第13話 新治療
~~~ 商店街 ~~~~~
風雷と沙樹は、呉服問屋を出たあと、
次の依頼主である飯田宅へと向かう。
沙樹「風雷様。和江さん宅へ寄ってもいいですか?」
風雷「和江殿とは?」
沙樹「ほら、お米屋さんで米俵運んだの思えてます?」
風雷「ああ。旦那が頭痛で寝込んでた。」
沙樹「はい。
通り道なのでご主人の具合を聞きたい。」
風雷「なら向かうとしよう。」
2人は米屋の前へと来る。
店の中に1人、誰かがいる。
和江「あら。昼間から2人でお出かけ?
仲いいこと。」
沙樹「和江さん!仕事です。」
和江は風雷を見上げる。
和江「相変わらず男前さね。
ありがとうね。」
風雷「何がだ。」
和江「うちの旦那、元気になった。頭痛くないと。」
沙樹「それは良かった。」
風雷「一時的なものだ。安心するでない。
薬が無くなるまで続けろ。」
和江「旦那に言っとくわ。」
沙樹「その旦那さんは?」
和江「今、出かけとる。」
沙樹「本当に良くなられたのですね。良かった。」
和江「ああ。あんた凄いさね。
煙で病気治したんだからさ。」
沙樹「でしょ。風雷様は名医なんでです。」
和江「困っとる人がおったら、お勧めしとくよ。」
沙樹「ありがとうございます。」
沙樹「では失礼します。」
和江「ちょっとお待ち!
ほれ、おにぎり持ってきな。」
竹串の皮でおにぎりを4つの包んだものを差し出す。
風雷「いや。」
沙樹「ありがとうございます。
あとで美味しく頂きます。」
和江「それはうちの米で作ったさかい、
食べたら頬っぺた落ちるぞ。」
沙樹「はい。存じてます。」 (^_^)
3人はお辞儀を交わす。
そして、風雷と沙樹は次の患者へと歩き出す。
米屋を後にして、沙樹は上機嫌のようだ。
風雷「何がそんなに楽しい?」
沙樹「風雷様は思った通り、凄いお方です。
尊敬します。」
風雷「どうした?気持ち悪いぞ。」
沙樹「風雷様はこの国1番の医者です。」
風雷「からかうでない。」
沙樹「本心です。」
風雷「まぁ、沙樹殿が信じるから
私を医者とすて信じるのだろう。」
2人は煎餅屋に近づくと
その店にお客が3人並んでいる。
どうも接客する者が居ないようだ。
沙樹「貞吉さん?」
貞吉「ちょっと待って!手離せねぇ。」
貞吉はこの店の店主で、七輪の前で汗を
拭きながら1人で煎餅を焼いている。
店内には彼しかいないようだ。
沙樹「お忙しいそうね。お1人?」
貞吉「何だ。沙樹さんか!
次郎のやろう。米受け取りに
行ったきっり帰ってこねぇ。」
沙樹「お店、手伝います。」
貞吉「悪い。」
沙樹は、風雷を見つめる。
風雷「手伝って差し上げなさい。」
沙樹「でも、次の患者さん。」
風雷「場所は分かる。1人で十分だ。」
沙樹「後から必ず参ります。」
風雷「ここで待ってなさい。
終わったら戻って来る。」
貞吉「旦那すまねぇ。
少しの間、沙樹さん借りやす。」
風雷「構わん。」
沙樹は、店内に置いてあった白いひもを
手に取り、たすき掛けする。
沙樹「お待たせしました。ご注文は?」
女性「のり煎餅10枚。」
沙樹は、手慣れた感じでお客に応対する。
いつも手伝っているのだろう。
勝手が分かっていて手際がいい。
いつも横にいる彼女だが、こうして
まじまじと正面から見るのは久しぶりだ。
沙樹殿は笑顔が似合う。
なぜか人をくぎ付けにする力を持っている。
風雷はそんなことを思い、この場を離れる。
道中。
隣にいるはずの沙樹殿がいない。
ふと手伝ってる姿を思い返す。
沙樹殿が自分に時間を割くのはもったいない。
やはり、ああして町の人たちに
奉仕することで、周囲を笑顔にし、
強いては町全体への活気につなげているのだと
つくづく実感するのである。
~~~ 鍛冶屋 ~~~~~
次の依頼主である鍛冶屋へ到着した。
♪カン、カン、カン、カン
鉄を打つ音がする。
奥に作業場があるのだろう。
店内に入ると、小刀や太刀が
数多く取り揃えてある。
庶民が買うような包丁が置かれてない。
この店は武家を相手にしてるところなのだろう。
大きな鉄の塊を見つけ、立ち止まる。
風雷「素晴らしい玉鋼だ。」
宗久「ほう、興味深い。
どうしてこれが玉鋼と分かる?」
いつの間にか背後に人が居た。
だが風雷はそんなことには動じない。
風雷「このきめ細かさは普通の鋼ではでない。
そして七色の輝き、1級品の証だ。
ここには相当腕のある職人がいると
見受けられる。」
宗久「あんた、気にいった。」
風雷「お主、何者?」
宗久「ここの親方をしとる。」
風雷「宗久殿であるか?」
宗久「そうじゃが。」
風雷「失礼した。私は風雷、医者だ。」
宗久「あなたが噂の。お待ちしてた。
ささ中へ入られよ。」
中へと入り、応接室へと案内された。
宗久「さっそく見て頂きたい。」
風雷「お主が患者であるか?」
宗久「左様です。」
病状を聞くと大したことはなく。
単にここ最近、全身に力が入らないとのこと。
誰かが背にぶら下がっているような感覚だという。
別の医者に診てもらたらところ
疲れがたまってるから休息しろと診断された。
とのことだが、今は納期が迫っていて
休む時間がないだという。
そこで風雷が呼び出された訳だ。
状況からして同じ診断になることは
目に見えている。
沙樹殿には困ったものだ。
風雷は、いつものように特殊な診察方法で
あることを説明し、血をすする。
血液を解析した結果、疑問が生まれる。
どこも怪我や病気になっていない。
疲労の原因である乳酸も確認できない。
至って健康であることが判明した。
これはどう言うことなのか風雷は悩む。
宗久「医者殿、どうされた?」
宗久は風雷の険しい顔を見て、
自分は重い病気ではないと不安になる。
風雷は考える。
病気でないとなると嘘を付いてるしかない。
いやまて、風雷は彼の言葉を思います。
「誰かが背にぶら下がっている」と。
もしかしたら本当にぶら下がっているかも
知れない。
死霊が。
これは陰陽師の仕事だ。
風雷は切に思う。
除霊で危険なのは、逆に多くの霊を
呼び寄せてしまうこともあるってことろ。
だが、本当に死霊が取り付いてるかは不明。
風雷には霊能力などないのだから。
状況からして居る可能性は高いといえる。
ならば見よう見まねでやってみようと
風雷は腹をくくることにした。
彼には霊のことは伏せ、原因は血行が
悪いせいだと伝え、お香を嗅ぐことで
血の巡りがよくなり改善できると説明した。
彼を部屋の中央に、北を正面にあぐらで
座らせる。
そして、迷迭香の煙を焚き、
瞑想してもらう。
その間、背中に塩を一つまみまいた。
風雷「宗久殿。もうよい。目を開けよ。」
宗久はゆっくりと目を開ける。
風雷「体調はどうだ?」
宗久「肩が軽くなったような。」
風雷「立ってみよ。」
宗久は立ち上がる。
宗久「背の重しが消えてる。」




