第115話 明日は内見
「こちらが久遠様が空君に譲渡される家の鍵です。それとこちらが権利書類などです。お受け取りください」
「ありがとうございます」
帰り道に後藤さんに送ってもらった後。
車を降りると家の鍵と権利書類一式。
家の場所を記した地図を手渡された。
どうやら本当に久遠さんは俺に家をくれたらしい。
今手元にある物々しい書類を見てそう思った。
「後日永遠さんや美空さんをお連れになってお部屋をご覧になるといいでしょう。その際はぜひ私をお呼びください。お送りいたしますので」
「ありがとうございます。その際は連絡しますね」
「ええ。そうしていただけると嬉しいです。では私は行きますね」
「はい。今日はありがとうございました」
「いえ、これが仕事ですのでお気になさらずに」
後藤さんは軽く会釈をすると車を出して帰っていった。
「っと、そろそろ俺も帰らないとな」
結構な時間を久遠さんたちと話していたこともあって時刻は既に午後9時を回っていた。
永遠怒ってるかな?
そう言えば連絡してなかったな。
「空おかえり。お父様とお母様とはどんな会話をしたのかしら? 良ければ教えて欲しいのだけど」
「ただいま。結構遅くなってごめんね」
「いいよそこらへんは。後藤さんから連絡はもらってたし。それよりも私は話の内容が気になるんだけどな」
「内容か。え~となんというか」
永遠との馴れ初めを話したことに関してはトップシークレットとして家の話はするべきなんだろうな~
なんて言い出せばいいんだろう?
(なんか家もらっちゃいました!)なんて言えないしな。
う~ん。
「え……そんなに言いにくいことなの?? もしかして私と付き合ってることに関して何か言われたとか?」
「い、いやっそれない! どちらかというと肯定的で安心したくらい」
「ならこんなに長く何を話してたの?」
「えっと、驚かないで聞いてほしいんだけどさ」
「え、何その前置き!? ちょっと怖いんだけど」
「久遠さん、永遠のお父様から一軒家をもらいました」
驚くなって言うのは無理な話かな。
実際に聞いたときも俺はかなり驚いたし。
というか一瞬頭がフリーズした。
「え、ん? は、ええええ?」
かなり驚いていた。
いやまあそうなるよね。
ならないほうがおかしいよね。
「だから、こんど三人で家を見に行かないか? せっかくもらったし何より久遠さんからも誰と住んでもいいと言われてるから三人でどうかな?」
「…………一軒家なの?」
「ああ。話を聞く限りはそうだな。現物を見たわけじゃないからどんな感じなのかはわかんないけどこの書類を見た感じかなりでかそうだぞ? 多分三人で住んでもかなり余裕があると思う」
「じゃあ行きましょう! もちろん三人で! せっかくお父様が空に贈った家だもの。三人で住みましょうよ!」
「俺は永遠がいいならもちろんいいよ。美空にも聞いてみないとだけど」
「そうね。今日は土曜日だし明日見に行ってみましょう!」
「わかった後藤さんに連絡しとくよ。許可が取れれば三人で見に行こう。午後にはなっちゃうけど」
「全然良いわよ! ありがとう空!」
「わっと、」
永遠が俺に抱き着いてきた。
あまりにも勢いが強くてそのまま尻もちをついてしまう。
「大丈夫?」
「う、うん。ごめんねいきなり飛びついちゃって」
「いや、いいよ。明日楽しみだね」
「そうね。すごく楽しみだわ。すぐにそっちに引っ越したいくらい」
「それは少し気が早すぎだね。家の中を見てみていろいろ準備もしないと。いったん美空にもこのことを話してくるよ」
「わかったわ。行ってらっしゃい」
◇
「…………なんか最近お兄がすごく遠いところに行ってしまったような気がするよ」
「俺も最近いろいろありすぎて自分でもなんだか不思議な気分だよ」
「だよね。お兄もなんだかんだ環境が変わったり事故に遭ったりいろいろあったからね~明日家を見に行くことに関してはわかったよ。引っ越すかもって言うのも全然大丈夫。それにしてもお兄はかなりの大物に目をつけられたみたいだね」
「本当にね。でも久遠さんもセツナさんもいい人だったよ。今度美空にも合わせてみたいくらい」
会ってくれるだろうか?
いや、この前美空とも話してみたいって言ってた気がするし話してくれるだろう。
「うん! 私も永遠姉さんのご両親に挨拶したいし」
とりあえず美空も明日の内見? に参加することになったのでその旨を後藤さんにメッセージを送っておいた。
すぐに返信が着て午後6時からマンションの下まで来るまで迎えに来てくれるらしい。
明日も忙しい一日になりそうだ。
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