『て』
D【でぃー】
主にリプレイジャンルにおいて、mD、mDn(m、nには数字が入る)の形で使用される。
DはDice (サイコロ)の意であり、特に指定がなければ6面体のいわゆるサイコロを示し、3Dとあれば、6面体サイコロを3つ振るの意で、4D10とあれば、10面体のサイコロを4つ振るの意となる。
TRPG【てぃーあーるぴーじー】
テーブルトーク・ロール・プレイング・ゲームの頭文字を繋げたもの。和製英語。コンピュータRPGの元ネタとなったゲームであり、今でも愛好者がいる。
概ね4人以上で行うゲームである事、プレイ時間が数時間から1日がかりになるため、なかなかプレイ環境を整えるのも大変である。
参加者は自分が演じる分身となるキャラクターを作成したり、そのキャラクターが行う冒険のシナリオを作成したりとプレイの準備からして大変なのだが、それが楽しいゲームでもある。ゲームのためとは言えキャラクターやシナリオの創作を行うので、小説を書くことと極めて相性が良い。
なろうの書籍化作家に限らず漫画家などにも愛好家がおり、わたしもかつてTRPGのヘビーゲーマーであった。そしてそれのノウハウを以って小説を書いている。
TS【てぃーえす】
トランス・セクシャルの頭文字。性転換のこと。現実においては外科的手術によって性器の切除・形成を行うものであり、不可逆的に生殖能力が失われる。
創作においてTSを扱うものをTSモノと言ったりTSF(トランス・セクシャル・フィクションの略)と言ったりする。
創作において手術によるTSが描かれたり生殖能力の有無について言及されることは、特に18歳未満でも閲覧可能ななろうにおいてまず存在しない。
ほぼ全ての作品において男性キャラが女性になる(MtF)パターンであり、女性が男性になる(FtM)の作品は少ない。
なろうに限らずTSもの全体の傾向として、まず外見的特徴はそこまで変化せず、性別が変わるものがある。現代舞台で病気となったり怪しい薬を飲むと性別が変わる、原因もなく朝起きたらなぜか女だった(あさおん)というもの。
外見が大きく変わる変身もの。男性キャラが魔法少女になるとか、おっさんが銀髪幼女にというのもそうだろう。
男性と女性の魂が入れ替わるというものについては映画『君の名は。』が流行したことにより認知度が高いと言えよう。
なろうにおいては転生ものが流行った影響も強く、TS転生、転生したら女になっていたというものが多い。またVRゲームジャンルにおいては男性主人公が自分の身体のデータを機械で読み取ってキャラ作成を行ったところ、なぜか女性アバターとなったという作品も散見される。
TSものの良さは突然の性転換による自身や周囲の意識の変化・羞恥・驚愕にあるとされ、TS転生を始めとするなろうの作品はそれが弱い、単に男性価値観で共感できる女性キャラを置きたいだけだと批判されることもある。
TL【てぃーえる】
ティーンズラブの略。主人公が女性で男性との恋愛を描いた作品であり、ティーン女性向けの漫画・ライトノベル的設定でありながら性交が描かれるもの。
漫画の場合はイラストも少女漫画的なものとなる。
初期のTLには少女漫画的画風だがレディースコミック同様にレイプなどの犯罪行為が描かれることも多かったが、現在では避けられる傾向にある。
またティーン向けと言うが、現在では主人公年齢は18歳以上が基本。90年代後半に10代女性向けとして作られたジャンルであるが、現代のメイン読者層は30代女性と言われる。
なろうにおいてはムーンライトの女性向け作品はその多くがTLであると言えるだろう。
原義的には性交描写は必須であるが、近年ではその意味が薄れていると思われ(あるいは逆の意味で性的描写のない作品と誤解され)、なろうでもTLというキーワードを使った作品が見られる。
TCG【てぃーしーじー】
トレーディング・カード・ゲームの頭文字。
元々トレーディング・カード(またはコレクタブル・カード)というものが存在し、カードが入った中身の見えないパックを購入し、ランダムに封入されたカードを収集する。持っていないものを余ったものと他人と交換(トレード)するということからこの名が付けられている。
その集めたカードを使って本格的なゲームを行うという形式のものをTCGという。『マジック・ザ・ギャザリング』というゲームが元であり、日本でも『遊戯王OCG』など多様なゲームが存在し、極めて大きな市場規模を誇っていた。
しかし日本では特に市場規模は縮小傾向にある。
マジック・ザ・ギャザリングからしてオリジナルのファンタジー世界があり、そこでのストーリーをカードとして表現するという形を取っているので、そういった意味での小説との親和性は高い。日本のライトノベルでは『モンスターコレクション』のシリーズなど。
しかしカードゲームをプレイしている(それも作者オリジナルの)ところを小説として描くのは極めて難しい。漫画やアニメとの親和性は高いが、絵による説明無しにカードゲームのプレイ風景を描いて面白く伝わるかというと苦しいところがある。
DPS【でぃーぴーえす】
ゲーム用語。ダメージ・パー・セカンドの略。日本語に訳せば秒間ダメージ。例:一回で1200点のダメージを与える攻撃を3秒に1回行うならDPSは400。実際には回避されたり敵の防御力があったり味方の補助を受けたりと複雑に変動する。
なろうにおいてはVRゲームジャンルにおいて見かける表現だが、小説はコンピュータが特に計算している訳ではないため、DPSが何点であるという言い方はされない。DPSが足りないとか、DPSもっと稼げ、DPS貢献しろなどという表現が多い。意味としては敵にダメージを与えてはいるが、このペースだと先にこちらが負けてしまうことへの注意喚起や、倒せるけどこれでは効率が悪いという意味、あるいはサボってないでもっとダメージに貢献しろである。
ディストピア【でぃすとぴあ】
ユートピア(理想郷)の反語。一般的な共通するイメージとしては全体主義的管理社会で一見美しく統制されているように見える。市民からは幸福であるように見えるが階級から爪弾きにされたものとの貧富の差が激しく、それらは報道されない。反体制派は粛清され、表現の自由も極度に抑圧されている。
現代においてもSF、特にサイバーパンクのジャンルにおいての背景世界としてしばしば使われる。
低年齢無双【ていねんれいむそう】
異世界転生したキャラクターが低年齢、それも5歳児未満程度で大人顔負けの能力を発揮すること。
魔法の才能とかはともかく、肉体的な強度や内政能力の場合など、読者が受け入れがたいほど奇妙に見える場合がある。通常であれば両親が受け入れられないだろうとも。
それを逆手にとってネタにした作品も存在する。
底辺【ていへん】
①三角形など多角形の底になる辺。
②なろうにおける底辺作家という表現の略称。
→底辺作家【ていへんさっか】参照。
③階層構造における下位層のこと。例:社会の底辺。
なろうの異世界転移/転生ものは底辺層にいるキャラクター、学校でいじめられている生徒や社畜が転移/転生するというものが一般的である。
底辺作家【ていへんさっか】
なろうで書籍化を目指すが、書いていても人気のでない作者による自虐表現。
一般的に作品のブックマークが100に行かない作者のことを示す。
文章の上手さについてはあまり関係がない。作品がテンプレ的であるか否か、長編作家か短編作家か。投稿ジャンルはなにかと言うことによって大きく影響される。例えばジャンル詩であれば、2020年8月現在で3万作品以上ある中で6作品しかブックマーク100を超える作品が無い。
テイマー【ていまー】
テイムする人・職業のこと。
→テイム【ていむ】参照。
テイム【ていむ】
野生の獣または魔物を手懐ける、馴致すること。本来は魔法的手段によらない技術というイメージであるが(サーカスの調教師のような)、なろうをはじめとする創作においては現実の調教師的な技術ではなく、コンピュータゲームでのモンスターが仲間になるような演出を元にしてのテイムが行われる。
特にテイムというスキルがあり、魔法的としか思えないような効果・契約によってモンスターが仲間になるものが多い。また近年のなろうにおいては何のイベントもなくテイマーにモンスターが仲間にしてくれと寄ってくるパターンも見られる。
よくあるパターンとしては「戦闘でモンスターに勝利したときにそのモンスターが仲間になる場合がある」「戦闘で相手に強さを認めさせて(瀕死にして)テイムスキルを使うとモンスターが仲間になる」「餌付けする」「モンスターの封印を解くなどのイベントをこなす」「向こうから仲間にしてくれと寄ってくる」である。
なぜかモンスターがテイムした途端美少女になったりするのもテンプレと言える。
デウス・エクス・マキナ【でうすえくすまきな】
①訳すと機械より現れる神。演劇用語であり、古代ローマの演劇において悲劇に次ぐ悲劇!という感じで話を展開していき、「やべえ収拾がつかない!」となった時にエンディングで機械仕掛け(大道具)の上に乗ったアポロンとかが現れ、「やあやあ見ていたよ、死んだヒロインは復活させておいた。後は仲良くやりたまえ!」的な終わらせ方をすること。
転じて話を膨らませて無理矢理話を終わらせること。夢オチなどもこの一種ではある。
②機械神や機械仕掛けの神などと表現し、機械の神格や、神の如き力を有するロボットとして描くもの。
特に機械の神は古来の神話には存在し得ないため、スチームパンク的ファンタジーなどと相性が良い。わたしも使っている。
データでご紹介今日の一冊【でーたでごしょうかいきょうのいっさつ】
博報堂DYISとの連携コンテンツで、2週間に1回のペースで更新されている、なろうに掲載されている作品を紹介するコーナーのこと。かなり詳しいあらすじと登場人物の紹介が載っている。
元々ランキングでも名前を見るレベルの作品を紹介しているということもあるし、紹介後に書籍化される作品などもあり、なろうに詳しい読者なら元々知っているという作品も多いだろう。逆に言えば読んで外れだという可能性が低いとも言えるので何気にお勧めである。
なろうの各プラットフォームの利用データと博報堂DYISのマーケティング分析により作品をお勧めするというもので、何か凄そうな気もする。
ここで記念すべき第1回の分析を見てみよう。書籍化もされている『武姫の後宮物語』だ。「こんなジャンルが好きな方にオススメ:恋愛」…………いや、誰でもわかるんだがそれ。
てえてえ・てぇてぇ【てえてえ・てぇてぇ】
尊いに同じ。
→尊い【とうとい】参照。
出落ち・出オチ【でおち】
出だしに落ちがあること。お笑いの用語で登場した瞬間やすぐに一番大きく笑うところがあり、その後は尻すぼみであること。よって本来の意味としてはどちらかというと悪い意味の言葉である。
とは言え、最初から笑える要素があるというのは現代のエンターテイメントにおいては重視されるところであり、出落ちもまた最初から面白いという良い意味で使われることも多い。
なろうでの創作もまた、1話目が面白くなかったらそもそも続きを読んでは貰えないという観点から特にランキング上位の作品において1話目を面白くする、出落ち的にするという意識が強い。例:開幕婚約破棄の断罪シーン。
また別の使用例として、ボスやライバルキャラが威圧的であったり因縁あるセリフを言った後に瞬殺されることも出落ちと表現されることがある。
溺愛【できあい】
なろうの恋愛ジャンルにおけるお勧めキーワードのひとつ。
本来は盲目的に愛することを意味する、ネガティブな意味の言葉である。
しかし、主に女性主人公が男性ヒーローに心から愛される際につけられるキーワードであり、なろうやネット小説全般においてはネガティブな意味ではない。
デスゲーム【ですげーむ】
敗北するとプレイヤーが死ぬゲーム。登場人物たちは特定のエリア(孤島、学校、電脳空間、それ専用の施設など)に集められ(意図せぬ形で強制的にという場合が多い)、召集した者(ゲームマスター等と言われる)からゲームを強要されるという形になる。
パターンとしては大別して2つ。プレイヤー同士の殺し合いを強要するパターンとゲームマスターを倒す、ゲームマスターの用意した関門を突破するというもの。
小説『バトル・ロワイアル』が人気となって以降、同タイプの作品はライトノベルやマンガなどで多く見られた。
なろうにおいては『ソードアート・オンライン』の影響も強く、VRゲームものにおいて多く見られる。同作が流行ったのと、『ログ・ホライズン』がデスゲームではないがログアウト不可であるせいでVRゲームもの=ログアウト不可のデスゲームというような認識が強かった時代が存在する。そのせいかキーワードに「非デスゲーム」と書いてある作品が非常に多く、デスゲームものを探そうとキーワード検索すると引っかかる罠である。
→バトルロワイヤル【ばとるろわいやる】、ログアウト【ろぐあうと】参照。
デスマーチ【ですまーち】
①死の行進。囚人や捕虜を強制的に移動させること。満足いく休憩や飲食・装備などない状態、かつ体力的に劣る女子供や老人を含む、すでに戦闘や難民となっていて捕虜が衰弱しているなどの要因により行進中に死者が出る、あるいは遅れたものを殺していくこと。
②通称デスマ。コンピュータソフトウェアの開発プロジェクトで使われるようになった言葉で、特に納期が破綻寸前でプロジェクトメンバーの負荷が膨大になった状況を示す用語。
残業・休日出勤などの過重労働が常態化し、メンバーの体調不良、それによる離職で残ったメンバーがさらなる過重労働を強いられると負の連鎖が続き、過労死などの問題も発生する。
なろうにおいては『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』という作品が異世界転移ものとして有名であり、社畜のデスマ過労死からの異世界転生というパターンはよく見られる。
デバフ【でばふ】
ゲーム用語であり、バフの反語。
主に戦闘において対象に直接的に損害・ダメージを与えるわけではないが不利益な効果を一時的に与える魔法やスキルのこと。一時的に能力値を下げる、行動を阻害する、武器や防具の性能を落とす、毒や麻痺といったステータス異常を与えるなど。
デバフを戦闘の中心に組み込んでいる戦闘スタイルをデバッファーと言う。
→バフ【ばふ】参照。
デミヒューマン【でみひゅーまん】
亜人のこと。省略してデミとも。ただしデミは半分を意味する接頭語なので、それだけだとデミヒューマンの意味とは限らない。
→亜人【あじん】参照。
伝奇【でんき】
①伝奇小説のこと。奇異な伝承の物語の意。元は中国唐代に書かれた短編小説及びその影響を受けて書かれた作品。
②伝奇ロマンのこと。伝承や史実を幻想的に描く作品。よって作品の舞台は現実世界または現実世界の過去が基本となる。
現実世界の事件に超常の存在が絡んでいたり、日常に潜む怪異であったり、歴史上の事件は妖怪によるものという知られざる真相があるなどというパターンがある。
ライトノベルでも『化物語』など人気。なろうにおいてもかつてのローファンタジージャンルは伝奇的な作品が主流であった。
また同キーワードはローファンタジーに最も多いが、異世界恋愛やハイファンタジーでも見かけられ、例えば伝承に忠実な吸血鬼がメインで出てくれば理解できるが、中にはなにが伝奇なのか良くわからない作品も存在する。
テンプレ【てんぷれ】
テンプレートの略。定型文や雛型の意。模範というポジティブな意味で使われることもある。例:ゲームのテンプレパーティー、テンプレ攻略法。
ネガティブな用法として、型にハマってつまらないという意味。
創作に限らず文化とは無数のテンプレの上に成り立ち変化していくものであり、テンプレを利用しない文化など存在しない。ただ、そのテンプレが身内ネタのようになってくると外部の読者から受け入れられづらくなる、特にサイト内のランキング上位作品が書籍化した場合に評判が悪いという問題が発生する。
なろうにおけるテンプレも特に恋愛やファンタジー、VRゲームジャンルにおいて無数に存在する。その一部はこの辞典内に項目として記されている。
テンプレ外し【てんぷれはずし】
テンプレではない文を書くこと、あるいはテンプレを利用しつつ、展開を捻って外していくこと。
なろうにおけるテンプレは完全にテンプレの文章を書けば、それは誰かの文章とほぼ同じ内容になる。そこでそれから外れたものに独創性があるのだが、あまりにも独創性がありすぎるとまず読まれない。
そこである程度テンプレを守りつつ少しずつ独創性を混ぜるのだが、その中で人気が出たものがまた新たなテンプレとなり、流行が変わっていくのである。




