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恋人に浮気され親友に裏切られ両親に見捨てられた俺は、学校のマドンナに救われた  作者: 夜空 叶ト


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第104話 問題なしの体と拭いきれない違和感

 検査結果は特に何の異常も見当たらなかった。

 それでも全治は六か月かかるし左目はもう治ることはない。

 生きてただけでも幸運かな。


「よかったねお兄!」


「ああ。脳には何の異常もないらしいからとりあえずは安心だ。あとは怪我を早く治してリハビリしないと」


「そうだね~学校も卒業できるように何とかしないといけないし」


 とりあえず休みを全部補修とかに充ててもらえたら卒業はできるのかな?

 申し訳ないけど後藤さんにそういうことができないか学校に問い合わせてもらおう。

 俺のほうでも聞くけど最終的にそういうのは保護者が話を通さないといけないだろうし。


「だね! 頑張って永遠姉さんと同じ大学に行かないとだもんね?」


「その通りだよ。勉強はここでやるとしても単位はどうしようもないからな」


「まあ、きっと何とかなるよ。とりあえずは安静にして体を治してね。お兄がいないと寂しいから」


「ああ。頑張る」


 いつになくしおらしい表情でそんなことを言われると早く治さないとと思う。

 まあ治るまでにはかなりの時間がかかるだろうけど地道に治していこう。

 急いでもあんまりいいことないしな。


「そうして。じゃあ、私は帰るね。明日もまたお見舞いに来るから」


「別に無理して毎日来る必要は無いぞ? 大変だろう」


「無理なんてしてないよ。毎日お兄の顔が見たいだけだから気にしないで。永遠姉さんも同じ気持ちだろうし」


「そっか。わかったよ。ありがとな」


 なんだかうれしい気持ちと申し訳ない気持ちが湧き上がってくる。

 でも俺も永遠や美空の顔を見たくはあるのでありがたい。


「うん! それじゃあまた明日ね」


「ああ。また明日」


 そういって美空は病室を後にした。

 途端に静かになった病室を見回して少し寂しくなる。


「そういえば初めて入院なんかしたな」


 今まで17年間生きてきて入院したのなんて初めてだ。

 それもかつての親友にトラックで撥ねられるなんて笑えない。


「……悟は死んじまったんだよな」


 あまり実感がない。

 中学までいや、高校一年のころまでは親友だった。

 あいつはそうとは思ってはいなかったみたいだけど。


「それでも俺にとっては唯一の親友だったんだよな」


 そんな奴が死んだ。

 こうやって一人になると嫌でもその事実を認識してしまう。

 あいつは俺に対して酷いことをしたけどそれでも死んでいいとは思えなかった。

 もっと違う道があったのではないかと思わずにはいられなくなる。

 でも結果は変わらない。


「しょうがないよな。あいつが選んだ道なんだから」


 結局はそういう事なのだ。

 残念ではあるけどもうどうしようもない過去の出来事だ。

 俺にできるのは藤田悟という人間がいたということを忘れないでおくことだけだ。


 ◇


「何かおかしいっす」


 これで先輩に関する事件は全て片が付いたはずなのになんだかもやもやする。

 なにか肝心なことを忘れているような気持ち悪さ。

 パズルの一ピースが埋まらないようなそんな感覚を覚える。


「何がおかしいんっすかね」


 主犯は死んだ。

 それだけは間違いない。

 既に鑑識にも回されて歯形などから藤田悟本人であることは確認が取れている。

 だから犯人は絶対に死んだ。

 もうどうしようもない事実なんだ。

 それでも、何かが納得できない。

 納得出来ないんだ。


「でも、もうすでに先輩に恨みがあるような人物は外にはいない。私の心配しすぎなんすかね?」


 どうなんだろう?

 こういう時の勘はあまり無視したくはない。


「いったんは頭の片隅に置いておくとしますか。思い出せないし」


 私はそう判断して一旦思考の海から意識を戻す。


「よしっ先輩のお見舞いにでも行きますかね」


 私は先ほどの考えをいったんは頭の片隅に追いやって先輩のお見舞いに向かった。

 早く良くなるといいんすけどね。

 永遠先輩言い寄られてるし。


「まっ、全くなびいてないっすけどね」

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