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恋人に浮気され親友に裏切られ両親に見捨てられた俺は、学校のマドンナに救われた  作者: 夜空 叶ト


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第122話 和解

「すいません。服汚しちゃって…」


「気にしなくて良いよ。それよりも落ち着いた?」


 あれから数分くらい泣き続けてしまい手がつけられなくなってしまった。

 途中で永遠を呼ぼうか迷ったけどこんな姿あまり人にも見られたくないと思いやめておいた。


「はい。本当にすいません」


「謝ることじゃないだろ? それよりも七海が落ち着いたのか気になるんだけど」


「落ち着きました! それよりなんで先輩は私のことを呼び捨てで呼んでるんすか?」


「俺は本当に大切な人は呼び捨てで呼ぶようにしてるんだ。もちろん目上の人だったり立場上それが不可能なときはあるけど君ならいいかなと。不快だったか?」


「いえ。そんなことは。先輩に大切な人と思われてて嬉しいっす」


 昔から本当に仲のいい人とか大切にしたい人には呼び捨てで呼ぶようにしている。

 たまにあだ名で呼ぶときとかもあった。

 でも、今俺が呼び捨てで呼んでる人間って三人だけかもしれない。

 永遠に美空。それと七海。

 この三人くらいしか俺のことを信用してくれなかったというのもある。


「そっか。それで七海はまだ俺たちに嫌われたとか思ってる?」


「……いえ。先輩のおかげで認識は改めれました。そのうえで言いますけど私が仕事で空先輩に近づいたって言うのは本当です。先輩の事情についても私はある程度知っています。勝手に調べるような真似をしてすいません」


「別にいいさ。それが仕事だって言うのなら仕方がない。それにさっきも言ったけど仕事だけってわけじゃないだろ?」


「もちろんです! 最初は仕事でしたけど先輩たちと関わっているうちに仕事だけじゃなくてプライベートでも関わりたいと思えるようになっていきました。最近は仕事なんてほとんど関係なかったっす」


 七海は思い返すようにしながらそう語った。

 ならそれで十分じゃないか。

 きっかけなんて様々だ。

 最初が仕事だからといってそれ以外がすべて仕事によるものかと言えばきっと違うだろう。

 終わりよければすべて良しという言葉もある。


「じゃあ、それでいいじゃんか。俺は怒ってもいないし失望してもいない。これからも仲良くしてくれると嬉しいんだけど?」


「……はい! ぜひお願いします」


 そういって七海は今日一番の笑みを見せた。

 その笑みには先ほどの暗い感情は見られず見惚れてしまうほどの綺麗な笑顔だった。

 出会ってから今までで見た笑顔の中で一番綺麗だったかもしれない。


 ◇


「なるほど。そういう事だったのね」


 あの後、永遠を呼んで三人で話した。

 話した内容はさっき七海が俺に話した内容だ。

 永遠はその話を黙って聞いていた。


「すいませんでした。永遠先輩」


「別に私も大体空と同じ意見で怒ってはいないのだけどあなたが納得いかないなら…………そうね。ちょっと目を瞑ってもらってもいいかしら?」


「はい? わかりました」


 七海は一瞬怪訝な顔をしてたけどすぐに言われた通り目を瞑った。

 そんな七海に永遠は近づいて額にデコピンをかましていた。

 思考回路が俺と同じだった。


「いたっ」


「これで水に流したということで。どうせお父様の差し金でしょうし。杉浦さん……いえ《《七海さん》》は悪くないし。空や私のことを助けてくれていたしね。感謝こそしても恨むことなんてないわよ。これからも私たちと仲良くしてくれると嬉しいわ」


「もちろんっす。本当に…………ありがとうございます」


「お礼を言われることじゃないわよ。とりあえず明日の話し合いは後藤さんにお願いしたけどいいかしら?」


「はい。あのたぬ、人なら安心できます」


 七海は途中まで何を言いかけたのだろうか?

 わからないけど知らないほうがいい気がする。


「で、なんで虐められたのか。そのきっかけとかそもそも探偵である君の仕事内容がなんでバレたのかとかわかる?」


「虐められてる原因は予想がついてるっす」


 少しだけ考える素振りをした七海はすぐにそう告げる。

 だが、虐めに理由なんてものはどうでもいいのだ。

 どんな理由があったとしてもしていい行為ではない。

 虐めは絶対に許される行為ではないのだ。


「どんな理由?」


「私が少し前に二年生…同学年で人気のある男子に告白されたんすよ。私はその告白を普通に断ったんすけどその男の子のことを好きだった子たちに目をつけられまして。最初は些細な嫌がらせ程度だったんすけど私の弱みをどこかで仕入れてきてからはどんどんエスカレートしていったっす」


「…………しょうもないな」


「…………そうね。しょうもないとしか言いようがないわ。そんなことをする暇があるなら自分を磨けばいいものを」


 言葉が出ないとはまさにこの事だった。

 そんなしょうもない理由であそこまで酷い暴行できるのかと。


「とりあえず証拠とかは持ってないんだよね?」


「はい。録音とかは何もしてないっすね」


「わかった。そこらへんは多分大丈夫だから今日はもう休んでもいいよ。美空には話を通してるからさ」


「わかりました。今日は本当にありがとうございました」


「別にいいって」


「そうよ。今日はゆっくり休んで頂戴」


 こうしてとりあえずは事態の収束が見えてきた。


「空はこのあと私と少しお話ね?」


「……はい」


 後ろからとんでもない圧を感じて二つ返事で了承した。


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