第117話 絶体絶命
「あれ? 今日は七海さん来ないのかしら?」
「どうなんだろう? でもそんな連絡は来てないけどな」
月曜日の昼休み。
いつもはすぐに七海さんが俺たちの教室にして一緒に昼食を食べてるんだけど今日は一向に来ない。
来ないときは何度かあったけどそう言う時は俺か永遠に連絡を入れてくれてたんだけど。
何かあったのかな?
「ごめん、心配だからちょっと見てくるよ」
「そうね。私も行こうかしら」
「いや、なんか嫌な予感がするから一人で行くよ。教室に居れば何ともないだろうし俺の考えすぎかもしれないからさ」
「そう? 空がそういうなら任せるわね」
「ああ。任せてくれ。行ってくる」
嫌な予感がする。
最近の七海さんの様子がおかしかったのもこの嫌な予感の原因なのかもしれない。
昨日は積極的にかかわるべきじゃないと思ってたけどそうもいっていられない気がする。
何も無かったら俺がキモがられるくらいで済むしな。
◇
「杉浦さんって今いるかな?」
昼休みが始まってから10分くらいが経過している。
流石に教室にはいないのか応対してくれた男子生徒がクラスの中を見渡してくれたけど、どうやらいないらしい。
「どこに行ったか分かる?」
「いえ、そこまでは。昼休みが始まってすぐにクラスの女子とどこかに行ったのは見かけたんですが」
「そっか。教えてくれてありがとう」
教えてくれた男子生徒に礼を言って校内を探す。
七海さんがクラスの女子と仲がいいとはあまり思えないのでいよいよ厄介ごとの匂いがしてきた。
無事だといいんだけど。
「とりあえずどこに行こうか。屋上とかさすがにいないだろうけど見てみるか」
そもそも屋上は立ち入り禁止だし行ってもあまり楽しいところではない。
だから、一応ほんの確認程度だ。
◇
「なんで、お前なんかが!」
「不愛想なのに顔がいいだけでいい気になってむかつくのよ!」
「本当! 瀬戸君をあんなふうに振って何様のつもりよ!」
三人の女子生徒が私の体を蹴る。
ローファーのつま先で蹴られるものだから結構痛いっす。
「ちょっとは抵抗したらどうなの?」
「できないでしょ。私たちが《《弱み》》を握ってるんだからさ」
「そうそう。こいつは私たちに歯向かえるわけないんだからさ。卒業するまでこいつは私たちのサンドバックで決定よ」
しくじったものだ。
私も落ちぶれたものだと思うし。
弱みなんか握られるんだから本当に私はだめだ。
それに私が感情を捨てれれば彼女たちが握っている弱みなんて弱みですらなくなる。
でも、それができない。
昔の私ならできたはずなのに。
私は少しぬるま湯につかりすぎてしまったみたいだ。
「どうせならこの顔に傷でもつけてみる?」
「それいいね~何でつける?」
「私カッター持ってる!」
「決まりじゃ~ん」
彼女たちはポケットからカッターを取り出してカチカチと刃をだす。
これから顔に傷をつけられるのか。
痛いのは嫌なんすけどね。
私が諦めたときに屋上の扉が開いた。
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