第114話 どうして新居を?
「まず一つ目は君たちに家を用意したんだ。正確に言うと《《君に》》だがね」
「え???」
ん? 今何を言ったんだ?
家を用意した???
家って言うのは今俺が住ませてもらっているマンションの事だろうか?
あの部屋を正式に俺に譲渡してくれるという事だろうか。
だとしたらありがたい限りなんだけど。
「ああ、勘違いしているようだから先に行っておくが俺が君に譲渡するのはあのマンションではなくて新しい一軒家だぞ?」
「ん???」
新しい一軒家を俺に譲渡!?
「えっと、、、新しい一軒家を俺に丸ごとですか?」
「ああその通りだ。今回永遠を助けてくれた礼とどうせみんな一緒に住むのなら一軒家のほうが住みやすいだろうと思ってな。もちろん警備は完璧だからその点は安心すると言い。もちろんすでに君のものだから誰と住んでもいい。ただ、永遠を泣かせる真似だけはあまりして欲しくはないがそこを強制する権限は俺にはないからな」
「いえ、俺も永遠を泣かせる気なんて全くないので大丈夫です。そんなにいいものをもらってもいいんですか?」
「もちろんだ。というかすでに用意してる。後藤に鍵とか書類とかもろもろ渡してあるから後で受け取るといい」
なんだか話のスケールが大きすぎて頭が痛くなってきた。
パンクしそう。
服を買いに来ただけなのになんでこうなったのか。
「えっと、ありがとうございます」
「礼を言うのはこちらの方だ。本当にありがとう」
「さて、久遠さんの用件は終わったようですし次は私からいいですか?」
「ああ。俺の方は終わったから問題ない。空君さえよかったらセツナにも付き合ってもらえないだろうか?」
「はい。もちろんです」
セツナさんからも話があるのか。
久遠さんの話はあまりにもスケールの大きい話だったから次はもう少し控えめにして欲しい。
「まずはそうね~永遠とはどうやって知り合ったのか聞いてもいいかしら? あんまり永遠はそういう事を教えてくれないから気になってたのよね~教えてくれるかしら?」
「えっと……?」
「とどのつまり空君と永遠との馴れ初め話が聞きたいようだな。君が良ければ話してあげてくれないかな?」
「は、はぁ。俺は全然問題ないんですけど。あとから永遠に怒られたりしないですかね?」
「もちろん君が話してくれたことはここだけの話だ。なあセツナ?」
「当たり前ですよ。私も娘には嫌われたくないので」
「そういう事なら」
こうして俺は自分と永遠がどうやって出会ったのか。
どういう経緯で付き合うことになったのかを事細かく話した。
2人は興味深そうに俺の話を聞いてくれた。
頷きながら静かに聞いてくれる久遠さんと目を輝かせてはしゃいでいるセツナさん。
対照的な二人で話していて俺も楽しかった。
◇
「なんだか出会いはあまり素晴らしい物じゃなかったのですね」
「まあ、そうですね。俺にとっては救世主みたいな感じでしたし実際にかなり助けられてはいたんですけど。恋愛的に見たときの出会いは良いとは言えませんよね」
「う~む。永遠がそんなことをしたのには何かきっかけがあるのかな? あの子はそう簡単に他人を家に上げるような子ではなかったはずなんだけど君は何でか知っているかい?」
理由なら知っている。
あの時の永遠は俺のことを亡くなった友人の空音さんと重ねていたからだ。
でも、これは他人に聞かれて楽しい話でもないし何より両親にそんなことを勝手に言うのは不義理な気がする。
だから俺ははぐらかすことにした。
「いいえ。どうしてあの時に助けてくれたのかは俺のはわかりません。聞いたこともありませんでした。でも、永遠が何を思って俺を助けてくれたのだとしても永遠が俺のことを助けてくれたのに変わりはないので聞いていません」
「そうか。そうだな。君の言う通りだ。無粋なことを気いてすまないね」
「いえ。確かにご両親の立場なら気になりますよね」
「理解してくれてうれしいよ。では俺とセツナはここらへんで失礼するよ。あまり君を独占していると怒られてしまうからね」
「そうですね。いい話は聞けて良かったです。またの機会に会いましょう。それでは」
そういって二人は去っていってしまった。
なんだかすごかったな。
色々と。
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