23. 好き好き大好き超アイしてる。Love you, Love you, I do love Ai super much.
600PVありがとうございます!!!!!!
「あっ……ミルヒシュトラーセ様は、お弁当なんですね。」
「はい。お料理は好きなんです。」
「あっ、えっ……あっ、ご自分で作られているんですか?貴族なのに?」
「は、はい……やっぱり変ですかね?でも学校に通うようになって、おねえさまが毎日おいしかったぞって言ってくれるのがうれしくて。」
「あっ……変じゃないです!うちも畑仕事の合間に自分で作ったありあわせのモノを食べたりしまし、します、しますし!」
「そうなんですね!」
えっ、かわいいだけじゃなくてお料理まで!?できらぁ!!てかまじおいしそうだし、彩りもすげー、食わせてくんねーかなぁ!?あわよくばあ~んしてくれ!!いや落ち着けアルターク。アルターク・デイリーライフ……。クールに行くんだ。Be cool Stay cool……。てかぜってぇお裁縫も家事もできるじゃん!!貴族なのに!!貴族なんて面倒ごと全部使用人任せだから、料理ができるとか逆に恥ずかしいことって言ったの誰だ!?おれがぶっ飛ばしてやる!!ええー、お嫁さん検定1級!!この子、私のお嫁さんに決定!!!Foo~!
「あの、アルターク様。」
天使が両手を合わせて不安げにこちらを見上げている!なんだなんだなんだ!?
「あっ……どうされましたか、ミルヒシュトラーセ様?」
私、話始めに、絶対『あっ』ってついてるんですけど!?非モテまるだしじゃん!?あっあっあっどうしよう。
「これは、お願いなのですが、もしよろしければ、わたくしのことはアイ、とお呼びいただけませんか?」
「えっ……あっ、でもでもミルヒシュトラーセ様ですし……。」
「ええ、ですがわたくしは自分の家名が苦手でして……そ、それに!この学園にはおねえさまもいますし!どっちのことか分かりづらいですし!」
いやいや名前呼びなんてしたら周りで見てるクラスメイトたちにぶっ殺されるんですけど!?えっ、お姉さまって鬼の風紀委員長のことだよね?そもそも多分一生関わり合いにならないから、呼び分ける必要なんて……。
……いや、そうじゃねぇだろう!そうじゃあねぇだろうが!アルターク・デイリーライフ!この子が!この天使がそう望んでいる!じゃあ私は!!
「あっ……アイちゃん……さま?」
「!……はい!アイでございます!アルターク様!」
「あっ……でゅふふ……。」
「えへへ。」
おいおい見てるか~?クラスメイトども~?指くわえてうらやましそうによぉ。冷えてるか~?いや~気分いいぜぇ。学園のマドンナを独り占めする気分はよぉ……。アルターク・デイリーライフの人生はここに完成した!Happy End!!完!!!
「それで、あの、もしよろしければ、なのですが……。」
天使が何か言いたそうに此方をちらちら見ている!かわいい!!生き残るためにかわいさにステータス極振りした小動物じゃん!!かわいいだけでいいと思って!人生舐めてるだろ!許せねぇ!あ〜ゆるしちゃ〜う。かわいさに免じてゆるしちゃ〜う!あぁ~かわええんじゃあ~。
「あっ……アイちゃん様なんですかアイちゃん様?」
「その、わたくしと……おともだち、になってください……ませんか?」
っっっっっシャア!!しゃおら!!しゅっしゅ!!これもう婚約だろぉ!?結婚じゃん!!やばいやばいやばい……よしできるだけ落ち着いて、大人のよゆーで、しんしてきに、できるだけイケメン顔で……!
「あっ、あっ、あっ……ぜひ……よろしくおねがいしましゅ……。」
「……!はいっ!これからよろしくお願いします!アルターク様!」
……この子の騎士として生涯守りとおしていこうと決めた。
――こうして私、アルターク・デイリーライフは世界でいちばんかわいい、アイちゃん様と友達になったのであった――。
◇◆◇
「……アイちゃん様ー。」
アイちゃん様の手を引き膝の間に座らせる。そしてあごを頭にのせてそのさらさらの髪を堪能する。
「どうしたの?アルちゃん?」
顔は見えないが超絶かわいい不思議そうな顔をしているに違いない。
「……うーん?なんかね、入学してすぐ、私たちが出会ったときのことを思い出しちゃってね。」
「ふふっ、あのときのアルちゃん……かわいかったですよ?」
仲良くなってときどき小悪魔みたいにからかってくるようになった、それだけ心を許してくれているという事で、うれしい。
「なにお~?アイちゃん様の方が100億倍かいかったよ!まじで初めて見たとき翼を失った天使が天国から落ちてきたのかと思ったもん。」
「でも、わたくしにあのように気安いかんじで声を掛けて下さったのは、アルちゃんが初めてだったんですよ?だから、とっても嬉しかったです。」
「いや~、あの時の私はヤバかったね。テンションがバグってた……主にアイちゃん様のせいでっ!」
「ええ〜、わたくしのせいですか〜?アルちゃんがもともと変だったんじゃないですか〜?」
頬をふくらませてみた後に、からかう様な笑みを浮かべるアイ。
「なにお〜?これでも、くらえっ。」
あごを頭頂部に当てたまま、歯をカチカチして攻撃する。
「わ!わわわ!アルちゃん〜、いたいですよ〜。」
「悪い子にはおしおきしないとね~。」
「むっ……アルちゃん、ちょっと離してください。」
「……?うん」
アイちゃん様が今度は向かい合って私の膝にまたがる。あっやわらかい。めっちゃいいにおい。すんげーきもいな私。そしていたずらっぽく笑う。
「こうすると、いつも見上げてるアルちゃんを見下ろせますね。」
「……そうだね?」
耳元に口を近づけてなにかを囁こうとする。ちかいちかいちかいって!オトナ顔負けの豊満なお胸が!天使のお顔が!
「……アイちゃん様、私は理性が超つよつよだから大丈夫だけど、誰にでもこんなことしちゃだめだよ?」
「……アルちゃんにしかしませんよ?」
「おっふ……でゅふふ……な、ならいいんだけどね!?」
あぶないぎりぎり致命傷で済んだ、私が鋼の理性をしててよかったね!?アイちゃんさまぁ……。
「ときにアルちゃん。」
「ん?なぁに?」
「おねえさまに、とってもなかよしなお友だちができたって言ったら、
『ほう……?是非今度顔合わせをしよう。アイにふさわしい奴かこの私が見極めんとなぁ……!!』
……だって!」
「おんぎゃ~!!無理無理!山に埋められる!」
「あはっ!さっきの仕返しですっ!」
「え……じゃあ今の話は嘘……?」
「あ、それは本当です。」
「おんぎゃ~!!無理無理!海に沈められる!」
「おねえさまはやさしいですよ?」
「それはアイちゃん様にだけだって!殺される〜!だって、学園の氷壁女王だよっ!?あの鬼の風紀委員長だよ!?」
「……でも、わたくしのおねえさまですよ?」
「いくら学園の天使お姫様の姉でも!こわいものはこわいんだよ〜。」
「ふふっ、ではまた今度にしましょうか。そう伝えておきます。」
「そうしてくれると助かるよ……。」
「心の準備ができたら、お伝え下さいね!」
「う、うん。その時は未来永劫来ないかもしれないけど……。地獄の弥勒菩薩が全人類をお救いくださる、56億7千万年後くらいかな……。」
アイちゃん様がふと真面目な顔になってさらに小声になる。
「アルちゃん。人間体排斥委員会のことですが……。」
あぁ……その話か……。
「うん。どうしたの?」
「もし、彼らや他の……性差別主義者に何か言われたり、されたりしたら、必ず……絶対にわたくしに相談して下さいませんか……?」
アイちゃん様のサファイアの瞳が少し揺れている。
あぁ……この子は本気で、心から私を心配してくれているんだなぁ……。いい娘だなぁ、ほんとうに。
「うん、絶対アイちゃん様に相談するよ。……それに、私が人間体だって知ってるのは――」
「しっ、アイちゃん……。誰かに聞かれます。人前では伏せて話しましょう。」
アイちゃん様のちいちゃくてやわらかいお手々が私の口に……!
……それにしても……ここまで他人の為に必死になれるなんて……あぁ、やっぱりこの子は天使だなぁ。
「そうだね。ありがとう。私がそうだっていうのはアイちゃん様にしか伝えてないしさ。私の秘密を知ってるのはアイちゃん様ただ一人だし、貴女は絶対にそれを守ってくれる、だから……きっと大丈夫だよ。」
「それでも……私は心配です……。」
あぁ、この子とおともだちになれて、ほんとうによかったなぁ……。
「ありがとう……アイちゃん。」
――この日の帰り道、アルターク・デイリーライフは人間体排斥委員会に襲撃された。




