第110話 メイド服は着たくない
「う~ん。このままじゃあ埒が明かなそうだから今日はいったん解散でまた明日おのおのなにか案を持ってきてください」
不味い。
どうしてこうなってしまったんだ。
「帰ろっか空」
「あ、ああ。そうだな」
事の発端は今日の帰りのHR。
ついさっきまで行われていた文化祭の出し物の話し合いについてだ。
最初のほうまでは問題なかったんだ。
普通にお化け屋敷とか何かしらの展示とかカジノとかそういう普通のものが上がっていた。
これならどれになっても安心できるなと落ち着いていたらいきなり爆弾を投げられた。
《《メイド喫茶》》という単語が飛んできたのだ。
それもメイドは男子生徒がやるらしい。
それだけは何としても阻止したい。
メイド服なんて御免だ。
だが、どうやらうちのクラスには男子のメイド服姿を見たい人が多いらしく話し合いはかなり長引いた。
勿論男子側もメイド服を着たくなかったからそれはもう壮大長引いた。
俺だってメイド服なんて着たくない。
だから、明日までにいい感じの代案も考えないといけない。
「空はメイド服着たくないの?」
「着たいわけなくないか? 永遠は俺のメイド服姿が見たいのか?」
「う~ん。どうなんだろ? 見てみたい感じもするけど別にそこまでかな。嫌がる空を無理にって言うのはなおさらにね」
「ありがとう。だから俺は今日中にクラスに女子たちを納得させることができるような企画を考えないといけない。何がいいんだろうな~」
飲食系には決まっているから後はどのようなコンセプトを立てるのかが大切だ。
勿論水着とかそういった感じのきわどい物は学校側が許可を出さないだろうから却下として真っ当で俺たちが女装とかをしなくて済む企画か~
難しいな。
「難しいよね。普通のメイド喫茶じゃダメなのかな?」
「だよな。俺もそれは思ったけど女子たちが男子だけ何も着ないのはおかしいって言ってこうなったわけだからな。俺は永遠のメイド服とか見てみたいから普通のメイド喫茶でもよかったのに」
俺がメイド服を着たくないって言うのはもちろんあるんだけどそれ以上に俺は永遠のメイド服が見たかった。
非常に残念である。
「空が着てほしいっていうなら私は全然着てあげてもいいんだけど」
「マジ!?」
「え、ええ。随分と食い気味ね」
「そりゃあ本心から見てみたいって思ってたからね」
本当に着てくれるならぜひとも見てみたい。
いや、本当に。
「あ! 女子はメイド服を着て男子は執事さんみたいな服を着るって言うのはどうかしら? そうすれば男子も何かしらの衣装を着せたいっていう女子側の意見も通せるし空が見たいメイド服だって見れるわよ?」
「……永遠、天才だ!」
それならいけるはずだ!
誰もが平和に文化祭を終えることができる!
俺はメイド服を着なくて済むし永遠のメイド服を見ることができる。
全員幸せな文化祭だ!
「そうかしら?」
「そうだよ! 男子側と女子側両方の意見を通せるからね。明日みんなに言ってみよう」
「そうね。空が言ってくれるかしら。私はそういう事を言うのがあまり得意ではないから」
「任せてくれ。それくらいお安い御用だ」
よしっ!
これでメイド服を回避できそうだ。
永遠に感謝しかない。
というか、この意見が通れば永遠のメイド服を見ることができる!
それだけでも明日を生きていく活力になるというものだ。
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