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第17話 実験日誌

~~~ 診療所 ~~~~~

風雷は桐生庭での騒動のあと、一重(かずしげ)と共に

店を出で途中で分かれた。

風雷は、猫と共に我が家である診療所へと

戻って来る。


今日は朝から波乱な始まりの日である。

亡くなった美津(みつ)殿には恩を感じていた。

助けられなかったが悔しい。

もう少し早く駆け付ければと、つい考えてしまう。

そして、一番の驚きは手元の黒猫だ。


生死は不明だったが、気づくと目を開け

鳥籠の中でおとなしくしている。

あれだけ気性が激しかったのに、今は

手を舐め、普通の猫のようなふるまいをしてる。


さて、問題はこの猫が化け物になったか否かだ。

答えは調べるまでもない。肯定だろう。

解毒剤を飲ませてないのに、元気なのは説明が

付かない。

毒を口にして一刻(いっとき)(2時間)は経つ。

死んでるか、瀕死の状態なはずだ。


領主殿からは助けてくれと頼まれている。

沙樹殿にもだ。

このまま生かすか殺すか決断せねばなるまい。

その判断は、人を襲わないよう調教できるか

否かにかかっている。

呪禁師総本山(じゅごんしそうほんざん)が残っていれば、文献があるので

調教方法が知れたのに。

全てが灰となった今、ありもしないものを

求めても意味はない。


どうして同朋が作れたのか分からん。

偶然出来たとはいえ、今後も起こる可能性はある。

調教方法だけでも日誌に記載し残そうと思う。


紙と筆を用意し、猫が毒を口にしてから

今までの状況を鮮明に記した。

そして、調教の過程を書き留めていく。


--- (たつ)三つ時(8時) ---

猫は全身黒。性別はメス。種類は不明。


(ひも)で作った首輪を猫に装着させ

自由に移動できなようにするところから始めた。

あぐらをかき膝の上に乗せるも、

人に慣れているのだろうか、おとなしい。

調教には好都合だ。


まづは剣歯の確認から。

剣歯とは、下の八重歯が鋭く尖って少し大きく

変化したものだ。

これは、化け物の特徴の一つで血をすするため

に変化するものと考えられている。


その剣歯の存在を確認するも、

あるにはあるのだが猫とは本来このような

歯をしてるのか区別がつかない。

結果、同種の猫と比較しないと分からない

という結論である。


そこで、化け物の特徴である超回復を確認

することにした。

残酷だが、小刀で猫の腹を浅く切ってみる。


猫「ぎゃあー。」


痛みは感じるようだ。

腹を切られ、私の腕に噛みついて来た。

そして、超回復の存在を確認できた。

傷口が一瞬でなっくなったのだ。

もう揺るぎ無い。こいつは同朋確定だ。


となると次は思念伝達による意思疎通だ。

バンパイア同士は、30(じょう)(90m)の距離間で

互いに思考を伝えることができる。

だが、猫には人の言葉が理解できない。

どうやって教え込むかだ。

師範はどのうにして調教してたのだろうと

風雷は悩む。


何かを始めなければ何も始まらない。

まづは、移動の指示を念で伝える。


風雷(玄関まで行け!)


動じない。動く気配させない。


風雷(玄関に行け!玄関だ!)


猫は立ち上がろうともしない。

では、逆に猫を呼び寄せることにする。

膝の上にいる猫をどけ。

立ち上がり部屋の隅へと移動すると

風雷の真横を歩き一緒に付いて来た。


風雷(動くな!動くなよ!)


風雷は猫にその場で待機するよう念を入れる。

そして、風雷が部屋の反対側の隅へと移動する

も猫は一緒に付いて来てしまった。


風雷(止まれ!)


まったく言うことを聞かない。初めから

そう簡単にうまくいくとは思っていない。

風雷は根気よく何度も繰り返すも、

その場に立止めることすらしてくれない。


--- (うま)二つ時(11時半)---

時間だけが刻々と経過する。

何も進展がない。

だが1つ分かったことがある。

風雷の側から離れないということだ。

それならそれで安心できる。

手の届かないところに逃げてしまったら

何をしでかすか分からないからな。

特に商店街の人達には迷惑を掛けたくない。

というか殺してしまう危険がある。


ならば調教の優先順は変更だ。

人に噛みつかないようにさせればいい。


猫の口元に手ぬぐいを近づける。

噛んだ。


風雷(噛むな!)


もう一度実施するも噛む。


--- (ひつじ)三つ時(14時)---

何度やってもダメだ。

この猫は噛み癖があるようだ。

近づけるとそれに反応して噛んでしまう。

さて困った。

とてもじゃないが人を近づけさせられない。


それからもいろいろと試行錯誤するも

まったく言うことを聞かない。

そもそも思念伝達が出来てるのかさえ

疑いたくなる。

声に出しても結果が同じであったことから

思念伝達は伝わっていると信じることにした。


--- (いぬ)一つ時(19時)---

時間が経つのが早い。

外はすっかり暗くなってしまった。


よくよく考えたら、この猫は狩りが

できるのだろうか?という疑問が出て来た。

血を摂取しなければどの道死ぬ。


近所に竹山がある。

先日、夜を徘徊してるときに猫を何匹が

見かけたことがある。

相手が猫ならは血を採取する可能性はある。

猫を連れてその山へと行くことにした。


首輪をつけたまま外へと出る。

外は月明かりで薄暗いが建物と道の区別はつく。

少し肌寒く、静寂に包まれていた。

こんな時は誰かに監視されてるようで

いきなり切り刻んで来るかもと感じでてしまう。

私の左肩に猫が乗っかって来た。

もしかして思いが伝わって猫も恐怖を

共感した可能性がある。

そう考えると愛おしく思えて来る。

まぁ、そんなことはないがな。


竹山に着くと早速、白猫を発見。

一間(いっけん)(2m)まで近づく。


風雷(襲え!殺せ!噛みつけ!)


猫は肩から降りようとはしない。

肩から降ろしても直ぐに風雷の肩に戻って来る。

このまま血をすすらない気か?


先ほどの恐怖を感じた時に猫も共感した

ことを思い出す。もしやと思い。

白猫に視線を集中し、こ奴の血を飲みたいと

黒猫へ念を送る。

すると肩から飛び出し白猫へ襲い掛かった。


白猫は黒猫の気配を感じ距離を取る。

猫同士で互いを見つめ殺気立つ。


黒猫「グルル」

白猫「グルル」


白猫の方から襲いかかる。


白猫「ぎゃぁー」


だが黒猫はかわし、白猫の首に噛みつく。

すると白猫が徐々に元気を失う。

噛みちぎったとかではない。

ただ噛んでるだけ。

ということは黒猫が血をすすってるとうことだ。

その証拠に、徐々に痩せほそって行き、

ついには皮と骨だけのガリガリとなっていく。

白猫は眠る様にして息を引き取った。


ここで一つ分かったことがある。

猫に言葉を覚えさせる必要はなかったのだ。

思いという動物間での共通言語があるではないか。

それを伝えればいいという事だったのだ。

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