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第37話 死闘

~~~~ 吉原 ~~~~~~~

風雷「すまん。手間掛かった。」

村隆「いいところに来てくれた。」


風雷は女子(おなご)の治療を終えると

2階から急いで輪廻(りんね)の間へと戻って

来たのである。

再びこの部屋へ戻って来るのに二刻(1時間)を費やした。


堵希「うぅ~~~。」


堵希(とき)は眉間にしわを寄せ。

大量の汗を流している。


風雷「相当辛そうだな。」

村隆「熱(体温)が尋常でない。

   全身震えてる。」


風雷「水は飲ませてるな。」

村隆「ああ。」


風雷「では診よう。」


風雷は彼女の側であぐらをかき、

腕を持ち上げ、いつものように噛んで

身体の状況を確認する。

村隆(むらたか)はその様子を見守る。

風雷は口を開き、診察を終える。


風雷「うむ。」

村隆「様子はいかに?」

風雷「芳しくない。」


村隆「助かるのか?」

風雷「最悪な事は覚悟しておいけ。」

村隆「なるほど。理解した。

   では楽にさせてやろう。」


村隆は堵希の顔を眺める。

そして、足元に置いてある刀を握った。

風雷の表情から、このまま死ぬと判断

したのだろう。

さらに堵希の苦しそうな顔が不憫でならない。

この場で殺して彼女を楽にしてあげたいと

決意した現れである。


風雷「(それがし)、早まるでない。確かに状況は悪い。

   だが人はそう簡単に死なん。

   それは某が一番よくご存じのこと。」


動揺する村隆へ、風雷は冷静に声を掛ける。

村隆は堵希の顔を再度眺め、刀から手を放す。


村隆「ワシに出来ることはあるか?」

風雷「手でも握っててやれ!

   そして声を掛け続けるのだ。

   堵希殿に、生きてて欲しいことを

   伝えるのだ。

   本人が生きたいと願わくは確実に死ぬ。」

村隆「理解した。」


風雷「私にはもうできることはない。

   ここからは某の番だ。

   どちらかというと上の女子の方が

   危ない。」

村隆「出血がひどかった。

   やはり手遅れであったか。」


風雷「何とか生きておるが上の女子も自分次第だ。

   生きたいか否かで生死が決まるであろう。」

村隆「ならば先生は上の娘を診てやってくれ。」


風雷「ああ。そうさせていただく。

   女子は長期間の看病が必要だ。

   診療所へ連れてゆくことにする。

   堵希殿は朝までに生き永らえれば、

   大丈夫だ。

   病気を完全に克服できたと保証しよう。」

村隆「誠か?」


風雷「ああ。朝、様子を見に来る。

   そればで堵希殿を頼む。」

村隆「心得た。」


風雷は早々に部屋を出る。

それは村隆への気遣いからだ。

村隆が人前で堵希に声を掛けるのは

恥ずかしいだろうと察したからだ。


風雷は2階の騒動の部屋へと戻る。

部屋に入ると付き添いの子の他に、

女将がいた。


女将「ご苦労様です。」

風雷「目を離して、すまない。」


女将「お礼を申し上げたいのは私共です。

   堵希の容態はどうなのでしょうか?」

風雷「芳しくい。今日が峠です。」


女将「左様ですか。

   どの医者も見放した堵希に、

   希望を与えてくださっただけも

   感謝しか御座いません。」


風雷「この女子を診療所へ連れてゆく。

   構わないな?」

女将「ええ。それは構いませんが、

   ご迷惑なのでは?」


風雷「それはこの店も同じであろう。

   刃物を振り回すような娘は不安では?」

女将「お察しの通りでございます。

   お医者様のお言葉に甘えさせて頂きます。

   この御恩はどこかでお返し致します。」


風雷「礼には及ばん。」

女将「それは困ります。」


風雷「ならば、ここの娘らを診察させてくれ。」

女将「何という神様のようなお人でしょうか。

   願ってもないこと。

   こちらからお願いしたいです。」


風雷「では一度、この女子を連れて行く。」

女将「かしこまりました。

   一人で運ぶには大変でしょう。

   うちの者を使わせます。」


風雷「若いと言っても、ここには殿方は

   おらんのだろう?

   ならば私1人で十分。」

女将「お役に立てず申し訳ございません。」

風雷「気にするな。」


女将「ここを出られる時ですが、

   火種となった武田家の方が待ち伏せ

   してるやかも知れません。

   裏から抜け出るとよろしいかと。」

風雷「それは有難い。案内を頼む。」


背に薬箱。左肩に猫。

右肩にはうつ伏せの女子を抱えた姿となった。

彼女は意識を失っており、

身動き一つしてない。重い人形のようだ。


女将「本当にお手伝いなさらなくても?」

風雷「問題ない。運動の一環だ。」

女将「先生はお侍様より男らしい。

   惚れ惚れします。」


風雷は女将の案内に従い裏口から

外へと出る。

風雷はかなり警戒した。

裏から出たのが正解だったのか。

そもそも待ち伏せは居なかったのか。

わからんが、どちらにしても賊に襲られる

ことなく診療所へと辿りつくことが出来た。


時刻は、()三つ時(深夜0時)。


提灯(ちょうちん)に火を灯し、

彼女を自分の布団に寝かせる。

薄暗い中、血だらけの服を脱がせ

作業用の浴衣に着替えさせた。


腕を噛み診察すると、今のところ

状態は安定してる。

感染症や刺された場所が()んだり

する可能性はある。

彼女の戦いはこれからだ。


~~~~ 吉原 ~~~~~~~

そのころ、風雷が先ほどのまで居た

揚屋(あげや)の入り口を遠くから監視する者がいた。

風雷をここ3日ほど尾行している忍びの一人、(あきら)だ。

風雷が店から出て来るのを見ている。


その時、背後に音も無くもう1人の人物が現れる。

統括役の(じん)である。


仁「状況は?」

明「は、医者は左斜め前の店に入ったきりだ。

  三時(さんとき)(6時間)ほど経つ。」


仁「怪しい動きはあったか?」

明「いや診察回りと自宅にこもる以外

  なにもしていない。

  派手に金を使ったりとかもなく。

  あの医者は白(潔白)と思われる。」


仁「なるほど。

  ということは、生口が有力か。」

明「見つかったのですか?」

仁「いや、姿を現さん。」


仁「自分は明日、城に戻る。

  この時間だと、泊まりかもしれんな。

  引き続き監視を続けよ。」

明「は!」


仁は音も無くその場を去った。


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