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第57話 裁き

~~~ 奉行所 ~~~~~~~

ここは奉行所内の庭園。

白い小石で敷き詰められた庭園は、

川を思い浮かべるような波線が描かれている。

風も雑音もなく時間が止まってるかのような

空間がそこにあった。


そんな神秘的な場所に、似つかわしくない

2人の姿が見える。

彼らは手足を縄で結ばれ、正座の姿勢で

額を小石の上にこすり付けている。

その両脇には身体を押さえ付けるための捕り物を

持った者がおり、さらに左右斜め前には

刀を持つ者がそれぞれ立っていた。


正座する1人は、損料屋(しんそんりょうや)の店主、

井口である。

そしてもう1人は武田家の長男、経頼(つねより)だ。


これから2人は、自分たちの犯した悪行に対して

裁きを受けることとなる。

裁きと言ってもそれは名ばかりで結果は出ている。

というのも、例え本当に潔白で確たる証拠や

新犯人が現れたとて、この段階では無罪にならない。

役人にも面子がある。

無罪な者を捕まえたとあっては、

役人の威信がゆらぎるからだ。


過去に冤罪(えんざい)で島流しにされた者がたたいる。

そう犯罪を犯しても他人に罪を押し付ければ

逃げ切れるのである。

なんとも理不尽な世の中なのだろうか。

だが、ここに居る2人は違う。

罪を押し付けられたのではないのだから。


2人の関心は、どのような罰を言い渡される

かで頭を駆け巡っている。

そして、損料屋の幹部だった10名は

現在牢獄で待機中だ。

彼らは、連帯責任として井口と同じ罰を

受けることとなる。

その他2000名の雇われ者は、特例として

(とが)めなしとのことだ。

まぁ、人数が多かったからであろう。


正面の広間に1人の下っ引きが現れる。

ついにこの時が来た。


下っ引き「上様のおなーりー。」


お奉行様を先頭に御目付け役の8名が

一列に続く。

お奉行様が広間の中央に腰かけ、

御目付け役は左右4名づつ腰かける。


お奉行「双方。(おもて)を上げー。」


御目付けが折りたためられた和紙を広げ、

記載されてる井口の悪行が読み上げられる。

どうやら2人まとめてではなく、

井口の方から1人づつ裁くようだ。


1つ、相馬の領主を殺害

1つ、相馬の年貢を略奪

1つ、劇薬の毒を所持

1つ、2000名もの浪人を集め

   藩への反旗を企む

1つ、(みかど)と名乗る

1つ、毒で200名もの兵を殺害


6つの罪に問われてる。

特に領主の殺害と藩への反旗は罪が大きい。


御目付け1「井口殿、申し開きはあるか?」

井口「御座います。」


御目付け1「申せ。」

井口「相馬の件ですが私の仕業では御座いませぬ。

   屋敷には信忠(のぶただ)という剣の達人が居りました。

   私共が束になってもかまいません。

   領主の首を取るなど不可能で御座います。」


御目付け1「お主は頻繁に相馬の屋敷に出入り

      しているところを目撃されている。

      斬撃のあった当日もだ。

      それはどう説明する?」

井口「確かに当日も屋敷へ参りました。

   ですが私が屋敷に足を踏み入れた時は

   既に事のあとだったのであります。

   屋敷には信忠だけでなく、剣術に覚え

   のある者が40名近く居りました。

   たとえ浪人どもを従えたとて勝ち目は

   御座いません。

   内乱か別の者によるものかと。」


御目付け1「ならば年貢も関係ないと。」

井口「蔵を見ましたが1両たりとも残って

   おりませんでした。」


御目付け1「本当になかったのだな。」

井口「はい。この目で確認いたした。」


井口「毒につきましては護衛のため

   所持しておりました。

   使ったことなど一度も御座いません。

   2000名もの浪人集めは間違い

   で御座います。

   雇っていたのは20名。

   その配下を集めれば2000名になるかと。

   私には存じぬことです。

   (みかど)と名乗ってた件につきましては

   配下の者が面白半分で呼んでいた

   だけのこと、私はその呼び名は止めよ

   と注意していた身であります。」

御目付け1「ほう。全て井口殿とは関係のない

      事だと?」

井口「左様でございます。」


御目付け1「では証人をお呼びする。

      時谷(ときや)殿、参れ!」


時谷という呼び名を聞いて井口は背筋に

悪寒が走る。

桐生で共に仕事したかつての仲間だ。

そして、今は桐生の領主を務めている。

だが、ここで井口はなぜ時谷が呼ばれた

のだと疑問に思う。

6つの罪に対して関係ないからである。


時谷はお奉行から見える位置で、

井口の斜め後ろで正座する。


御目付け1「時谷殿。井口殿は全て無関係

      であると申し出て居るが、

      意見があれば聞きたい。」

時谷「相馬の年貢についてであります。

   損料屋(そんりょうや)で使われた小判に

   田丸製鉄で作られた物がありました。

   その小判、いつもと極印が異なって

   いたため田丸製鉄へ確認したところ

   新しい小判だというのが判明。

   しかも、相馬に収めたものでまだ

   出回ってないとのこと。」


御目付け1「相馬で保管されてた小判が

      なぜか損料屋が持っていたと。

      それは興味深い。」


井口の全身は熱くなり、背中が汗で

びっしょりとなる。

この後も、時谷の意見は続く。

前桐生の領主を毒で殺害しようとしたとこ。

損料屋の伝票を確認したところ、あきらかに

1000名を超える者へお金が支払われてる

とうこと。次々と井口の嘘が明るみとなる。


相馬領主の殺害は証明されなかったものの、

前桐生領主の殺人未遂が追加されることとなる。


時谷は退場し、井口の申し開きは終わった。

次は、経頼の番だ。

同様に経頼の悪行が述べられる。


1つ、(まつりごと)(城内の情報)を下界へ漏洩

1つ、井口へ反旗の支援


計2つであるが、反旗の支援は重罪である。

城内の情報漏洩については、既に関係者が

捕らえられており、しらの切りようがない。

問題は2つ目だ。


御目付け1「経頼殿、申し開きはあるか?」

経頼「御座います。」


御目付け1「申せ。」

経頼「反旗などと滅相もない。

   拙者(せっしゃ)は井口殿から用心棒を

   雇っただけのこと。

   それ以外、何の関係も御座らん。」


御目付け1「井口殿、間違いないか?」

井口「否、経頼殿の協力によって2000名

   もの浪人を集められたであります。」


経頼「井口殿は嘘つきだ。

   先ほも証明されたであろう。

   彼の言など信用してはなりませぬぞ。」

御目付け1「確かに一理ある。

      井口殿は嘘つきだ。

      ならば証人を呼ぼう。

      (りん)参れ。」


凛とは?

経頼には聞き覚えのない名前であった。

一体だれなのだろう。

いろいろな人物が頭を駆け巡る。


1人の女性が現れた。

経頼の斜め後ろに座る。


御目付け1「経頼殿。後ろの者の顔を確認せよ。」


経頼は、振り向き驚愕する。

吉原で殺したはずの女が生きていたのだから。


御目付け1「経頼。見覚えはあるな?

      知らんとは言わせんぞ!」


開いた口が塞がらないとはこのことだ。

経頼は何も反論できない。


御目付け1「凜。井口殿と経頼殿の関係を

      聞かせてくれぬか。」


凛は、隠れて聞いていた2人の会話を

全て暴露した。

そして、経頼の申し開きも終了する。


お奉行「では2人に罰を言い渡す。」

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