第113話 永遠の両親
テイルコートをベースにした執事服のオーダーメイドが完成した。
2時間ほど色々な服を着たり採寸したりして結構疲れた。
永遠が会計をする時に見えてしまった金額が六桁だった時は声をあげそうになったけどなんとか声は我慢できた。
「服は2、3週間で完成するらしいわね」
「文化祭ギリギリだね」
文化祭の3日前に完成する感じたから長引いたら終わるな。
まあ、そんなことはないと思うけど。
「間に合うわよ。ここの店は仕事が速いから」
「そうなんだ」
永遠は何回かこの店を使った事があるのだろうか?
まあ、来たことがあるのだろう。
「そろそろ帰りますか? 結構時間も遅いですし」
「それもそうね。帰りましょうか」
やっと帰れそうと思った時にいきなり声をかけられる。
「君が柳空くんかな?」
「はい、そうですけど」
声をかけてきた男性は身長が高くて黒髪。
瞳の色は綺麗な青色のおよそ50代くらいと思われる男性だった。
隣には綺麗な白髪で優しそうな目つきの女性がいた。
瞳の色はアメジストのような紫色をしていた。
女性の方は年齢が30代くらいに見える。
誰なんだこの人たちは?
面識は無いはずだけど。
「お父様にお母様!? なんでここに?」
「「え!?」」
目の前にいるのは永遠の両親!?
初めてみた。
面識がないのは当たり前か。
永遠の話によると永遠の両親はずっと海外にいたらしい。
「さっき日本に着いたんだ。連絡してなくてすまないな」
永遠の父親は鷹揚に笑いながらそう言った。
どうやら冷徹な人間とかでは無いようで少し安心した。
「そうなんですか? 仕事の方は落ち着いたのですか?」
「いいや。こっちにいられるのは今日を入れて3日だな。まあ、その間に俺はそこの彼とじっくり話したいわけだが」
俺のことだよな。
思いっきりこっち見てるし。
あ、微笑んでくれた。
怖い人じゃ無いらしい。
「自分ですか?」
「もちろん。妹さんとも話してみたいと思っているけどまずは空くんからかな。この後ちょっといいかな?」
「……」
この後は永遠と美空と家に帰るだけの予定だけど一応2人に目配せをする。
2人は同時に頷いてくれた。
「はい。大丈夫です」
「それは良かった。2人は後藤に送らせるから心配しなくていい。では、空君を借りていくね」
俺はそのまま永遠のお父さんに連れて行かれた。
◇
「いきなりすまないね。びっくりしたんじゃ無いか?」
「いえ、そんなことはありません」
「そうか。そう言ってもらえて嬉しいよ。おっと申し遅れていたね俺は永遠の父親の天音久遠という。こっちは妻のセツナだ」
「初めまして。天音セツナと申します。いつも娘がお世話になっております」
セツナさんはそう言って綺麗にお辞儀をした。
見た目からして完全に外国の方なのにとても流暢な日本語で動作の一つ一つがとても美しい。
永遠の綺麗な白髪はきっとお母さん譲りなのだろう。
「いえ! いつもお世話になっているのは自分の方なので。今も住む場所を提供してもらってますし毎月お金だって頂いていて」
「それは知っているがそれを加味しても君は永遠を支えてくれていると思うよ。あの子が楽しそうに笑っているのを俺はかなり久しぶりに見たからな。まあ、家を空けていたから顔を見る機会が少なかったのはあるがね」
「そうですかね?」
「そうとも! 君は十分に永遠を支えている。少し前だって自分の身を挺して永遠を助けてくれたらしいじゃ無いか。言うのが遅れてしまったが本当にありがとう。永遠を助けてくれて」
「いえ、あれは俺の因縁のせいで永遠を巻き込んでしまったのでむしろ申し訳ないです」
「だとしてもだ。永遠がいなければ君はトラックを避けれていたはずだろう?」
「……」
この人は一体どこまで知ってるんだ?
さっきから全て今までの出来事を見ていたかのような言動だ。
そして、それら全てが的確だからこの人が初めから全てを見ていたのでは無いかと錯覚してしまう。
「久遠さん? 話が逸れてしまいますよ? 本題に戻さないと」
「おっとそうだったな! すまない」
本題?
いったいなんのことなんだろう?
少しだけ気を引き締めながら久遠さんの言葉を待つのだった。
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