第109話 文化祭が近いです
「はぁ。休みが無いってのは結構しんどいもんだな」
学校が始まってからすでに数週間が経過した。
土日もみっちり補修授業があるため全く休めていない。
永遠は流石に土日は学校に来ていないのでそういった意味でもとても退屈である。
「柳。お前よく頑張ってるな」
「ありがとうございます。先生方に迷惑をおかけして申し訳ないです」
「全然気にするなよ。それよりお前が無事でよかったよ」
「ありがとうございます」
この先生は今の俺の担任だ。
先生はとてもやさしくて毎回気にかけて声をかけてくれる。
ありがたい限りだ。
「ああ、今日の補習授業は終わりだから帰っていいぞ~」
「はい。今日もありがとうございました」
お辞儀をして教室を後にする。
時刻は午後五時くらい。
時期は10月くらいだからいい感じ薄暗くなりつつあった。
早く帰んないとなぁ。
永遠は今日何をしていたんだろう?
家にいるはずだけど勉強でもしてるのかな。
「先輩。元気っすか?」
「七海さんか。まあまあだよ。最近は補修地獄でろくに休めて無いから体調的には良くはないかな」
「そりゃあそうですよね~先輩半年くらいずっと病院だったんですから」
「それもそうなんだけどな。まあ、卒業させてもらえるだけありがたいしそこは甘んじて受け入れてるよ」
「確か先輩は永遠先輩と同じ大学に行こうとしてたっすよね?」
「ああ。絶対に行く。そのために毎日勉強してるからな」
「そっすか。頑張ってくださいね。応援してるっすから」
七海さんはそれだけ言って帰ってしまった。
何がしたかったのか?
純粋に俺のことを心配してくれたのだろうか?
それとも他に何か理由があるのか。
「いまだに七海さんのことはよくわかんないな」
結構長い付き合いになったと思うけどいまだに彼女のことはよくわからない。
何が好きで何が嫌いなのか。
どういう行動理念を抱いて行動してるのか。
何を聞いてものらりくらりと躱されてしまう。
まあ、知らなくてもいいことなんだろう。
逆に知ってしまったらいけない気がする。
なにかが致命的に壊れるようなそんな予感がするのだ。
◇
「空おかえり。今日も遅かったね」
「ただいま。みっちり七時間授業を受けてきたよ。結構疲れたけど」
「お疲れ様。ご飯にする? お風呂にする? それとも両方?」
「両方って何!?」
ご飯とお風呂を両方って何なんだろう?
できるのかな?
いや、永遠ができるって言うのならできるのかもしれない。
「両方はね~まあ、いいとして。どっちにする?」
「じゃあ、ご飯からもらおうかな。みんなを待たせるのも悪いし」
「そう言うと思ってもう用意してるよ。美空ちゃんもいるし」
「マジ?」
「いますよ~なんか食事前なのにお腹いっぱいどころか胸焼けしそうですけどね~」
美空にジト目を向けられる。
どうやら一部始終見ていたらしい。
「なんか、新婚夫婦みたいでしたね」
「あら。美空ちゃんったら」
「永遠、そこは突っ込むべきところだと思うよ?」
最近美空はこういった類のいじりをしてくることが多い。
美空はなんだかお兄が遠いところに行っちゃうみたいで寂しいって言ってた。
そう言われると怒りは全然わいてこなかった。
そもそも美空を怒るようなことなんてないんだけどね。
「そうですよ永遠姉さん。突っ込まれないとなんだか私がいたたまれない気持ちになるじゃないですか」
「そうなの? ごめんなさい」
「とりあえず食べよう。せっかく作ってくれたんだから冷めないうちに食べよう」
「それもそうね」
「だね。ちょっとふざけすぎたかも」
三人で顔を見合わせながら笑いあう。
最近は毎日こんな感じだ。
三人が揃うと俺と永遠がイチャつきはじめてそれを美空がジト目で突っ込む。
忙しいし大変だけどそれを感じさせないくらいに楽しくかけがえのない日々だった。
「そういえば空。もうそろそろ文化祭だけど何かやりたい事とかあるの?」
「……もうそんな時期なの?」
最近忙しくて時間感覚が少し曖昧なんだけど、どうやらかなりの時間が経過していたらしい。
つまり、受験まであと半年を切ったという事である。
そろそろ模試もあるし最近の予定はぎっしり詰まりすぎな気がする。
近直しっかり休まないと過労死してしまいそうだ。
「そうよ。確か土日の二日間開催だから美空ちゃんも来れるわよ。来る?」
「え! いいんですか? 行きたいです」
「わかったわ。先生に用紙をもらっておくから今度記入して頂戴」
「わかりました! 楽しみだな~お兄の高校の文化祭」
「まだ何やるか決まってないらしいけどな」
多分だけどそろそろ先生から説明があるだろう。
文化祭準備が始まるとなるとさらに忙しくなりそうだ。
でも、永遠と過ごす最初の文化祭になるから気合いを入れていきたい。
「まあ、多分そろそろクラスでアンケートでもとって決めると思うわよ」
「だよな~」
なにになっても頑張って役割をこなして永遠と過ごそうと決意した。
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