第112話 選ばれたのはテイルコート
「よしっ今日はここまでだな。お疲れ柳」
「ありがとうございました先生」
土曜日の補修を受け終わり学校を後にする。
時刻はいつも通り五時過ぎで周りはやや暗くなっている。
今から家に帰って着替えを済ませてから永遠と美空と執事服を買いに行かなければならない。
楽しみ半分着せ替え人形になれるのか~という何とも言えない気持ちが半分。
まあ、2人が楽しんでくれるのならいいんだけど。
時間は結構かかりそうなんだよな。
前も似たようなことをしたときは二~三時間かかった気がするし。
「気張っていくかな」
両頬を叩いて気合いを入れる。
俺も執事服なんて来たことが無かったから意外と楽しみではあったりするのだ。
ああいう服ってかっこいいから男子は一度は憧れるはずだよな(個人の感想)。
「先輩今日も補修ですか? 大変ですね~」
「まあな。そういう七海さんはどうしたんだ? 今日普通の生徒は登校してないはずだろ? 君は部活にも入ってないわけだし」
「まあ、野暮用ってやつですよ。これからどこかにお出かけですか?」
「ああ。ちょっと買い物にな」
「そうですか。気を付けて行ってきてくださいね!」
「七海さんも気を付けて帰りなよ。そろそろ暗くなってくるから」
「はい! 先輩もお気をつけてくださいね」
「ありがとう」
俺たちはそんな他愛もない会話をしながら別れた。
最近補修帰りに七海さんに会う気がするんだけどどうしてかな?
まあ、俺の考え過ぎだろうけどさ。
◇
「いっぱい種類あるね!」
「そうね。私も執事服なんてあまり見たことないから心が躍るわね」
「…………」
売り場に来て目を輝かせる二人を見てこれは長くなりそうだな~と少しだけ気が重くなりながらもそれ以上に楽しそうな二人の顔を見るのがうれしくて仕方なかった。
「とりあえず採寸してもらいましょうか。サイズがわからないと服の見ようが無いし知って損はないだろうから」
「だね。ちょっと店員さんにお願いしてくるよ」
店員さんに採寸をお願いしてすぐに必要な部分の採寸が終わる。
この年の男性の平均値くらいで安心した。
「空って結構身長高いわよね」
「そうか? 普通だと思うんだけどな」
身長は176cm少し高いかもしれないけどそこまで高いというほどでもないと思う。
「いやいやお兄は身長結構高いと思うよ? 私の学校の男の子たちより結構高いもん」
「そんなもんなのか?」
永遠と美空が言うのであればきっとそうなのだろう。
身長はありすぎると困るからこれ以上は伸びないでいいかな~
「そうよ。まあ一回売り場を見てみましょうか。いろんな種類がありそうだし空に似合うものを見つけてそこからオーダーメイドにしていじればいいし」
「そうですね! さっそくお兄にいろんな奴を着せてみましょう!」
2人がニコニコしながらにじり寄ってくる。
ここまで来て断るという選択肢は俺にはないため素直に二人が持ってくる服を試着した。
タキシードやモーニングコート、テイルコートを着せられた。
「う~ん一番似合うのはテイルコートかな?」
「私もそう思います!」
どうやら俺が着る執事服のタイプが決まったらしい。
この分で行くとテールコートを元にした執事服をオーダーメイドするのだろう。
個人的にもテールコートが一番しっくりくる気がする。
カッコいいし。
「じゃあ、ベースはテイルコートにして細部とか色をちょくちょく変えていく感じで行こうかしら」
「そうですね! お兄は細身だから胴が短い感じの服のほうがよさそうですね!」
こんな感じでどんどん俺抜きで服の内容が決まっていく。
まあ、俺はファッションセンスが無いからいいんだけどさ。
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