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恋人に浮気され親友に裏切られ両親に見捨てられた俺は、学校のマドンナに救われた  作者: 夜空 叶ト


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第123話 嫉妬と真相

「……それで? なんで空は七海さんのことを呼び捨てにしてるのかしら??? 私あなたがバカなことをしても大抵は許してあげるつもりだけど浮気は許さないわよ?  何があっても許さないわ。さて、どんな弁明が聞けるのかしら? それとも素直に浮気しましたごめんなさいってする?」


「…………」


 どうやら、完全に逆鱗に触れていしまったらしい。

 眉間がぴくぴくしていた。

 青筋立っている。

 正直言って怖すぎる。

 でも、浮気なんてしてないし七海のことは呼び捨てで呼んだだけだ。

 ……これって浮気じゃないよね?


「あらぁ~? 弁明は何もない、という事でいいのかしら? なら今すぐにでも縛って二度と浮気ができない体にしてあげるわ」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!! 俺は浮気なんて断じてしていない!」


「じゃあなんで七海さんを名前で呼び捨てにしてたのかしら?」


「俺は大切な人には呼び捨てで呼ぶことにしてるんだ。だからこのタイミングで呼び捨てにすることにしたんだよ。七海は可愛いと思うし俺にとって大切な人だけど特別なのは永遠と美空だけなんだ」


 大切はいくらでも増やすことができる。

 それでも、特別になり得るのはごく少数しかいない。

 それが俺にとっては二人だけっていう話だ。


「…特別? 大切と特別って何が違うの?」


「言った通りだよ。大切は増やせるけど特別は増やせない。俺が特別にできる相手は上限が決まってるんだ」


 昔はもっと特別が多かったような気がする。

 でも、あのクリスマス以降俺の特別は二人になってしまったのだ。

 それでもいいと思っている。

 大切で特別な人間が二人もいれば俺はそれで構わない。


「まっ、疑ってはなかったんだけどね。ただ、最近私以外の女の子に優しくしすぎてて嫉妬しちゃっただけ」


「確かに最近は永遠に全く構えてなかった気がする。寂しい思いさせてごめん」


「本当よ。償いとして今日はたくさん私を甘えさせなさい」


「喜んで」


 永遠が正面から飛びついてきたからしっかり受け止めて頭を撫でる。

 しっかり手入れされているのか触り心地がすごくいい。

 こういう所で永遠が普段努力をしていると伝わってくる。

 努力家で頭が良くてそれでも謙虚な恋人を殊更愛しく思う。

 俺なんかには本当にもったいない。

 だから、俺は永遠に追いつけるように永遠の隣に並んでも恥ずかしくないように。


「……何か考え事してる?」


「うん。やっぱり永遠は可愛いなって思って」


「絶対うそでしょ」


「嘘ではない。そう思ったのは本当」


「でもそれってそれ以外のことも考えてたってことでしょ? 私以外の女の事?」


「違うよ。永遠はすごいから俺も永遠と並んで恥ずかしくないように努力しないとなって思ってね」


 頭を撫でながら本心を言う。

 やっぱり触り心地はとてもいい。

 というかなんかいいにおいするしドキドキする。


「ふふっ。周りの目なんか気にしなくてもいいのに。でも空が今より頑張るっていうなら私は応援するわよ」


「ありがとう。いつも俺は永遠に救われてるよ」


 いつもいつも救われてる。

 最初に会ったときだってそれ以降もずっと俺はこの子に救われてるんだ。


「それを言ったら私もそうよ。それよりも今日は一緒に寝てくれないかしら?」


「よろこんで」


 今日は眠れなさそうだなと思ったけど永遠と一緒に寝るのは好きなので良しとしよう。


 ◇


「大変だったんだね。七海ちゃん」


「まあね。空先輩が助けてくれたから何とかなったよ」


 お兄ってよくトラブルに巻き込まれるよな~

 でもそのおかげで七海ちゃんとか永遠姉さんが救われてるんだから結果的には良いんだけどさ。

 お兄にはもう少し自分を大切にして欲しいんだけどな。

 まあ、そういってもお兄は多分自分を犠牲にする性格を直すことは無いんだろう。

 いつもいつもお兄は自分のことを軽く見てさ。

 お兄のことを大切に見てる人のことも少しは考えてほしいよ。


「でも、お兄の言う通りだよ? 理由はどうあれ七海ちゃんは私の友達だしお兄や永遠姉さんの恩人であることに変わりないんだからなにも後ろめたさとか感じる必要は無いんだよ? そこらへんはわかってよね!」


「はい。空先輩にも永遠先輩にも言われました」


「でしょ? だからこれからは私たちに気とか使わないでいいからね! というか使ったら怒るから」


「わかりました」


 でも、これでたまに七海ちゃんが少しだけ後ろめたそうにしている理由がわかった。

 これからは完全に対等に友達出来るかな?

 だといいな。

 でも、この反応的に藤田悟に私たちが遊園地に行くってことを教えたのは七海ちゃんじゃない。

 私の予想的にはお母さんたちなんだけど方法がわからない。

 私、SNSとかやってないし。


「美空さんこれなんすか?」


「これって?」


 七海ちゃんが私のカバンを指さしてそう言った。

 なにか不審なものでもついてたかな?


「この黒い点ですよ」


「ん?」


 よく見てみれば確かに黒い点みたいなものがあった。

 なにかの機械?


「これ、盗聴器っすよ!?」


「え!?」


 私は怖くなってすぐにそれを踏み潰した。

 盗聴器ってまさか、お兄が轢かれた直接の原因って……

 嫌な考えが頭をよぎる。

 藤田悟が居場所を知っていた原因。

 前にお父さんと会ったとき!!

 あの時にこれをつけられたんだとしたら辻褄があってしまう。


「だ、大丈夫っす。何があってもあの事故は美空さんのせいではないっす」


 七海ちゃんは私の心情を察してか私を慰めてくれる。

 これからどんな顔をしてお兄に会えばいいのかわからない。

 私が、私のせいでお兄は…………


「はぁはぁ…………はっ、」


「落ち着いてください! 美空さん。大丈夫っすから」


「はっ、はひ」


「美空さん!? 美空さん?」


 七海ちゃんの声が聞こえるけど何も反応ができない。

 上手く息が吸えない。

 苦しい。


「美空さん!」


 ダメだ。

 意識が保てない。

 私は七海ちゃんの声が遠のいていくのを感じてすぐに意識が暗転した。


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