番外編1話 親友の末路
「もう俺に後は無いんだ。あのくそ野郎を轢き殺してそのまま逃げてやるんだ」
居場所はない。
資金もそろそろ底をつくしつるんでいた奴らとはなぜか全く連絡がつかない。
あいつと俺を振ってあんな野郎に靡いたクソ女も一緒に轢いて地獄に叩き落としてやるんだ。
「問題は車の手配とどうやってあいつらが一緒にいるタイミングを知るかだ。チャンスは一回だけ。しくじればその時点で積みだ」
車は正直そこらへんに止まってるやつを盗めばいい。
やっぱり問題はタイミングだな。
ここをしくじったら余計に警戒されて二度とチャンスは回ってこない。
「お困りのようですね? 悟君」
「あんたは、空の母さんか。何の用ですか?」
「いえ、あなたが前に計画していた件はどうなったのかと思って聞きに来たんですけど、その様子だと失敗したみたいですね」
「ああ。理由はわかんないんだけどな。資金や拠点を提供してもらったのに申し訳ない」
「それは気にしなくてもいいのですよ。それより次は何をするのか決めましたか?」
この人はあいつの実の母親のはずなのになぜかあいつを殺そうとしている。
俺が言うのもなんだけど狂っている。
狂気じみた目で見られて少しだけ気圧されてしまう。
「まあ、考えている。でも実行に必要な情報が足りなくてな」
「それなら私が教えてあげますよ。空達は近いうちに三人で遊園地に行きますよ。ルートはきっと電車を使うので絞られているはずです。彼らの住所は知っていますよね?」
「知っている。それよりも本当にあいつらは遊園地に行くのか?」
「行きますよ。絶対にね。できれば空だけでなくあの小生意気な女も殺してほしいものです」
「任せてくれ。その情報が仕入れられるならすぐにでも実行できる」
これで俺の復讐に終止符を打つことができる。
待ってろよ空。
俺がお前の人生を終わらせてやるからさぁ。
「あははははははははははははははは」
◇
「本当に来やがったな」
俺は空の母親に言われた通りの時間帯と場所で盗んだ車の中で待機していた。
この時間帯は車の通りが少ない。
「呑気に歩きやがって。まあ今から地獄に落ちるんだがな」
ウキウキしながら俺はアクセルを全力で踏み込んだ。
車はすぐに加速してそれなりの速度なる。
あいつを確実に殺すためにわざわざトラックを用意した。
「ちっ、天音を逃がしたか」
目の前で空が天音を押して車線上から外した。
2人とも轢き殺す予定だったのに予定が崩れた。
まあいい。
あの体制だと空は確実に轢き殺せる。
そう思った瞬間には空の体が宙を舞っていた。
「よし! とりあえず空は轢けた。あの感じだと助からないだろうな。あはははははは」
つい嬉しくなって運転席で高笑いしてしまった。これで逃げ切れば俺の勝ちだ!
やっとあの野郎に復讐で来たんだ!
「これで俺の華やかな生活が始まるんだ!」
とりあえずこのトラックを森とかに放棄しに行かないとな。
へへへ。
これで俺を縛るものは何もない。
俺は自由なんだ!
◇
ここらへんでいいか?
結構山奥にまで来た。
「あっ!」
だが、狭い山道で運転を誤ってタイヤが崖から外れる。
不味い。
そう思った瞬間にはトラックは崖の底まで落ちて行った。
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