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第62話 お尋ね者

~~~ 診療所 ~~~~~~~

風雷「私を殺しに来たのであろう?」

凛 「最終的にはね。」


風雷は中へ入り、ゆっくりと戸を閉める。

この女子(おなご)は病み上がりだ。

機敏に動くことは出来ないだろうし

刃物で刺すにも(りき)めないはず。

となると、女子はおとりで、仲間が

現れる可能性がある。

相棒に気配を感じ取ってもらってるが

今のところ近くに人はいないようだ。


薬箱から短剣と取り出し、(ふところ)へしまう。

相棒もいるし、まずは一安心。


凛 「今は殺せない。

   機敏に動くことができないから。」

風雷「だろうな。」


凛 「殺すまで、あんたと行動を共にするわ。」

風雷「面白い冗談だ。

   私を殺すと宣言してる者と共にする?」


凛 「えぇ。そうよ。」

風雷「さては、お仲間がここへ

   向かっておるのだな?

   会話は時間稼ぎか?」


凛 「違うと言って信じる?」

風雷「聞くだけやぼだな。」


風雷はここが危険だと察し、とにかく

一刻も早く我が診療所から離れる決意をする。

旅立つ準備として、薬箱の整理をし始める。


凛 「ここを出て行く気なら私も

   連れて行きなさい!」

風雷「診察に行くだけのこと。

   ここで待っておれ。

   戻って来る。」


もちろん、それは嘘である。

自分を殺す者を連れて行く訳がない。

ましてや、彼女は足手まといだ。


凛 「へぇー、夜中に診察ね。」


風雷は薬箱を背負う。


風雷「留守を頼む。」


風雷はゆっくりと外へと出る。

戸を閉めるなり早歩きでこの場を去った。

凜も立ち上がり付いて行こうとするも

外に出たときには、風雷は遥か先を歩いていた。

走って追いつくほど回復してはいない。

凜の生きがいは風雷をこの手で殺す

ことであって、このまま今生の別れと

なっては困る。

なので、歩いて風雷の後を追うこととした。


~~~ 吉原 ~~~~~~~

村隆「心配しておったのだぞ。」


診療所を離れ二刻(にこく)(1時間)経過後に

風雷は吉原のとある揚屋(あげや)へ立ち

寄っていた。

村隆(むらたか)との再会に来たのである。


村隆「病で死ぬような男ではないと

   信じておったが、

   こうして再会できてうれしいぞ。」


村隆は麻疹のことを話してるようだ。

風雷の診療所は隔離地域内であったのだから

心配するのは当然と言えば当然である。


風雷は、なぜここに立ち寄ったかというと、

吉原を横切ろうとした際にふと村隆のことを

思い出したからである。

それと、診察に行くと嘘を付いて診療所を

出たというのも理由の1つだ。


堵希「失礼します。」


風雷と村隆しかいない部屋に

一人の女子(おなご)が入って来た。

風雷を正面にし、正座をして

両手を重ね頭を下げる。


堵希「その節は大変お世話になりました。

   堵希(とき)で御座います。」


風雷は、その女子に見覚えがある。

そう梅毒の病で死にかけていた子だ。

いつの間にかすっかり元気になっていた。

これもまた喜ばしい限りだ。


風雷「元気でなにより。」

堵希「改めてお礼を申し上げます。」


風雷「確かに治療を施したのは私だ。

   だが助かるかは五分五分であった。

   あとは自身の生きたいという

   気力が勝るか否か。

   見事、病が回復できたのは

   自分の力だということを忘れぬな。」

堵希「滅相も御座いません。」


堵希は、袖から何か取り出す。


堵希「つまらない物ですが、

   お納めください。」


紙に包まれた物を風雷の前へ差し出す。

中身は見えないものの、形状からして

50両ほどの小判であることは間違いない。

借金して工面したのか、村隆も相乗り

したのかは知らんが、無理して

かき集めたのだろう。


風雷「世話になる。」


風雷は有難く紙包みを受け取ろうと

指で紙包みを自分の方へと寄せるも

直ぐに堵希側へと押し返す。


風雷「では、私からも。

   お主への餞別(せんべつ)だ。受け取れ。」


要するに風雷は小判を受け取らなかった

のである。


堵希「これでは」

風雷「貴方(あなた)はあの病気で死んだ。

   これからは別人として生きなさい。

   これ(小判)は別の世界へ飛び出す

   足しにしたまえ。」


堵希「ですが」

村隆「堵希!恥をかかせる出ない。」

堵希「・・・」


風雷「吉原を出ろとは言わん。

   せめて仕事を選べ。」


堵希「・・・」


堵希の目元から涙が溢れ出す。


堵希「大事に使わせて頂きます。

   この御恩、一生忘れません。」

村隆「拙者(せっしゃ)からもお礼を申す。」


堵希は深く頭を下げるのであった。


♪ドンドン


女将「お取込み中、よろしいでしょうか?」

村隆「何事?」


女将「風雷様に、至急、お知らせしたい

   ことがありまして参りました。」

村隆「よい、入れ。」


女将が戸を開け一礼する。


女将「先ほど、2名のお尋ね者の張り紙が

   出されました。

   風雷様と凜様にございます。」


村隆は風雷の顔を見る。


村隆「お主、何をしでかした?」

風雷「犯罪は犯しておらん。潔白だ。

   これは誰かの陰謀である。」


村隆「誠か?」

風雷「誠だ。

   何度も刺客に命を狙われてるし、

   冤罪(えんざい)で奉行所へも連行されておる。

   そして、今度はお尋ね者扱いとは。

   何が何でも私を始末したいようだ。」


村隆「お主の言葉、信じるぞ。

   凛とは何者だ。」

風雷「さぁな、私にも分からん。」


風雷は凜という名を過去の記憶から

探すも出て来なかった。


女将「風雷様の連れの女子と記載されおりました。」


風雷は驚く。

凜とは腹を刺され助けた女子の事だと

理解した。

だがなぜ、彼女もお尋ね者の一人なのだと

ますます謎となる。

事情を聴きたいところだが、自ら診療所へ

置き去りにしてしまった。


今更診療所へ戻ったところで、下っ引き連中に

包囲されてるだろうし、彼女もお縄になってる

頃だろう。

彼女の事はどうでもいい。

まずは、自分が助かることだ。

幸いにも現在は夜。

深夜の間に移動すれば朝方には関所へ

到達できることろだろう。


風雷「済まぬが、出ることにする。」

村隆「行く当てはあるのか?」


風雷「心配無用。」

村隆「ならば途中までお供する。」


風雷「有難たきお言葉。

   だが遠慮させて頂く。

   1人の方が移動し易く目立たない。」

村隆「検討を祈る。

   何かされば使いの者をよこせ。」

風雷「その時は頼む。」


風雷は薬箱を手に取り立ち上がる。

猫は、風雷の肩に飛び乗る。


女将「大通りには役人が居ります。

   裏からお通りください。」

風雷「助かる。」

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