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第55話 確保

~~~~ 新損料屋(しんそんりょうや) ~~~~~~~

損料屋の道場。

40畳ほどで広くはないが、損料屋に

道場が存在する。

普段は利用者がおらず、居ても2名程度。

ほぼ使われてはいない場所である。

だが今日に限っては20名もの者が集まっている。

そこには、(みかど)経頼(つねより)(武田家の長男)

の姿もあった。


ここでこれから何が行われるかというと、信広(のぶひろ)殿と

新入りによる試合である。

試合と言っても真剣を用いた勝負ではない。

居合刀での模擬試合である。

居合刀とは刃のない刀のこと。

なので切ったり、刺したりはできないものの、

当たれば打ち身では済まされない。

しかも寸止めなしでの勝負とのこと。

どちらかは大怪我するものと予想される。

もっぱら新入りが病院送りになるものと想像されてる。


見物人「おぉおぉ。」


♪パチパチパチ(拍手)


新入りの登場だ。

成助(しげすけ)一行の4名が1礼して道場に

足を踏み入れる。

4人とも刀は預けられており丸腰の状態だ。

見物人も同様、武器を持参していない。


対戦相手である信広(のぶひろ)は、既に道場の中心で

仁王立ちだ。

居合刀を手にして待機している。

対戦者である成助(しげすけ)は、信広の対面に

1人立つ。


見物人どもは、壁の際であぐらをかいて座る

のに対し、新入りの残り3名は立ったまま

見物するつもりのようだ。


信広「お主が小野田一刀流。」

成助「左様だ。正確にはその派生だがな。」


信広「失礼だが段位を伺っても宜しいか?」

成助「教士である。」


信広「小野田一刀流との手合わせは初。

   教士殿とは。

   この上ない幸せである。」


成助に居合刀が渡される。


帝 「剣技には興味はないが、

   これは見逃せない一戦である。

   信広殿の全力が拝めるのだからな。

   勝った者に褒美を出す。

   配下の心に残る一戦を頼む。」

経頼「非公式とは言え、滅多に見れる

   ものでない。

   勉強させてただくぞ。」


帝 「準備も整った。

   試合を始めるとしょう。

   経頼(つねより)殿には、この試合の判定と

   開始の合図を頼む。」

経頼「大役受けたまわった。

   拙者が審判を務める。

   では両者かまえ!」


対戦する両者は、刀を両手にかまえ、

ゆっくりと剣先を相手に向ける。

両者に笑みはない。

1歩前へ出ればお互い届く距離。

勝負は一瞬で終わると予想される。


果たしてこの勝負、成助は勝てるのだろうか。

彼の本来の姿は忍びである。

得意とする武器は当然短剣だ。

剣技が三戸無双流であるのは嘘ではない。

だが段位が教士というのは出まかせであった。


そしてそれは既に信広には見透かされていた。

成助のかまえに違和感を感じるからだ。

隙だらけであり、自分よりも相手の方が

先に剣が届くとは思えない姿勢でいる。


本来ならばその直感は正しく、今まで

負けなかったのもその直感を信じたからである。

だが、教士という言葉が信広の直感を

揺さぶらせる。

暗殺剣だというのもあいまって

隙は誘っているものと、裏の裏を考え

始めるようになった。


道場は静寂につつまれ、見物人どもは

一瞬の出来事を見逃さまいと目を見開き

息を飲む。


審判の経頼は右手を上げた瞬間。

『はじめ!』の合図を待たずして

成助はフライングで動き出す。

刀から右手を離し、右太ももら辺を

触ったかと思うと、下手投げで

5cmの投剣を信広の心臓目掛けて

放ったのである。


信広は成助の行動を一部始終見ていた。

投剣に気付き握っている刀ではじく。

成助は、投剣がかわされることを想定

して、左手に持つ刀で信広の股間を

狙って一歩踏み出し突き刺す。

信広の対応力も素晴らし。

刀の平の部分を盾にして、成助の剣先を

受け止めたのである。

信広の瞬発力は一流である。


♪ドサ


ここで驚くべきことが起こる。

信広は足元から崩れ、その場に倒れたのだ。

見ると信広の額に投剣が刺さってるではないか。

そう、成助は剣を付き刺すと同時に

首の(えり)から投剣を取り、

信広へ2投目を放ったのだ。


経頼「反則ではないか!」

成助「黙れ!皆、動くでない。」


この場の全員は武器を所持していない。

忍びを除いては。


♪ピーーーー(笛の音)


立って見物していた3人の忍びが

刃渡り15cmの短剣を(ふところ)から取り出し

動き出す。

忍び1は、笛を吹き仲間を呼ぶ。

そして、成助と共に反抗する者を警戒する。

忍び2と3は、それぞれ井口と経頼の

前へ立ち、剣を向ける。


成助「動けば殺す。」


次々と短剣を持った平民が塀を乗り越え、

損料屋の敷地内へ入っている。

8名はいるだろうか。

もう説明するまでもない。

無理やり侵入してきた者は平民を装った

忍びである。

塀の外にも仲間はいる。


経頼「貴様、何者だ?

   役人の手下か?」

成助「口も動かすでない。」


経頼の真横にするわる側近の景佐(かげすけ)

素早く立ち上がり、忍び3の短剣を

奪おうとするも。


♪ドサ


忍び1が放った投剣が景佐の額に刺さり

倒れた。


成助「死にたくば立ち上がるといい。」


井口が(ふところ)から何かを取り出す。


井口「貴様らこそ動く出ない。

   これをバラまくぞ!」


握りこぶしほどの袋を全員に

見えるようかかげる。


経頼「止めよ!」


経頼には袋の中身を知ってるようだ。

そして、経頼の一言によって、

その場の全員も中身を理解した。

旧損料屋で使われたザザの毒だということを。


その毒は非常に危険だ。

少量でも粉が肺に入れば、呼吸困難により

動けなくなり、苦しみながら確実に死に

至るというもの。

この場の全員が井口が手にする袋に

視線が集中する。


井口「ワシから離れよ。

   さもなくば一緒に死んでもらう。」


♪ドン


井口「うわー--。」


天井から人が降って来た。

それは忍びの仲間である。

落ちると同時に短剣の()の部分を

使って、井口の手首に思いっきり

当てたのである。

突然のことと激しい激痛で井口は

毒の袋を手放してしまった。


忍び2は、毒袋から粉が散乱しない

よう、上着を脱ぎ被せる。


全員が身を後ろにそらす。

一人が立ち上がりこの場から離れようと

するも、成助が投剣を投げ、

その男のふくらはぎに刺す。

男は倒れ、刺された部分を手で押さえ

て叫ぶ。


成助「動けば殺す!」


全員に向け発する。


♪ギィーー


店の正門が開けられる。

そして、数えきれない数の人が敷地内へ

と入り込んで来たのである。


下っ引き「御用だ!」

下っ引き「御用だ!」

下っ引き「御用だ!」

下っ引き「御用だ!」

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