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第56話 動揺

~~~ 隔離された町 ~~~~~~~

風雷は二条家の屋敷へと到着する。

ここには商店街でお世話になった者や

診察した者など多くの知り合いがいる場所だ。


ふと思い返すと、街外れの宿を出発してから

今までろくに休憩をとっていないことに気付く。

普通の人間ならば過労で倒れてるところだろう。

だが風雷は違う。人ではないのだから。

人の血さえ摂取できてれば疲労を感じることは

ない。

風雷にとって人の血とは燃料のようなもの。

じっとしてれば減ることはない。

そこが人と異なる点である。


庭へ踏み入ると患者がいる大広間が丸見えだ。

皆、上半身を起こし笑顔で会話してる

のが伺える。

ぱっと見は、問題なさそうな感触である。


大広間にいる数人は風雷に気付く。

一人の男が、縁側へと近づく。


(かずしげ)旦那(だんな)、待ってましたぜ。」

風雷「病原体がうろつくでない。」


ー重「開口一番、それはなかろう。」

風雷「移動するなら口に布を巻け!」


ー重「ワシらも必要かい。」

風雷「当たり前だ。」


ー重「それは済まん。

   世話係だけやと勘違いしおった。」

風雷「世話係にうつさないための措置だ。」

ー重「なるほど。」


ー重は、風雷の肩に乗る猫に目線を向ける。


ー重「お前さんもお手伝いか。偉い偉い。」


猫の頭をなでる。


ー重「()た!」


指をかまれた。


風雷「相棒の歯に毒を盛っておる。

   爺さん、死ぬぞ!」

ー重「おいおい。怖いこと言うな。」


大広間から離れ、2つとなりの小部屋を占拠

してる者がいた。

風雷と敵対する薬院の1人、武蔵(たけぞう)だ。

風雷の登場によって、大広間から追いやられ

支持してる10名の患者と共にこの部屋へと

移って来たのであった。

支持者以外が風雷の治療を希望したたので、

追いやられたと言うよりは逃げて来た

といった方が正しい。


自分に付いて来てくれた患者だが、

10名全員が高熱を出し、嘔吐と下痢で

苦しんでいる。

そして、ついに武蔵自身の腕にも

赤い斑点が浮き出て来たのである。

そう、武蔵も麻疹に侵蝕されだしたのだ。


彼は困惑してる。

風雷は偽医者であり、治療はデタラメなはず。

なのに大広間を覗くと、誰一人苦しんでる者は

おらず、和気あいあいで過ごしてる。

一様に病が軽くなったように見受けられるのだ。


対する自分の患者はどうだ。

全員重症であり、死期が迫ってるように見える。

患者に対しては真摯に向き合っている。

決して放置などしていない。

首にネギを巻いたり、漢方薬を飲ませたりと

処方してはいるがまったく効果がない。

それもそのはずだ。武蔵も理解している。

麻疹は妖怪の仕業なのだから、

漢方薬などで治療できる訳がない。


それは風雷も同じなず。

だが明らかに皆回復しているように見える。

薬院長が言うには、風雷の治療法は患者に

治ったと暗示を掛けてる、だそうだ。

決して病が治ったのではないと言う。

確かに患者の腕を噛んで診察するところを

見てしまうと薬院長の言葉が正しいと

言わざる終えない。


刻々と患者が悪化しているのを()の当たり

にしてしまうと敵は妖怪とは言え、

自分の無力さを痛感する。

麻疹は伝染する病だ。

それは武蔵自身も知っている。

理解した上で患者と共にし、助けたい一心で

取り組んで来たものの、実際に自分も麻疹に

掛かってしまうと後悔が頭を過る。

そして、死ぬかも知れないという恐怖が襲う。

熱のせいかも知れないが、武蔵の中で無力感に

さいなまれ始めてきた。


武蔵「どなたか()るか?」

女子「失礼します。

   薬院様、どうされましたか?」


武蔵の声を聞いて、1人の女子が部屋へと

入って来た。


武蔵「風雷とか言う医者が持って来た

   麻疹に効く薬を少し分けてくれ。」

女子「かしこまりました。

   只今、お持ちします。」


女子は薬を取りに行き、直ぐに戻って来た。

武蔵は、3粒の薬を手にする。

1日1粒飲むものと聞き、事もあろうか

武蔵はその薬を飲んだのである。


武蔵は考えた。

このまま自身の病が進行すれば死ぬ。

ならば、あの偽医者の薬を飲んで自分が

実験台になろうと決意したのだ。

幸いにも、偽医者の診察は受けてない。

すなわち、まだ暗示に掛けられてないのだ。

これで体調が良くなれば本物と言わざる

終えないということだ。


ちょうどその頃、噂の偽医者がこの屋敷へ

再び戻って来たようだ。大広間が騒がしい。

武蔵は女子を呼び、風雷がこの部屋へ

入って来ないよう言付ける。

それは、薬の実験をしてることを隠すためと

悲惨な患者の状況を知られたくないためである。

どちらかというと後者の理由が強い。


--大広間--

風雷は、患者の1人1人に声を掛けていく。

皆、笑顔で安心した。

微熱ではあるものの薬によって熱が下がり、

完治できると希望が生まれたからだ。

解熱剤が効いてる。だが油断はできない。

病原菌が死滅してるのではないのだから。

これは風雷の想定通りである。

あとは、このまま身体から病原菌が

出ていくのを待つだけだ。


女子「風雷様、よろしいでしょうか?」

風雷「何事?」


女子「新しい病人であります。

   至急診ては頂けないでしょうか?」

風雷「案内してくれ。」


女子について行くと、縁側で横たわる

一人の女性がいる。

男性が寄り添っている。

どうやら夫婦のようだ。


夫 「旦那が噂の医者かい?」

風雷「左様。」

夫 「妻を診てくれないか?」


2人とも赤い斑点がある。


風雷「まず、お主がこの薬を飲め。」

夫 「頂く。」


薬を手渡し、横たわる女性を確認。

目を閉じ無反応。そして虫の息である。

危険な状態であることは間違いない。

風雷は女性に声を掛ける。


風雷「奥方、聞こえるか?」


返答がない。

腕を噛み、身体の状況を確認する。

肺炎を発症し、呼吸が出来なくなっている。

風雷は旦那の方へ目を向ける。


風雷「なぜ?ここまで放置した!」

夫 「病気だと近所に知られるのが怖くて。」


夫 「で、どうなんだい。」

風雷「申しにくいが、手遅れだ。

   手の施しようがない。」


夫 「まだ生きてる。

   今の薬を飲べばいいだろう?」

風雷「お主が飲んだ薬では回復できん。」


夫 「頼む。試させてくれ。」

風雷「いいが自力で飲めんぞ。」


風雷は旦那に薬を渡す。

妻の上半身を起こし、薬を飲ませようと

するも飲んでくれない。

旦那が薬を水で溶かし、口移しで

無理やり飲ませることに成功するも。

直ぐに吐き出してしまった。

そして、呼吸が止まる。


風雷「亡くなられた。」

夫 「あああー--。」

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