番外編2話 空の両親
生まれたときは可愛かった。
本心でそう思う。
空が生まれたばかりのころは本当に可愛くて優しく育てていこうと本心で思っていた。
でも、あの子の異常性に気が付いたのはそれから半年後だった。
半年くらいで二足歩行を始めてしゃべりだした時だった。
それも意味のない言葉ではなくしっかりと会話が成り立つ形で。
それだけだったら私たちは天才なんだと思って喜んだわ。
数年後の幼稚園時代。
空の異常性は際立ったわ。
あの子は何を教えられてもすぐに吸収していった。
まごうことなき天才。
でも、あの子の感情はすごく乏しかった。
同い年の子に比べて感情の起伏がほとんどなかった。
お遊戯会をしていてもあの子はどこか冷めた目をしていた。
楽しそうに笑う事なんてほとんどなかった。
そんなあの子を私も夫も不気味に思っていた。
テストとかはいつも満点。
でも、あの子はそれが当たり前みたいな顔をしてた。
それに比べて美空は出来がいい子だとは言えなかった。
そんな子供たちに私たちはいつしか関心が無くなっていった。
そんな時に空と美空と一緒にいた女の子。
それが瑠奈ちゃんだった。
あの子は空と違って愛嬌があった。
表情豊かで可愛くてそれでいて年相応な子だと思った。
だから私も夫もあの子に構うようになっていった。
「関わるんじゃなかった」
空が瑠奈ちゃんを襲ったとき許せないと思った。
私達の大切な女の子を気づつけるなんて許せないと思った。
実際に許せなかった。
だからすぐに家を追い出した。
あの子がどうなろうと私はどうでもよかった。
あんな《《悪魔みたいな子》》は。
でも実際は空はあの子のことを襲ってはいなかった。
それどころか浮気していたのは瑠奈ちゃんたちで冤罪だった。
そんな子を追い出した私達夫婦は周りからとんでもなく白い目で見られた。
家を出たらすぐに噂される。
勿論悪い噂。
だから二人を連れ戻そうとした。
でも戻ってきてはくれなかった。
それどころか関わったらこのことを近所にばらまくと脅された。
あの様子では絶対に戻ってくる気はなさそうだった。
だから殺してしまえばいいと思った。
そうすれば子供の死を悲しむ親という立場を得られる。
だからあの子に復讐をしようとしている藤田君にいろいろと協力してあげた。
その結果あの子を瀕死の重傷にまで追い込むことができた。
これであの子に貶められた評判を解決できると思ったのに。
なんで私たちがこんな目に。
「お前らがうちの可愛い愛娘を傷つけようとしたのか?」
「ち、違います! それは彼が勝手にやったことで」
「嘘はつかなくていい。結局おまえらが支援した男があと少しでうちの娘を殺そうとしたって言うのが問題だ。どう責任を取る?」
クソっ。
なんでこんな目に。空にもあの女にも関わるべきじゃなかった。
関わってしまったがゆえに私たちは謎の男たちに連れて行かれてこんなにもボコボコにされてしまった。
彼が言ううちの子というのはきっと空と一緒にいた女の事なのだろう。
こんなにかかわってはいけない人物だとは想像もしていなかった。
「「………」」
「そうか……なら命で責任を取ってもらうほかにないな」
目の前の男はどすの利いた声でそういう。
目が本気だった。
本気で私たちを殺すつもりだ。
「そんな……」
「もういい。連れて行け。それなりの苦痛を味わわせてから殺せ」
「かしこまりました」
きっとこれから私たちは殺される。
ゴミみたいにみじめに。
あんな子供《空》なんかに関わるんじゃなかった。
あんな悪魔《《生まなければよかった》》。
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