第24話 戦場
~~~ 相馬庭 ~~~~~~~~~~
信忠「悪党が来たのだ。
退治するのは貴様の役目であろう。」
村隆「いやいや。強引に侵入したのではなく
招き入れたのではないのか?
であれば客人であろう。」
信忠は立ち上がり、村隆に対して怒りを露にする。
だが、村隆はそんな事など気にも留めず、平然と返答する。
領主「村隆!命じる。あ奴を討て。」
村隆「いや。あの男には貸しがある。それは出来ん。」
領主「お前にどれだけ金払ってると思っとる。
再度命じる。やれ!」
村隆「ではあれば、契約解除だな。」
村隆は、懐から巾着袋を取り出し、
その袋の口を開けると、逆さにした。
すると100両はあるだろうか。
領主の前に小判がまかれることに。
信忠「貴様、血迷ったか!」
信忠は鞘から刀を抜いた。
村隆はその挙動を見逃さない。
一歩、遅れて村隆も刀を抜く。
信忠は、村隆の胴体を真っ二つにするかのように
水平に剣先が流れ、両者が互いへ切りかかる。
一振りで勝負が付いたようだ。
周囲には両者が切られ、共倒れのように映った。
するとどうだろう。
信忠の刃は、村隆の胴体に届いていない。
村隆は鞘を盾にして剣を受け止めていたのだ。
対する村隆の剣先は、信忠の心臓を貫き
背中から飛び出していた。
勝負ありだ!村隆は、剣を引き抜くと。
♪ドサ
信忠が人形であるかのように倒れる。
周囲の用心棒は、一斉に剣先を村隆に向けた。
領主「落ち着け!」
領主は用心棒どもに争わぬよう止めに入る。
一斉に切りかかれば、流石の村隆でも
この人数には敵うまい。
だがその時、多くの用心棒を失うことになるだろう。
その前に、側にいる自分の身が危うい。
人質か盾にされる可能性がある。
領主「村隆!あ奴に付くつもりか?」
村隆は、風雷へと振り向き目を合わせる。
村隆「銀一文(32円)で我を雇わないか?」
その言葉に領主も風雷の顔を見て反応を確認する。
突然の申し出に風雷は驚くと同時に悩む。
この状況で加勢してくれるのは心強い。
しかも、先ほどの剣技。かなりの強者である。
だが、この争いに彼は関係がない。
もし、二度と刀を持つことが出来ないような
怪我をさせてしまったらどうしようと。
風雷「大変ありがたい申し出であるが、
これは桐生と相馬の問題。
そなたを巻き込む訳にはいかない。」
村隆にとって、予想外の回答であった。
村隆「左様か。」
領主「ということだ。
この場から立ち去れ。」
領主は村隆の気が変わらない内に早く外へ追い出したい
思いから立ち去るよう命じた。
村隆は刀を鞘へと戻し、堂々と風雷の元へ歩く。
風雷は近寄る村隆に対して敵意を感じさせなかった。
敵か味方かといったら中立なのだろう。
少なくとも先ほどの会話から自分よりであることは
感じ取れる。
村隆は風雷の真横に来た時に耳打ちする。
村隆「我の刀を使うか?」
ここで耳を疑るような言葉が発生られた。
刀を貸してくれるというではないか。
強者になればなるほど、自身の分身でもある刀を
他者に渡すことなど有り得ないからだ。
風雷はその気持ちだけで十分であった。
状況は最悪で死ぬかもしれないというのに
最高の日だと感じてしまったのである。
これも沙樹殿と出会った結果の現れなのだろう。
沙樹殿は死んだ。
もう彼女と会話することもできない。
だが彼女の魂はまだ自分に幸せを与え続けて
くれてると感じた瞬間である。
雷の緊張がほどけ心に余裕が生まれた。
風雷「かたじけない。その言葉だけ受け取っておこう。
あの者(信忠)を切ってくれただけで十分だ。
恩に着る。」
村隆「左様か。死ぬなよ。」
領主「そこ!何を話しとる!」
領主は大声でどなり、村隆が風雷側に付く
のではないかと気が気でない。
村隆は歩み出し、門番の前へと立つ。
門番は村隆を屋敷から出していいものか領主の顔を伺う。
領主は首を縦に振り、それに答える。
村隆はこの場から去った。
さぁ、戦闘再開である。
人数差は圧倒的ではあるが、信忠が切られたのは大きい。
見るからに脅威となる存在が消えたから。
これで戦力差は、風雷に分があると読んだ。
領主「そこの2人を殺せ!
男の方を切った者には十両出す。」
領主のこの言葉によって、用心棒どもに
闘志がみなぎる。
村隆の一連のやり取りで、先ほどの恐怖をすっかり
忘れてしまったのだ。
風雷の懐から短剣を1つ取り出す。
持参の武器はこれが最後だ。だが勝機はある。
風雷はそのタイミングを狙っていた。
用心棒どもは、一斉にじりじりと風雷に詰め寄る。
風雷と沙樹は、それに合わせ後ずさりする。
短剣が当たれば即死する。先ほど認識済みだ。
その短剣を連続して投げるには2、3本が限度だろう。
となると、その後飛び掛かれば、倒すのは容易で
あると用心棒どもは踏んだ。
風雷と沙樹は、とうとう隅にまで追いやられ、
すぐ後ろが壁で、後がなくなった。
張りつめていた用心棒どもにも笑みが生まれる。
もう、勝ったも同然の雰囲気。
そして、誰かが飛び出せば自分も行くと
各々が感じていた。
領主「何をしてる。早く殺せ!」
周囲がざわつく。
風雷によって殺されたと思われた3人が
突然立ち上がったのだ。
その光景を目の当たりに者たちは安堵する。
なんだ!短剣に塗られていたのは毒ではなく
全身を麻痺させる薬品だったのだと。
だが、その安心は一瞬で恐怖へと変わる。
「うわー。」
立ち上がった3人が仲間を切り掛かったのだ。
それに気を取られたタイミングで、
風雷の正面にいる2人に猫が飛び掛かる。
猫は、1人の太ももに乗り、続けてジャンプし、
隣の男の腕にしがみ付く。
猫が襲い掛かって来たことに驚き
2人とも尻餅をつく。
風雷も猫と同時に動きだしていて、
その2人の腕と首に短剣で切り裂く。
直ちに元の位置まで戻る。
2人の男は、反撃するまもなく仰向けで倒れた。
だが、2人ともすぐに起き上がる。
そして、立ち上がると同時に、仲間へ切りかかった。
場内にはパニックだ。
突然、仲間が切りかかって来てるのだから。
そう、これは全て風雷の作戦である。
風雷の血液が体内へ入ると即死する。
そして、24時間以内であれば遺体を操ることができる。
その操りは1人1人の行動を制御させている訳ではない。
風雷が敵だと認識している者へ殺せと命じているだけ。
あとは操り人形どもがロボットであるかのうに実行する。
簡単なのである。
沙樹をその場に残し、風雷と猫と共に乱闘の中へと入る。
この光景を見て逃げ出す者も出て来た。
領主もその1人。
風雷はその者を追い、縁側から屋敷へと土足で上がる。
こうなったら、だれ一人生かしてはおけない。
もし、この事が陰陽師の耳にでも入ったら
呪禁師の生き残りがいると感ずかれる
可能性があるからだ。
そうなると、バンパイアの対処方法を熟知する彼らに
勝ち目はない。
また逃げ回る生活が始まる。それはもう勘弁願いたい。
女「キャー」
女「キャー」
女「キャー」
襖を開けると6名の女史が固まっていた。
風雷は慌てて閉める。ここで誤算を生じた。
顔を見られただろうか?見られた可能性は高い。
風雷は動揺する。
ここは相馬の屋敷だ。
女史が居れば、厨房には板前も居るだろう。
その者らをどうするか?彼らに罪はない。
用心棒どもには忠告した。
それでも歯向かって来たのだから殺されても
仕方はないだろう。だが、彼女らは違う。
屋敷は1階のみ。敷地は広く部屋数も多い。
風雷は1つ1つ部屋を確認したら無関係な
人間まで殺さなければならなくなる。
そこで、猫に領主を探すよう念話する。
むやみに散策することをあきらめた。
風雷は庭と繋がっている広間まで戻る。
戦闘は終わっていた。
死体があちこちに転がっている。
周囲は静まり返り、血だらけである。
そこを10名ほどの操り人形が徘徊していた。
不気味な感じである。
風雷は念話で沙樹を呼び寄せ、側まで来ると。
猫「ミャアー」
猫も戻って来ていた。
どうやら見つけたようだ。
風雷「沙樹殿、仇を討ちに参ろう。」
風雷と沙樹は、猫の後を付く行く。
ついにその部屋へとたどり着く。
領主「お主らが何をしてる分かっておるのか。
ワシは領主であるぞ!
ワシの身に何かあってみろ。
ただじゃすまないと思え!」
風雷「そうかい。ならそれを楽しみにしとく。
沙樹殿、お父上、並びに家臣どもへの
復讐の時が来た。
さっ、これを!」
風雷は、沙樹に短剣を手渡す。
沙樹は無言のままを受け取り、剣先を領主に向ける。
領主「痛たた。」
風雷は、素早く領主の背後へと回り、
領主をうつ伏せに倒し、身動き取れないようにした。
領主「悪かった。ワシが悪かった。
500両出す。これでどだ。」
沙樹がゆっくりと近づいて来る。
領主「止めよ。千両でどうだ。うっ!」
領主は、首を刺され死亡した。
余りにもあっけない終わり方だった。
逃げられるよりかはいいが、どうも気が晴れない。
桐生の民衆にさらしてから殺しても良かった
のではないかと、少し後悔する。




