第23話 仇討ち
~~~ 相馬の屋敷 ~~~~~~~~~~
かなりの手練れと思われし者が正面にいる。
沙樹を手に掛けた人物、信忠である。
風雷「桐生家の者を殺害したのは貴様か?」
信忠「そうだと言ったらどうする?
なぁ、お嬢さん?」
沙樹は、無表情で風雷の真横に立っている。
信忠「お主を刺した男の顔を忘れたか?
それとも恐怖で言葉も出んか!
ハハハハハ。」
風雷「殺す。」
扉が閉じられ。門番が1人、その前を立ち塞ぐ。
ここから出さないという意思表示だ。
更には「何事だ!」と周囲から刀を持った連中が
わんさかと現れだした。
総勢40名ほどだろうか。
たかが2人相手に血の気の荒い野郎共の登場だ。
想像してはいたが、芳しく無い状況である。
風雷「聞け!皆の衆。
我は桐生家の代理としてここへ参った。
こ奴へ仇討ち致す。」
風雷は、仇討ちの相手である信忠へ指を指す。
風雷「忠告だ!邪魔する者は死を覚悟せよ。」
周囲は笑みを浮かべてる。
何言ってるんだこいつ、という感じだ。
そりゃそうだろう。
風雷側は武器を持たない男女2人のみで、
対して、あちらは全員刀を所持してるのだから。
ここから生きて帰れるとでも思っているのかと、
用心棒どもは頭を過ったに違いない。
信忠「仇討ち?丸腰で何しに来た!
我も舐められたもんだな。」
領主「何の騒ぎだ!」
領主様の登場だ。
縁側まで歩き、信忠の横につく。
信忠「は!桐生の娘が屋敷に乗り込んで来たであります。」
領主「信忠!始末したのではないのか?」
信忠「確認が不十分であった。生きながらえていたとは。」
領主「まぁよい。あの輩は?」
領主は風雷を見て信忠に問う。
信忠「さぁ?桐生家の代理と名乗っておったので
使用人ですかな!?」
領主「2人だけか?」
信忠「左様です。」
領主は、門の側に立つ2人へ向かって叫ぶ。
領主「桐生の娘よ!ここまでご足労をかけて
誠に申し訳ないが、あんたには死んでもらう。」
沙樹は、無表情のままで無言だ。
風雷は、この場で誰が一番偉いのか分からない。
だが、服装や周囲の態度から誰がどう見ても最後に
登場した人物がトップだと確信した。
風雷「某はここの主か?」
領主「そんな事も知らずにのこのこ来たか?小僧!
まさかワシが殺害を命じたことも知らんのか?」
風雷は拳を強く握り、目が野生のよに険しくなる。
風雷にとって珍しいことである。
相手が殺しにかかっても平然とした態度で
対処していたのだから。
風雷「ならば、某も生かしておけん。」
領主「おいおい、自分の心配をした方がよいぞ。
まさか、生きて帰れるとでも思ってまいな。」
領主は用心棒どもに言葉を掛ける。
領主「暇な奴。相手してやれ。」
我がと勢いよく2人の男が風雷の前へと出る。
男1「人を殺したくてうずうずしてたぜ。」
男2「この刀の切れ味を試したい。」
風雷は念話で猫へ命じる。
猫は、風雷の肩から飛び出し男1へ突進する。
距離は四丈(12m)。
男1「なんだ?この猫。」
男1は猫を蹴り飛ばそうと足を振り回したが、
軽くかわされ、スネをかじられた。
男1「いってぇな!」
猫が男から離れると、男1が倒れた。
男2「おい!銀二どうした?」
周囲は何が起こったのか分からない。
男1が足を振り回したまでは把握できている。
勢いあまって倒れたのか?くらいに捉えていた。
猫は、続けて男2に飛び掛かる。
男2「来い!」
男2は、猫を切り刻もうと刀を振るもかわされ、
猫は男2の手首に噛みつく。
男2「噛みやがった!」
男2は腕をはらい猫を強引に引き離す。
そして、男2もその場に足元から崩れ、地面に丸くなる。
猫は振り飛ばされ。難なく着地。
風雷の足元へと戻る。
2人の男が倒れてる。そしてピクリともしない。
その一部始終を見ていた信忠が注意を発する。
信忠「気を付けよ!2人は死んだ。
猫の歯に毒が塗り込まれておる。
噛まれたら死ぬぞ。」
その言葉によって、用心棒どもが一斉に刀を抜く。
観客気分でいた用心棒連中が戦闘態勢に入り、
平穏だった敷地が一瞬にして緊迫した状態へと
切り替わる。
風雷は胸元に手を入れ、小刀を握る。
そして一歩前へ出ると正面の連中は一歩引いた。
男3「うわー」
男4「うわー」
男5「うわー」
3人の男が一斉に飛び出して来た。
風雷は3人に向けて1発づつ3回、心臓を狙って
短剣を投げる。
男3は、腕をかすめ、血がにじむ。
男4は、顔の頬をかすめ、血がにじむ。
男5は、短剣が当たらなった。
男3と4は、前のめりに転び倒れる。
そして、男5だけが飛び出し、刀を上から下へと
振り下ろそうとした時。
猫「シャー。」
猫は口を大きく上げ、手足をピンと伸ばし、
毛が逆立った。
男5へ飛び掛かる体勢のようだ。
それに気づいた男5は、注意が猫へと集中する。
風雷はそこを見逃さなかった。
懐から短剣を取り、男5の顔面へと投げる。
そして額に刺さり、男5は倒れる。
信忠「聞け!
その男が持つ短剣にも毒が仕込んである。
注意せよ。」
3人の男は、ピクリともしない。最初の2人もだ。
どう見ても死んでいる。それも即死だ。
そんな即効性のある毒など見たこともない。
だが現実に目の前で死んだ。
もはや用心棒どもに笑みはない。
数では圧倒的な戦力差ではあるが、
誰もが盾にはなりとうない。
警戒が強よまり、うかつに飛び出せなくなった。
領主「どうした?だれも戦わぬのか!」
領主は周囲を見渡す。
風雷に誰も飛び掛かろうとはしない。
領主「この腰抜けどもめ!」
領主「先生!」
♪パンパン (拍手)
領主「先生、出番ですぞ。」
領主が誰かを呼んだ。
すると、頭をかきむしりながら刀を持った男が、
あくびをしながら登場して来た。
村隆である。
村隆「はぁ、襲撃か!」
村隆は皆の目線が集中する方へ焦点を当てる。
そして、風雷と目が合う。
村隆「よ!」
風雷は手当てした彼を思い出し、
無言で首を縦に振る。
村隆「こんな所で会うとは世の中狭いのう。」
領主「村隆殿!あ奴とは知り合いか?」
村隆「ちょっとしたな。」
領主「まぁいい。あ奴を切れ!」
村隆「武器を持っておらんぞ。
何をしたと言うのだ。」
領主「逆恨みじゃよ。よくあることだ。」
村隆「そうなのか?」
村隆は風雷に事実関係を尋ねる。
風雷「我は桐生家の代理の者だ。
領主を筆頭に家臣がここの者に
皆殺しにされた。
仇討ちに参ったである、」
村隆「誠であるか?」
風雷「ああ!」
村隆「これは正式な果し合いだ。刀は抜けん。
俺が見届け人となろう。
領主殿、正々堂々と1対1で決闘してくれ!」
領主「バカ言うな!?」




