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第36話 新たな患者

■人物紹介

村隆(むらたか):風雷が助けた手練れの浪人

堵希(とき):村隆の知り合いで、梅毒患者

~~~~ 吉原 ~~~~~~~

女郎「キャー」

女郎「キャー」


揚屋(あげや)のある一室。女郎どもの悲鳴が聞こえる。


経頼「危なかったが拙者(せっしゃ)の勝だ!」


経頼(つねより)が話しかける先に、尻もち

を付き壁に寄り添う1人女郎がいた。

その女郎は、右手に短剣を握り経頼へ刃を

向けている。

左手は下腹部を抑えて、そこから血が滲み

出ている。

経頼によって刺されたのである。


経頼「雇い主は藩なのだろう?

   知っておるぞ。

   冥土の土産に教えてやろうぞ。

   ハハハ。」

護衛「旦那、気をつけください。

   刃に毒が塗ってあるやも知れぬ。」


経頼と護衛は、刀を握り女郎に剣先を

向けている。

残る2人の女郎は左右の隅で

青ざめた顔で身を震わせていた。

どうやら戦う気はなさそうで、

巻きもまれた感じである。


♪ドカドカドカ(廊下を走る音)

♪シャー(勢いよく(ふすま)が開く)


村隆「何事だ!」


ここで風雷と共に下の階に居た村隆(むらたか)

が血相を変えて登場する。

村隆は部屋に入るなり瞬時に状況を理解した。

そして、内心で驚く。

武田家の長男が刀を握って立ってるではないかと。


村隆「経頼殿!刀を納めよ。

   ここは揚屋。得物(えもの)は御法度のはず。」


経頼「村隆殿。

   手を出したのは、小娘が先。

   身を引いていただきたい。」


どうやら村隆と経頼は顔見知りのようだ。


村隆「聞かぬと!

   ならばワシがお相手しよう。」


村隆は、刀の(つか)を握り戦闘姿勢を取る。

この場の全員が緊張に包まれ一気に部屋の

雰囲気が変わった。


護衛「旦那、相手が悪い。」

経頼「分かっておる。」


経頼は、敵意を向ける小娘を確認する。

出血がひどく、傷口は深い。

呼吸が荒く、気力だけで意識を保っている

ように見受けられる。

どう見ても助からないだろう。

ここで村隆と交えるのは得策ではない。

2人掛かりでも勝算は低い。

経頼は一息付く。


経頼「おとなしく帰るとしよう。」


そして、ゆっくりと刀を納めた。

それを見た護衛も刀を納める。


経頼「謝罪せんぞ。悪いのは小娘だ。」


経頼は警戒する村隆の横を何食わぬ顔

で通り抜け、廊下へと出て行った。

護衛は経頼の後ろをついてゆく。


♪ドサ


短剣を握っていた女郎が倒れた。

村隆は、血を流すその娘の側へ。

どう見ても助からない。


騒ぎが治まり、次々と野次馬の

女郎どもが現れる。


村隆「だれか、下の部屋にいる医者を

   呼んで来てくれないか?」


入り口で覗き見する女郎達に声を掛けると

ある一人が医者を呼びに向かった。


村隆「あなた方は身なりを整えるといい。」


恐怖で震える2人の女郎へ声を掛ける。

入り口の数人が中へと入り怯える彼女らを

サポートする。

そして、付添と共にこの部屋を出て行った。


村隆は彼女が傷口を抑える手の上から

更に自分の手の平で抑え、出血が止まるよう

圧迫させる。

村隆にはこれくらいしかできることはない。

下手に動かすと傷口が広がり悪化させる

のを知ってるからだ。


娘は意識はあり、目をつむっている。

苦しそうだ。


女将「村隆様。仲介感謝いたします。」


ここの揚屋で1番偉い女将が入って来た。


村隆「あんたんところの娘が刺された。」

女将「おや?見ない顔だね。」


村隆「ここの娘ではないと?」

女将「だれか知ってる者は居るのか?」


周囲の女郎は、互いの顔を見合わせるも

だれも刺された娘に心当たりがないようだ。


村隆「ということは刺客か。」


まぁ、短剣を握る構えから、素人が仇討ち

に来たのではないのは想像ついていた。


♪ドカドカドカ(廊下を走る音)


風雷「医者だ。」


風雷が薬箱を持って登場する。

もちろん、黒猫も一緒だ。

定位置の肩に捕まって、風雷と共に

部屋に入るとジャンプして隅で丸くなる。


風雷「この女子(おなご)は!」

村隆「知り合いか?」


風雷「名も所在も知らぬが、

   道端で絡まれてるところを

   助けたことがある。」

村隆「左様か。ここの娘ではないらしい。

   診てくれ!」


風雷「よかろう。

   あんたは、堵希(とき)殿に付き添っててくれ。」

村隆「そう願いたい。ここは任した。」


村隆は、急いで下の部屋へと戻る。


風雷は、治療に取り掛かる。

まずは身体の状態を知るところから。

いつものように腕を噛み、血を採取。

調べるまでもないが出血がひどい。

周囲が血で染まってる。

意識はあり、2か所縫わなければ

止血しないということを理解した。


女郎「お医者様。お水をお持ちしました。」


ある女郎が(おけ)に水を汲んで

持って来てもらった。

風雷がここへ来るときに頼んでおいたものだ。


風雷「有難い。ここに置いてくれ。」

女郎「お手伝いしましょうか?」


風雷「済まぬ。頼みたい。」

女郎「かしこまりました。」


風雷の真横に桶を置き、横たわる患者を

挟んで反対側へ座った。

風雷は釣り針のようなU字の針を取り出し

極細の糸を通す。

ロウソクの火で軽くあぶり消毒。

手ぬぐいを患者に口にくわえさせ止血開始。


患者「うぅぅー。」


悲痛な叫びを聞きつつ、風雷はたんたんと

進め、内臓の2か所を縫った。


患者「うぅぅー。」


そして、水で傷口を洗う。

洗浄後、外部の皮膚を縫い治療は完了。

気付くと彼女は気を失っていた。

死んでもおかしくない状態だ。

この小さな体でなんという生命力

なのだと感心する。


だが、安心はできない。

傷口を水で洗い流したとはいえ、

汚れや細菌を取り除けてはいない。

破傷風の恐れもある。

これから数日はこまめに診察する必要が

出て来た。

彼女を診療所へ連れていくことを決意する。


風雷「止血するまでここに寝かしておく。

   下の様子を見に行きたい。

   ここを頼む。」

手伝い「お受けします。」


気の抜けない患者が突然増えた。

夜は長くなりそうだ。

風雷は下の部屋へと降りてゆく。

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