 夜空 叶ト


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第126話 寝顔と決着

「空先輩と美空さん遅いっすね」


「そうね。いつもこのくらいの時間には来てるのに。ちょっと様子を見てくるわね」


「私も行くっす」


「そう? じゃあ行きましょうか」


 私達は美空ちゃんの部屋に向かう。

 鍵を開けて中に入る。


「美空ちゃん? 空? まだ寝てるの?」


「もう朝っすよ? 先輩? 美空さん?」


 2人で声をあげてみても何にも返答はない。

 何かあったのか。

 それとも熟睡してるのか。


「永遠先輩二人ともいたっす」


「そう。よかった」


「めちゃくちゃ気持ちよさそうに寝てるっすね」


「そうね。ここまで幸せそうな顔してるの初めてかもしれないわね」


「ですね~美空さんもすっごく安心したような顔してて。なんだか微笑ましいですね」


 二人の様子は見ていてこっちが安らぐほどに穏やかな光景だった。

 ふふっ空ってこんな子供っぽい顔もするのね。

 最近は少し大人びた感じだったけどこういう子供っぽい姿は新鮮かも。


「でも、そろそろ起こさないとね。今日はこれから学校だし。七海さんの件での話し合いもあるわけだから」


「そうっすね。先輩方に立ち会っていただくのは心苦しいんすけど」


「そこは気にしないでいいのよ。空もそういうだろうし。でも今回は証拠とかは無いのよね?」


「そうっすね。自分では集めたりしてないっすね。下手に刺激して先輩たちにあのことを言われたくないっていう気持ちが強すぎて」


「あなたも意外と馬鹿よね。私たちがその程度であなたを嫌ったりするわけないのに」


 バカというよりは不器用なのかもしれないけど。


「ほら空。起きて。朝よ。早く起きないと遅刻するわよ?」


「美空さんも先輩と寝るのは心地いいのはわかったっすから起きてください」


 私達は二人の肩を揺すったりして起こそうとする。

 なかなかに眠りが深いようでなかなか起きない。


「結構熟睡してるっすね」


「そうね。しょうがないわねこうなったら力づくでいこうかしらね」


「……何する気っすか?」


「ただほっぺをつねるだけよ? 割と強めにね」


 私は言葉通りに空の頬を割と強めにつねった。

 いや、つねったというよりは引っ張ったというほうが表現として正しいのかもしれない。


「ふへ? いたたたたたたたたたっ。痛いって!」


「おはよう空。随分とぐっすり眠っていたらしいわね」


「ん? あ、おはよう。あれ? もしかして寝坊しちゃった感じ?」


「結構ね。まあ、まだ遅刻はしないから早く用意して部屋に来て頂戴。朝食が冷めちゃうわ」


「そうっすよ。私たちは一足先に戻ってるので美空さんを起こしてちゃっちゃと来てくださいね」


「ああ、すまない。用意してすぐ行くよ」


「じゃあ、七海さん私たちは先に戻りましょうか」


 2人の可愛い寝顔を拝めたわけだし少しくらい遅れてもいいしね。

 学校側は今日は私たちに強く出れないだろうし。


「そうっすね。二人の寝顔可愛かったし見れてよかったっす」


 ◇


「ごめん。めっちゃ熟睡してた」


「ごめんなさい。お兄と久しぶりに一緒に寝て完全に寝坊しました」


「いいわよ。二人の寝顔可愛かったし」


「そうっすね。空先輩があんなに可愛い顔をするなんて」


「ちょ、寝顔の話はやめてくれよな。恥ずかしいから」


「そうですよ。二人とも!」


 俺たち二人は赤面しながら朝食を食べていた。

 どうやら今日一日はこの件でいじられそうだなと覚悟した。


「それじゃあ私は先に学校に行くね! ごめんねお兄! それじゃあ!」


「おい! まさか逃げる気か!?」


「逃げる? 登校するだけだよ~」


「おい! ちょっ、ま」


 美空はそれだけ言うとそそくさと部屋を出て行ってしまった。

 絶対に逃げた。

 あいつ逃げた。

 おかげさまで標的が俺だけに絞られて完全にいじられるのが一人になってしまった。


「私達もそろそろ学校に行かないといけないわね」


「そうっすね。今日は例の話し合いがある日ですもんね」


「だな。緊張とかしてないのか?」


「してないっすね。だって今回来てくれるのは後藤さんなんすよね。それなら心配なんか何一つないっすね。私のことを虐めてた生徒はご愁傷様ですけど」


 確かにあの後藤さんが相手をしてくれるのならどんなことがあっても大丈夫だろう。

 あの人は本当に恐ろしい。

 俺はあの人だけは敵に回したくはない。


「それもそうよね。まあ、ひとまず行きましょうかね」


「だな。何もないと思うけど今日はずっと二人と一緒にいるから何かあったらすぐに言ってくれ」


「頼れるナイト様ね。じゃあしっかりお願いするわね? 空」


「任せてくれ」


 言いながら膝まづいて見せる。

 豆知識だが膝まづくときに立てる足は左足らしい。


「頼れるっすね。先輩!」


「まあ、本当に何も起きないとは思うんだけどな」


 ここで何か起きたらもはや奇跡だ。

 でも、この世界は作り物みたいな奇跡がそう簡単に起りはしない。


 ◇


「来たか。柳と杉浦と天音。昨日言った通り今日は今回の件について話し合いに立ち会ってもらう。ついてきてくれ」


「わかりました」


 なんだか見たようなことが半年くらい前にもあったような気がしないでもないけどそのことは置いておく。


「じゃあ、ここで全員揃うまで待っててくれ。といっても後は加害者本人とそのほごしゃなわけだけどな」


「そうなんですね。わかりました」


 俺達三人はおとなしく席に座る。

 これから始まるであろう話し合いははっきり言って消化試合みたいなものだ。

 先生たちには電話越しで倉庫での会話を流してもらってるしその録音データもある。

 証拠は十分だけどこの証拠は最後の一件しかない。

 他の七海が受けた暴行などの証拠は一切ないわけだから正直釈然としない。


「空君はこういったトラブルを引き寄せる体質なのかな?」


「どうでしょうか? 自分ではあまりわからないな」


 噓である。

 ここ最近巻き込まれている事件はかなりやばいものが多い。

 それも頻繁に巻き込まれてるんだから後藤さんの言う通り俺はそういう体質なのかもしれないな。


「杉浦さんも今回は安心して話し合いに参加してくださいね。もちろん学校での話し合いだけではなく今回の後始末も行いますので任せといてください」


 後藤さんは少し陰のある笑みを見せて嗤っている。

 一体あいつらはどうなってしまうんだと思ったけどあいつらがどうなろうと俺の知ったことではなかった。


「はい! よろしくお願いするっす」


 七海は満面の笑みで後藤さんに返した。


 ◇


「それでは話し合いはこれで終わりということで。先ほど申した通り学校側としての対応は今回の一件を重く受け止めてこのような事件が再発しないように努めるとともに今回の事件は極めて悪質であることを鑑みて加害者生徒は三人とも退学処分とします。のちに警察署に連れて行かれますので加害者生徒とその保護者様、被害者生徒の保護者様はご同行を願います」


「「「わかりました」」」


 司会を務めていた先生はそう言って今回の話し合いを閉めた。

 これで俺たちの役目は終わりだ。

 ゆうても今回の事件で知っていることは少なかったためほとんど話すことは無かった。

 倉庫の一件での話をしてからは特に俺たちが話すことは無く話し合いは終了した。


「じゃあ、空君。、杉浦さんと永遠さんを頼みますね。私はこれから警察署のほうに行ってまいりますので」


「わかりました。後始末はお願いします」


「お任せを。それでは行ってまいりますね」


 後藤さんはニコニコと笑っていたけどその笑みはあまりにも恐ろしかった。


「三人とも今日は立ち会ってくれてありがとな。あとは俺達教師や保護者間で話し合うだけだから今日は帰っていいぞ。迷惑をかけたな」


「いえ、そんなことは。俺の大切な後輩が事件に巻き込まれたんですから迷惑だなんて思いませんよ」


「そうですよ。先生。私たちの大切な後輩のためでしたらどんなことでもお受けいたしますので何かあればまた呼んでください」


「ああ。わかった。じゃあ気をつけて帰れよな」


「「「はい」」」


 こうして今回の一件は俺達の手を離れた。

 ここから先は先生や後藤さんが何とかしてくれるだろう。

 あいつらは退学処分になったみたいだしもう俺たちに干渉したりはできないだろう。

 そもそも下手したら刑務所や少年院に入れられる可能性すらあるのだからな。

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