第49話 麻疹治療
~~~~ 今川家の屋敷 ~~~~~~~
唐突だったが米屋の奥さんに再開した。
柄ではないが風雷に笑みがこぼれる。
風雷「生きておったか?」
和江「笑い事でじゃない。
こんな大変な時にどこ行ってたさ。
みんなであんたを探したさね。」
風雷「それはすまん。
町外れで別の患者を診ておった。
旅人からここの状況を聞いて
急いで戻って来たところだ。」
和江「そうかい。なら仕方ないさ。」
和江「あら、あなたも一緒だったかね。
お利口さんね。」
和江は猫に向かって話し掛ける。
女子達は2人の会話で固まっていた。
風雷は彼女たちへ振り返る。
風雷「話は終わりだ。先のほどの指示を頼む。
1つ言い忘れた。
病の重い人から優先に始めてくれ。」
女子達は、分かりましたと頭を上げる。
和江「合間にこれ食べて。
美味しいおにぎり作ってきたから。」
女子「和江さん、いつもありがとう。」
女子達は道場の方へと戻る。
和江「あんた。ここだけじゃなく、
他の所にも病人おるの知っとる?」
風雷「聞いてる。具体的な場所は知らんが。」
和江「いっしょに来てくれんか?」
風雷「全ての場所を回るつもりだ。
その前に、たった今来たところだ。
ここの病人を一通り確認したい。
それと薬の材料を持参した。
薬作りを手伝う者がもうじき来る。
その後でいいか?」
和江「薬って言った?薬あんの?」
風雷「存在する。但し、この病は強い。
病人を楽にし、死なせないための効果しか
なく、即回復することはない。」
麻疹に効く薬など存在しない。
風雷は、和江にも嘘を付いたのである。
だが、この嘘によって病人が希望を持ってくれる
のならそでれいいと考えていた。
和江「十分だわ。あんた居て安心したさ。
薬を作る人達を待てばいいのね。」
風雷「左様だ。」
和江「その間、私の手伝えることある?」
風雷「他の場所もここのように看病してる
女子がおるのか?」
和江「ああ、おるおる。皆、寝ずに動いとるよ。
分かった。
ここへ来るよう伝えればいいね?」
風雷「違うぞ。」
風雷は和江に小さな袋を手渡す。
和江「何さ、これ?」
風雷「残りの薬だ。各地を回って重症者に
1人1粒、飲ませてくれぬか?」
和江「ちょうどいい。この後、他へも夜食持って
行くところさね。任せてさ。」
風雷「これは心強い。
薬が出来次第、重傷者以外に配る。
頼んだぞ。」
風雷は、女子たちと同じように病気がうつる原理を
説明し、各地の人たちにこの知識も合わせ広めて
欲しいことを説明したのである。
和江はこころよく了承し、この場を去った。
風雷は再び道場に足を踏み入れる。
表向きは診察だが、まずは食事だ。
久しぶりに大量の血が頂ける。
先ほども女子達からちょうだいしたが、働く者から
大量の血はすすれれない。
残念なことに、少ししか味わえなかったのだ。
だが、次は違う。大量の患者が待ち換えている。
そして他の会場にも。
では重病人からと見渡す。
やはり地元だ。言葉を交わしたことがなくなても
知った顔が至る所にいる。
もちろん、知り合いは声を掛けて来て、
心配するなと励ます。
この会場には幸い重病人はいない。
突然、急変しないとも限らんが、
薬を飲ませている。ひとまずは安心だ。
風雷「皆の衆、心して聞け!私は医者だ。」
目立つことを避けて来た風雷が、声を張り上げ
病人たちへ話しかける。
風雷「ここに居る者、全員、麻疹という病に侵されている。
身体中に赤い斑点が出来、さぞ怖いであろう。
だが安心しろ!この病は妖怪でもなんでもない。
ただの風邪だ。薬もある。もちろんタダで配る。
もう怖がることはないぞ。
1つだけ注意がある。麻疹は風邪の中で一番強い病だ。
薬を飲んだところで完治に1週間はかかる。
それを忘れないで頂きたい。」
女子「お医者さま!
庭に大勢のお客様がお見えになりました。」
1人の女子が風雷に近寄り言付けに来た。
客人は誰だろうと考えながら庭に出ると。
30人ほどの人だかりができている。
いったい何事だ!
男「旦那!連れて来たぜ。」
話掛ける男は、ここの場所へ案内してくれた者だ。
約束通り、薬作りとして大勢の人を連れて来たのである。
せいぜい5人くらいだと想像していたらか驚きだ。
この男は素晴らしい働きをした。
であれば。
風雷「ここに薬草がある。」
風雷が持参した小さい米俵を両手に持ち、皆に見えるよう
高く持ち上げる。
風雷「皆で協力して、この薬草で麻疹の薬を作って
頂きたい。」
別の男「我々で作れるのか?」
風雷「作り方を説明する。技は必要ない、誰でも作れる。」
全員「おぉ。」
風雷「私はここに来たばかりだ。
まだここの会場しか観てない。
想像してたよりも病人が多い。
薬が足りないかもしれない。
なので、薬作り班と薬草探し班の2つ分ける。」
町ごと隔離されたのは薬草探しにとっては痛い。
正直、庭や道端では見つからんだろう。
幸いなことに裏山には行ける。
あそこなら少量だが見つかるだろうと踏んでいる。
薬草探し班には、その事を説明し裏山へ向かわせた。
薬作り班には、薬の作り方を伝授し、持参した薬草で
作業に取り掛かってもらうことに。
今川家を薬作りの拠点としたのである。
風雷は、一通り説明を終えると、ここから近い病人が
集まる場所を聞き、猫と共にその場所へと歩み出す。
~~~ 畠山城 ~~~~~~~
そのころ畠山城では別の動きがあった。
忠輔「殿!よろしいか。」
内光「何事。」
忠輔「仁の件について、お伝えしたいことが。」
側近の忠輔は謁見の間へ
参るなり、殺害された忍びの仁について情報を
掴んできた。
内光「申せ。」
忠輔「佐藤康直という者が、別の者を経由して
帝と名乗る者へ城内の情報を漏洩しておりました。」
内光「上出来だ。帝とのつながりを見つけたのだな!
康直殿というのは何者だ?」
忠輔「侍所の管轄であります。
武田家の推薦でこの役職に就いた者であります。
殿のお考えが的中した次第です。
拙者の失態であります。」
内光「気にするでない。反旗をひるがえす前に知れたのだ。
何の問題もない。
ところで康直殿は捕らえておるのだな?」
忠輔「左様でございます。拷問にて問いただしたところ。
本件のことが判明した次第であります。」
内光「帝の素性はわっかておるのか?」
忠輔「それが、康直殿も知らいないとのこと。
ただし。帝の居場所は掴んでおります。」
内光「であれば、その帝を捕らえよ。」
忠輔「500の兵を使ってもよろしいだろうか?」
内光「かまわん。好きにするがいい。」
忠輔「有難きお言葉。
ではさっそく帝を捕らえに向かわせます。」
内光「頼んだぞ。」
忠輔「御意。これにて失礼。」
忠輔は、謁見の間から出て行った。




