第45話 刺客の末路
~~~~ 近所の川岸 ~~~~~~~
風雷「殺してでも連れて行くと?」
親分「左様。観念でもしたか。
お主も痛い思いはしたくはなかろう。
さぁ、選択せよ。」
風雷は逃げる手段を模索する。
流石に1対7は分が悪い。
立ち振舞いからして相手はど素人ではない。
だが、逃げたところで背中に切りつけられて終わり。
例え逃げ切れたとしても、彼らは金で雇われる手前、
諦めることはしないはずだ。
今度は、不意打ちで狙われる可能性がある。
ならば、ここで彼らを倒さなければならないと
決意するのであった。
風雷の肩から猫が飛び降りてどこかに
行ってしまった。
親分「相棒が逃げたようだが。」
子分たちは風雷に剣先を向けたまま鼻で笑う。
風雷「回答はこれだ。」
風雷は、1歩大きく前へ踏み出し
持っている大きな袋をぶん回す。
全員は一斉に半歩下がり、飛んで来る
大きな袋を避ける。
子分1「痛っ!」
叫んだ子分1は足元を見ると、
猫が足首にかぶりついていた。
子分1「この糞猫がぁ!」
子分2が猫を蹴飛ばそうとするも猫は子分1から
離れ迂回する。
♪ドサ。
子分1が倒れた。
浪人どもに戦慄が走る。相手は丸腰の医者。
対する浪人どもは刀を所持した7名。
彼らにとっては、この依頼はお遊びのようなもの。
ちょっと脅かして連れて行くだけのつもりでいたが、
まさか医者がたった1人で戦いを挑んで来るとは
予想だにしていなかったことだ。
しかも仲間の1人が猫に噛まれて倒されたではないか。
風雷と浪人どもは動作が止まり、2歩ほど距離を開け
またもやにらみ合いとなる。
もはや浪人どもの表情には笑みはない。
子分2が片足を使って子分1の身体を揺らす。
子分2「親分、死んでます。」
親分 「猫に警戒だ!
歯に毒が塗られてるやも知れん。」
子分が周囲を見渡すも猫の姿がない。
どこかに潜んでいる。
親分 「あの袋にも気を付けよ。
何かあるやも知れん。」
袋に気を付けろと?
風雷はこれは好都合と捉えた。
かなり重いが、この袋を持ってさえいれば警戒
してくれる。こんな便利なものはないと。
戦闘は風雷の方から仕掛けた。先手必勝である。
袋を盾に突進してきたのだ。
子分2と3は医者を刺し殺す思いで、
勢いよく袋へ刀で差す。
袋の反対側に剣先が飛び出すも風雷は自分に
刺さる手前で袋を手放す。
親分は風雷と距離をとり。
他の子分3名は風雷ではなく周囲を見回し
猫を警戒する。
医者が軽々しく持つ袋は想像以上に重かった。
刀が刺さったまま袋は路面に落ちる。
風雷は袋の上を飛び越え、体術で子分2と3を倒す。
浪人どもに衝撃が走る。これは聞いてない。
この医者、格闘術が使えるではないのかと。
しかも恐ろしいことに1撃で子分が倒された。
猫といい。格闘術といい。
この医者は只者でないことを今になって理解する。
帝が屈辱を晴らしたいとは、
過去に痛い目にあったということかと。
子分4「あぁー。」
子分4は、自分の足が猫に噛まれたことを認識する。
猫は直ぐにその場を離れ、雲隠れする。
♪ドサ
子分4が倒れる。
残るは親分と子分5と6の3名。
状況が悪い。猫がガンだ。
出たり消えたりするので対処が難しい。
親分は風雷を意識し、残りの2人は猫を警戒する。
親分「3人で同時に行くぞ!」
親分が1歩踏み出し刀を振り下ろす。
風雷は半歩下がって親分の刀をギリギリでかわす。
子分5の刀が時間差で振り下ろされるも、
風雷は子分5へ1歩踏み出し、足払いで倒す。
風雷「うっ!」
風雷の脇腹に刀が刺さる。
3人目の子分6の刀だ。連係プレイによる勝利である。
親分「なかなかの腕前。だがここまでだ。」
子分6「さらば。」
子分6は、両手両足に力を入れ、刀を更に奥へと
突き刺し、風雷の腰から剣先が飛び出す。
だが、ここで親分は衝撃の光景を目にする。
風雷は、裏拳で子分6のこめかみ叩き倒す。
そして、自身に刺さった刀を引き抜いたのである。
親分「ば、化け物。」
親分は子分5が立ち上がり加勢してくれないかと
目線で状態を確認するも絶望を知ることとなる。
子分5の足に猫がかぶりついていたのだ。
一瞬勝利が見えたがそれは幻に終わった。
形勢は逆転した。どう考えても浪人側の敗北である。
残るは親分ただ1人だ。
風雷「雇い主はだれだ?」
親分は初めて恐怖を覚える。
それは、自分が死ぬかもしれないというものではない。
風雷である。
刀で腹を貫通されたのになぜ平然と立ってられるのか。
なぜ、血が流れ出て来ないのか。
実は我々は幻覚を見せられてて、本当は刀など
刺さってなかったし、仲間も死んでないのではと
思えて来るほどだ。
親分「名を出せば見逃してくれるのか?
まぁ、言うつもりはないがな。」
風雷「だろうな。では黄泉の国で再会しようぞ。」
親分は、猫が自分に向かって来るのに気づく。
タイミングを合わせ猫の画面を蹴り飛ばそうとするも、
かわされ、軸足を噛まれる。
♪ドサ
親分も倒れた。7人全員路上に転がっている。
気付くと周囲に人が集まり出してる。
これはまずいと思い、現場をそのままにし、
風雷は急いでこの場を離れたのである。
~~~~ 医療所 ~~~~~~~
風雷は猫と共に医療所へ戻って来た。
少し動揺している。
それは現場が近所の川だったからだ。
幸い知り合いは見られてないと思われるが、
あの場に自分が居たことはおそらく誰かには
知られてることだろう。
役人の聞き込みに来る可能性は高い。
適当な言い訳を考えるておこう。
凜は私が帰って来るなり寝ていた。
恐らく寝たふりだろう。
大人しくしててくれるのであれば問題ない。
事件があり過ぎて今は面倒ごとを避けたい。
とりあえず、遺体は医療所から全て運び出せた。
一安心だ。心残りは1体を袋に入れた路上に
放り投げたことが。
もう、どうしようもできない。
現場には役人どもが来てて状況を調べている
だろうから。
気になる点は2つの団体に命を狙われたことだ。
ほぼ同時だったので同じ雇い主の可能性は高い。
だが第二、第三の刺客が送られて来るのは
十分考えられる。
今回たまたま、勝てたからいいようなものの。
また大勢で来られては次勝てるか分からない。
風雷は雇い主について考える。
この地に来て人に反感を抱かせるようなことを
した記憶がない。
ましてや命を狙われるような事はしてないつもりだ。
一体、誰に命を狙われてるのかさっぱりである。
まったく心当たりがない。
命が狙われている以上、どこかに雲隠れする必要がある。
ある程度貯えはある。
そして沙樹も旦那様も亡くなられた。
この地に留まる理由はもうない。
風雷は、この娘が回復したらこの国を出ることを
決意するのであった。




