第100話 信じがたい現実 2
「美空ちゃんは悪くないわよ。悪い人間がいるとすれば私達全員でしょうね。全員危機感が無かったのだから今は誰かを責めるんじゃなくて空の無事を祈りましょう」
「そ、そうですよね。ごめんなさい私ちょっと気が動転してて」
「美空さんも永遠先輩も少し落ち着いてください。焦る気持ちもわかりますが私たちが焦っても空先輩がどうにかなることは無いんですから」
私や永遠先輩、美空ちゃんがどれだけ手術室の前で焦っても空先輩の容体はなんら変わらない。
むしろ騒ぎすぎると中で手術している医師の方々の集中を乱しかねない。
先輩が助かる可能性は絶望的だと思う。
永遠先輩の話によれば4トントラックにそれなりの速度で撥ねられたらしい。
普通に考えて即死してないだけでもすごい。
救急車の中では心臓が止まっていたらしいし。
「そ、そうよね。ごめんなさい」
「いえ、謝られることではないので。とりあえず私たちにできることは祈ることだけです。もどかしいですけど」
何もできない自分がもどかしくて仕方ない。
私がもっと先に情報を伝えることができていれば空先輩がこうなることもなかったのに。
藤田悟がすでになりふり構わずに先輩を殺すことだけを目的にしているって。
まさか、こんなに早く行動を起こすなんて思いもしなかった。
「空が最後に電話をしていた相手って杉浦さんなの?」
「そうっすね。藤田悟の情報を掴んだのですぐにお伝えしたんすけど手遅れだったみたいです」
「藤田悟がお兄を轢いたってことですか!?」
「おそらくそうっす。現在は逃亡中みたいっすけどすぐに捕まると思います」
私がそう返答したのと同時に手術中のランプが消えた。
つまり、手術が終わったことを意味している。
「先生! 空は、空はどうなりましたか?」
「手は尽くしました。あとは本人が目覚めるかどうかです」
「つまり一命はとりとめたという事ですか?」
「はい。脈は安定しています。ですが意識が戻るかどうかは賭けです。本人の生命力次第です」
「……そうですか」
先輩の生命力次第……か。
空先輩は今までかなりの修羅場をくぐってきた。
だから今回も……と期待してしまう。
「今から柳さんを病室に運び込みます。入院の手続きなどもありますので後ほど保護者の方をお連れいただけますか?」
「わかりました」
今の空先輩の保護者は後藤さんか。
とりあえずの手続きはあの人に任せておけば何とかなるか。
「永遠姉さん私はお兄の生活用品とかを持ってこようと思いますので姉さんはお兄のそばにいてあげてください」
「私も少しやらないといけないことがあるので席を外します。病室がわかったらメッセージ送ってください」
とりあえず一命はとりとめた。
後は目覚めるのを待つだけ。
だから、私は私で出来ることをしないといけない。
先輩をあんな目に遭わせた奴を逃がすわけにはいかない。
今すぐにでも牢屋にぶち込んでやるんだ。
私に初めてできた友達や大切な先輩を泣かせた報いをすぐに取らせてやるんだ。
絶対に。
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