第12話 医療助手
~~~ 川沿い ~~~~~~~~
人通りの少ない川沿いの道。
風変わりな男女が仲睦ましく歩く姿があった。
女性の方は屋敷の娘なのだろう。
容姿の整った綺麗な顔立ちで高価な着物を召している。
そんな女性の横に着くのは大概用心棒か侍と決まってる。
付き添いが居なければ襲ってくださいと言ってるようなもの。
だがその隣に立つ男性は、刃物を持たず着物姿でありながら
大きな木箱を背負うという不思議な格好をしていた。
そう、風雷と沙樹のことだ。
風雷はふと、沙樹殿が自分の真横を歩いてることに気づく。
これは普通のことのようで普通ではない。
つい先日までは、風雷の一歩後ろを付いて行く
そんな感じだったのだから。
診療所の1員になったからなのか、
それとも彼女に心境の変化でもあったのだろうか。
風雷はそれを問うことなく疑問を胸の内にしまう。
沙樹「依頼主は呉服屋さんなんです。
そのご主人が昨夜からお腹が痛くて。
本当に凄く痛いみたいで。
お腹を壊してて、嘔吐もあるそうです。
もう大変なんです。」
風雷「はは。それは大変だ。急がないと。」(^_^ )
沙樹「笑いごとではありません。」( --)
風雷「これは不謹慎であった。」
沙樹「今朝になっても治らないという話を聞いて、
風雷様なら治せますよと伝えたところ
そのまま依頼となりました。」
風雷「助けたい気持ちは分かる。
私を信頼してくれるのもありがたい。
だが、もし治らなければ辛い思いをするのは
沙樹殿なのだぞ。」
沙樹「風雷様なら治せます。」
風雷「参ったな。」
正面から女性の大声が聞こえる。
女性「誰かその人を捕まえて!」(>_<)
女性は地面に膝まづき動けないようだ。
男 「どけ、どけ。」
正面から走って来る男は、左手に小刀、
右手に巾着を握っている。
風雷は悟る、盗人だと。
あの巾着を奪ったのだなと。
危険がないよう腕を使って、沙樹を背に移動させ、
風雷は盗人に道を譲るふりをする。
真横を通り掛かった時、盗人の足元をひっかけた。
倒れそうになるも踏ん張り、振り返る。
盗人「死にてぇか、貴様!」
風雷は盗人が完全に振り向く前に、
腰らへんに思いっきり蹴りを入れる。
盗人「あーー!」
♪ザバーーン。
川に落ちた。
沙樹殿は被害のあった女性の元へ。
沙樹「怪我はありませんか?」
女性「大丈夫です。」
手を差し伸べ女性を立たせる。
女性「あの男に巾着を奪われました。」
風雷「探し物はこれかな?」
女性「ありがとうございます。」
風雷は、盗人の足を引っかけた隙に
巾着を奪い取ったのだ。
風雷「中を確認したほうがいい。」
女性「何も取られてません。」
沙樹「それは良かった。」
沙樹「急いでどこかへ行かれた方がいいです。」
女性「でもお礼を。」
風雷「お礼は結構。ささ、参れ!」
女性はお辞儀をし、立ち去った。
沙樹「川に落ちた人は大丈夫かしら。」
風雷「沙樹殿。心配する殿方を間違えとるぞ。
急いて患者に向かうとしよう。」
風雷「はい。」
~~~ 呉服問屋 ~~~~~~
沙樹「田中さん。田中さん、ご在宅ですか?」
静江「只今。」
妻の静江が現れた。
静江「あら沙樹さん。こんな早くすまないね。」
沙樹「ご主人の容体は?」
静江「相変わらずさ。寝とるよ。」
沙樹「急いで診ます。」
静江「殿方がお医者様?」
風雷「風雷と申す。医者をしておる者だ。」
静江「はぁ~。」
静江は上から下へまで舐めまわすようにして
風雷を見る。
そして沙樹の耳元でささやく。
静江「男前さね。」(-_^)
風雷「・・・」(^_^)
中へと入り、その患者が居る部屋へと案内される。
男は布団の上で丸く横たわっていた。
聞くまでもないかなり苦しそうだ。
静江「医者、連れてきたさ。」
主人「うーー。」
沙樹「吉晴さん、もう大丈夫ですよ。」
風雷「ご主人。どこが痛い。」
主人「気持ち悪い。腹の横っ面が痛え。」
いつものように風雷は端的に独自の治療方法を説明する。
そして、主人の腕を噛みつき、血をすすりながら
食事と容体分析を同時にこなす。
風雷「食中毒だ。体内に菌がいる。
昨夜、腐った物とか口にしてないか?」
静江「生魚かね。」
風雷「可能性は高い。
魚の体内にいた菌が入り込んだようだ。」
風雷「治るまでは、火を通したものを口にするように!」
静江「魚に菌がおる?」
風雷「ああ。焼けば菌は死ぬ。
旦那は体質的に胃酸が弱い。
これからは焼き魚にするといい。」
静江「確かに過去に何度かあたさ。
こんななったのは初めてさ。」
沙樹「では、薬を飲めば菌を殺せるのですね。」
風雷「薬はあるが、ご主人も死ぬかも知れん。」
静江「はあ?旦那、ちょっと待って。」(>_<)
風雷「安心せい。薬は使わん。」
沙樹「では、どのように施すのですか?」
静江「頼むから怖いことはせんといて。」
風雷「水を飲むだけだ。」
静江「はぁ?」
風雷「菌はさほど脅威ではない。
害は体内の水分がなくなる方だ。
汗や下痢で、体内の水が出てる。
水と果物を持って来てくれ!」
静江「はいさ。」
沙樹「風雷様。
水を飲み続ければ菌は死ぬのですね?」
風雷「いや死なない。
身体から出て行くのを待つだけだ。」
静江「お医者さん。持ってきたさ。」
風雷「静江殿。水以外に栄養も必要。
固形物を食べたら吐くだろう。
水に果汁を混ぜて飲まされよ。」
静江「わかりました。」
風雷は薬箱から黒い粒を3つ取り出し、
静江に手渡す。
風雷「1日1粒。今の時間くらいに呑まされよ。
一応、3日分渡しとく。
身体か菌が出れば完治する。」
静江「菌って出るの?」
風雷「ああ。3日もあれば出て来る。
それまで果汁入りの水を飲ませろ。」
静江「菌を殺さないで、病気が治るの?
嘘のような話だね。」
沙樹「静江さん。風雷様を信じて。」
風雷「一応、明日も診に来る。」
静江「なら安心だわ。」
静江「お医者はん。
もう一度聞くが、本当に水だけで治るやね。」
風雷「ああ。小まめに水分を取る。
それだけで治る。」
静江「分かりました。」
風雷「あとは静江殿に任せて。次行くとするか。」
沙樹「静江さん。そろそろ出ます。
何かありましたら、うちに来てください。」
風雷「なら、診療所へ来ると言い。」
沙樹「風雷様に迷惑が掛かります。」
風雷「バカ言うな。
そんな時こそ私がおらんでどうする。」
沙樹「左様でございます。
では風雷様、お願い致します。」
風雷「そう、それが私の仕事だ。」
沙樹「静江さん、診療所の場所はご存じですか?」
静江「ああ、知っとるよ。」
沙樹「では私共は次がありますので。」
静江「次も急いだ方がええ。」
静江「あのぉ。治療代ですが。
五両で足りますか。」
沙樹「静江様。
治療代は一両になります。
病が完治できましたらたら、
お礼で二両いただく決まりであります。」
静江「それは安すぎるで。」
治療費については、事前に沙樹殿と相談をし
病状に関係なく一律でこのような料金体勢とした。
沙樹「うちの決まりですので。」
静江「なんや良心的な医者やな。
わかったわ。」
静江は沙樹に一両を手渡す。
そして3人は外へと出る。
静江「ありがとうございました。」
沙樹「お大事に。」
2人は、静江に見送られ、次の飯田宅へと
歩き出す。
沙樹「やはり、風雷様は凄いお方です。」
風雷「そういうことは完治してから言うものだ。」
沙樹「病の原因が分かった時点で風雷様の勝ちです。」
風雷「医者に勝ちとか負けなどない。
原因が分かっても治せないのもある。」
沙樹「いろいろと勉強になりました。
少しづつ覚えて行きます。
わたくしも人を助けたいですから。」
風雷「ああ、少しづつ覚えると言い。」
沙樹「血を舐めるところから始めます。」
風雷「それは沙樹殿だけでなく、だれにも出来ない。
私の得意体質だから。」
沙樹「はぁ。でも。」
風雷「止めておけ。」
沙樹「分かりました。」




