表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/64

第51話 同胞

~~~~ 町はずれの民宿 ~~~~~~~

久しぶりの同胞との再会である。

待ちに待っていたものの正面にいる人物が誰なのか、

(りん)には面識がない。

だが、(ひざまつ)くその姿勢は、忍びの者である。

同胞が凜を知るということは後輩であろう。

おそらくどこかで1、2度会ってるに違いない。


それよりもだ。

問題なのは、自分を助けに来た者なのか、

それとも始末しに来たのかということだ。


凛「何用だ?」

虎「人探しであります。

  まさかこの宿に凜殿がおられるとは!

  私の気配に気づいたのは流石であります。

  まだまだ修行が足りませんな。」


想定外の返答であった。

どうやら偶然同胞に出会ったということになる。

だが、ここは人里はなれた田舎町。

果たして、偶然はありえるのだろうか。


凛「誰をお探しか?」

虎「風雷と名乗る医者であります。

  ご存じだろうか?」


凛はようやく()に落ちた。

同胞は、風雷の聞き込みをしてここまで辿り着いた

ということなのだ。

おそらく兄と同じ勅命によって、風雷の殺害を

目的としてるのだろう。

すなわち第二の刺客ということになる。


風雷は私が殺す。誰にも殺させない。

いろいろな思いが凜の頭を駆け巡る。


虎「ところで凜殿もここへは任務であるか?」


凜はハットなる。風雷をどう殺すかに思考が奪われ

自分の使命をすっかり忘れていた。


凛「任務中に武田家の者に不覚にも刺された。

  身動きが取れず。この様だ。

  報告したいことがある。

  忠輔(ただすけ)殿(殿の側近)と連絡を取りたい。」

虎「受けたまわった。

  この辺一体を調べてから戻る。」


凛「医者なら探してもおらん。

  昨日まで一緒に居たからな。」

虎「誠であるか?」


凛「私の傷を治療してくれた者でもある。」

虎「今はどちらへ?」


凛「自分の診療所へ戻った。」

虎「馬鹿な!

  あそこ一帯は麻疹で汚染されておるのだぞ。」


凛「だから戻ったのだ。あ奴は医者だ。

  町の住民を治療すると言ってここを出ておった。

  となると我々に追うことはできない。

  町は封鎖されておるのだろう?」

虎「左様だ。入ったら出られない。

  我々もだ。」


凛「ならば医者を捕まえるには封鎖が解除される

  まで待つしかない。

  そのとき生きていればだがな。」

虎「事情を理解した。

  凜殿を忠輔殿に会わせる方を優先する。

  その様子では、身動きがとれないと見た。」


凛「この様だ。立つことも歩くこともできない。」

虎「承知した。籠屋を呼んでくる待たれよ。」


そして凜は、女主人に別れを告げないまま、

民宿を出て行った。


~~~~ 新損料屋(しんそんりょうや) ~~~~~~~

武田家の長男である経頼(つねより)が夜遅く、

新店舗へ戻って来るやいなや、井口のいる応接室へ直行する。


経頼「邪魔するぞ。」

井口「お主は、どこをふらついておる?」


経頼「前の店が襲撃されたと聞いたが。」

井口「誠だ。」


経頼「この店は安全なのか?」

井口「今のところな。

   移動したらしたで足が付く可能性がる。

   はたまた移動しないならしないで

   見つかるのは時間の問題だ。」


経頼「八方塞がりではないか。」

井口「お主が夜遊びに出るのを控えれば

   見つかる心配は減るんだがな。」


経頼「ここは若者の出入りが激しい。

   拙者(せっしゃ)1人、注意したところで変わらん。」

井口「(いな)だ。お主は目立ちすぎる。」


経頼「店を襲った連中は藩の兵か?」

井口「左様だ。500ほど来たようだ。」


経頼「全員倒したのか?」

井口「否。200といったところ。」


経頼「残りはどうした?」

井口「城に戻ったのでは?」


経頼「兵を戻してよかったのか?なぜ全滅させない。」

井口「全滅させようと仕掛けて、もし我々の誰かが

   捕まりでもしたら、ここが見つかる危険がある。

   それなら、城へ戻した方がよい。

   今頃、城内では混乱してるであろう。」


経頼「是非、城内を監視したいものだ。

   さぞ、笑えることだろう。」

井口「同感だ。」


経頼「1つ教えてくれ。もし、ここの場所が城内に

   特定されたらどうする気だ?」

井口「ザザの粉をばらまく。

   昨日の事で城の連中は思い知ったはずだ。

   兵どもは粉を見たら逃げるだろうよ。

   あと幸いなことに桐生領で、麻疹流行ってると聞く。

   それにあやかって、全員、顔と腕に赤い斑点を

   塗れば、兵どもは怖がって近寄りもしないぞ。」


経頼「なるほど。お主は賢い。」

井口「頭を使えば、城攻めなど容易い。」


経頼「期待しとるぞ。

   影の生活も飽きて来たのでな。」


~~~~ 二条家 ~~~~~~~

風雷は重病者と格闘していた。

3人いる。


風雷 「まづい。3人とも肺炎を引き起こした。

    危険な状態だ。

    身体を温めたい。布団はないのか?」

女子1「只今、お持ちします。」


重病者を3人並ばせ、同時に診察をする。


風雷 「全員、こまめに水を飲ませるのだ。」

女子2「分かりました。」


風雷 「解熱が必要だ。薬は残ってるか?」

女子2「いえ、全て使いきりました。」

風雷 「左様か。」


女子1「掛け布団をお持ちしました。」

風雷 「できるだけ身体を温めるのだ。」

女子1「承知しました。」


女子3「風雷様。お客様がお見えです。

    お薬を持参して来たと。」

風雷 「何と言う幸運だ。取りに行く。」


風雷は、急いで庭に出て、配達員から薬を受け取る。

薬作成班による第一号の完成だ。


風雷は1粒手に取り味わう。合格だ。

薬の作り方は至って簡単。間違いようがない。

だた、純度は別だ。効き目が左右する。

それも基準に達していたということである。


風雷は急いで重病者の元へと駆け寄る。

そして、女子に薬を渡し、患者へ飲ませる。

薬は単なる解熱剤だ。直接肺炎に効くわけではない。

薬を飲ましたところで危険状態であることに

変わりはない。

しばらく、様子を見る必要がある。


ー重「どうだい。こ奴の容態は?」


この忙しいと時に一爺(かずじい)が割り込んでくる。


風雷「自分の心配をしろ。

   いつ悪化するか分からんぞ。」

ー重「あんたが居れば怖いものなどない。」


風雷「一時(いっととき)(2時間)、寺の方も見て来る。」

ー重「そこは行かん方がええ。」


風雷「なぜだ?」

ー重「薬院の連中が仕切っとる。

   しかも麻疹はおらん。

   麻疹の症状が出れば追い出してるからな。」


風雷「医者であろう。病人を見捨てるのか?」

ー重「麻疹は妖怪の仕業だそうだ。

   だから病気ではないだとさ。

   ふざけた連中だ。だから医者は好かん。

   あんたは別だけどな。」


風雷「状況を理解した。

   必要となるやも知れん。身に行ってみる。」

ー重「旦那も物好きだね。」


風雷は二条家を出て寺へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ