表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/64

第22話 復讐

~~~ とある街道 ~~~~~~~~~~

風雷は茂みの上に横たわる沙樹を眺める。

笑みを浮かべ、目をつむる彼女は、今しがた

天国へと旅立っとは思えない表情をしている。

肩を叩けば今にも目が開けるではないかと

思えるくらいだ。

なので風雷には怒りや悲しみがといった

感情が湧いてない。

彼女が死んだという実感がないのである。


だが、彼女の真っ赤に染まる腹部を見て

意識が現実へと引き戻される。


風雷が立ち上がると同時に猫は定位置である

左肩へと飛び乗る。

沙樹をそのままにして、他の者に意識が

ないか確認するため路地へと戻る。


路地は相変わらず殺風景で人影がない。

だれもここを通る気配を感じない。


周囲には11名が横たわっている。

服装から状況は把握できた。

運び屋の2人。沙樹が雇った用心棒5名。

山賊3名。そして利玄だ。


生存者はいなかった。

風雷は利玄の亡骸を見る。

沙樹殿を助けられず、さぞ無念であった

ことだろうと心情を察する。

町の連中が彼女の死を知ったらどうなるか。

想像したくない。

風雷は沙樹との出会いから今までのことを

思い返す。

2人の会話が楽しかった。

診察や商店街を一緒に歩くのが楽しかった。

これらのことを事細かく覚えている。


年十年も人と距離を取っていた風雷が、

毎日会って会話をするなど、今思うと

考えられないことだ。

師範の妹である優紀乃を探す。

風雷の生きがいはそれしかなかった。

そのために生きて来たと言ってもいい。


沙樹は、そんな風雷に新しい生きる道を

教えてくれた人だったのだ。

目的を忘れ、この地に留まろうとさえしている。

沙樹は町の人達だけでなく、風雷をも変え

てしまったのだ。

思い返しても不思議な人であった。

その彼女が死んでしまった。

町の宝が。いや国の宝を失ったといっていい。


風雷は今まで、人との戦闘をさけるため、

怒りを抑える努力を続けてきた。

相手に非があろうとも自ら謝罪して来たのだ。

だが、彼の中で沸き上がる殺意が

止められないでいる。

こんな酷い事をした連中は、死すべきだと。


風雷は敵の3人を見る。

敵陣への案内役として動けそうなのが1人いた。

風雷は、そやつの腕へ噛みつき、自分の血を

体内へと送り込む。

するとどうだろう。

無表情のまま、そやつが立ち上がったのだ。


風雷の血には、特殊な効果がある。

生きた人間の体内へ1滴でも血が入ると即死する。

そして、死んだ人間の体内へ入れると思念伝達で

人形のように操ることができる。

まさに、この光景がそうだ。


だが、操るには制約がある。

死後24時間以内しか動かせない。

風雷のような超回復はない。

なので足を切断すれば歩かせることはできない。

当然、腕がなければ戦えない。

更には動作が遅い。生きていた時よりも

2割減のスピードとなる。

なので相手が手練れの場合は、護衛として

役に立たない場合があるのだ。


風雷「仇討ちに行って来る。」


風雷は遠目に倒れる利玄の顔を見て呟く。

そして沙樹の元へと戻る。

到着すると、膝をつき沙樹殿の顔を拝見する。

どう見ても寝ているとしか思えない。

死人の顔ではない。


操り人形は風雷の後を金魚の糞のように

付いて来て、相変わらず無表情のまま

側で立っている。

微動だにしないので、置物のようだ。


風雷「沙樹殿。安らかに眠ってくれ!

   私が仇討ちに参る。

   恐らく、沙樹殿は望まぬだろう。

   言わせてくれ。

   これは利玄のためでなく、

   町の連中のためでもない。

   私がやりたいのだ。」


風雷は、目をつむる沙樹に向かって話し掛けるも

意識は敵の方へと向いていた。


敵は相当な実力者と推測される。

利玄が倒されたのが理由だ。

彼の剣術としての実力は知らない。

だが、領主に雇われている以上、飛びぬけた

剣技を持った者であることは推測できる。

そんな利玄が無残な死に方をした。

戦ってはいけない人物のようだ。


風雷自身は死ぬかも知れないと、どこかで

感じている。

相手の情報が分からないのもある。

例えば、風雷をもってしても、一人で千人を

相手するなど不可能だ。

ましてや敵は全員素人ではないはず。


風雷には超回復という特殊能力がある。

一見不死身のような錯覚を抱くが、

実は欠点がある。

全身が回復できる訳ではないのだ。

筋肉と内臓だけしか回復できない。

すなわち、脳と骨は普通の人間とたいして

変わらないとうことだ。

腕を切断されれば骨がニョキニョキと

生えることはない、ということ。


風雷は肩にいる猫を抱え、地面へと降ろす。


風雷「ここでお別れだ。

   どこへでも好きなこと所へ行きなさい。」

猫 「ミャー。」


何を言っているのか理解できないが、

猫は大きな口を開けて返答したようだ。

そして風雷の顔を見つめる。


風雷「さ、行きなさい!」


猫は大きく飛び跳ね、風雷の肩へと戻る。


風雷「いっしょに行くと言うのか?

   お前もバカだな。」


そして風雷は沙樹を見返す。


風雷「沙樹殿。あなたも一緒に行きますか?

   その手で仇を討たせてあげましょう。」


風雷は、沙樹の腕を口元まで持ち上げ、

口を大きく開けて優しく噛む。

すると沙樹が目を開け、立ち上がったではないか。

そして、顔が無表情へと変わり、先ほどまでの

笑顔が消え、別人のようになった。


風雷は、沙樹を頭から足元までなめ回す。


風雷「歩けそうですね。では参ろう!

   私について来て下さい。」


次に意識を操り人形の男へ向ける。


風雷「親分のところまで案内を頼む。」


操り人形は、無言のまま茂みの奥へと歩き出す。

風雷たちは、彼の後に続いた。


~~~ 相馬庭 ~~~~~~~~~~

風雷(ここは相馬の屋敷か!)


屋敷は見えないが周囲が壁で覆われ、敷地が

大きいことが分かる。

風雷たち一行は、門から五間(ごけん)(10m)手前の

所で身を潜めている。

門には門番がいないことだけは把握できた。


風雷「案内ご苦労。」


仮にも敵であった操り人形の男へ労いの言葉を掛ける。

彼がいなければアジトに辿り着けなかったのだから。

だが状況が悪化した。

寄りにもよって、敵はごろつき連中ではなく

領主だったのだ。

中には凄腕の連中が100人居てもおかしくない。


風雷は悩む。

風雷(自分1人で勝てるのか?)


(ふところ)から5つの短剣を取り出し、

自身の腕を切り裂く。

豆粒のような血が数個出るも、超回復により

傷口は瞬時に消えた。

これは戦闘前の縁担ぎでも、儀式でも何でもない。


短剣に風雷の血を付着させることで、猛毒を塗った

物よりも強力な武器へと仕込みを入れたのだ。

心もとないが、これで戦闘準備完了である。

ここに来た時点で腹はくくってある。

相手が領主だろうと変わらない。


風雷「貴様はここで待機してろ!」


操り人形の男へ命じる。

猫を肩に乗せたまま風雷と沙樹は門の所へと進む。

大きな門の横に人1人通り抜けできる扉がある。

風雷たちは、その扉の前へ立つ。


♪コンコン


扉の小窓が開き、裏に居る門番らしき者と目が合う。


風雷「先ほど(それがし)に襲われた者だ。

   死者の遺恨を晴らしに参った。

   門を開けよ!」


裏で何やら騒がしい。

扉が開く。


風雷、沙樹の順で1人づつ中へ入る。

三十丈(さんじゅうじょう)(30m)先にいる人物と目が合う。

その者は、縁側に片足を乗せて腰掛け、刀を握っている。


信忠(のぶただ)「お嬢さん。生きてたのか!

   ハハハ。

   バカだね。自ら殺されに来るとは。」


この言葉で、沙樹を殺したのはこいつだと風雷は判断した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ