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ソング・バッファー・オンライン~新人アイドルの日常~  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
6章

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今年の二年生のトップ4


 正直なことを言えば、Frenzy(フレンジー)にはまだまだ問題が山積み。

 でもFrenzy(フレンジー)はそれでいい。

 それがいい。

 その距離感が、いいのだ。

 この先なにか変化があったら、それは自分たちの中でなにかしらの落とし所として糧となるだろう。


「あ、あ、あのう……お、お、音無くん……デビューライブが明日なのに、だ、大丈夫、ですか……?」

「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう、千景くん」


『聖魔勇祭』本番。

 一年生の『トップ4』は鏡音円、柳響、江花満月、夕陽廉歌。

 なんとなくわかってはいたが、鏡音が柳より二万円近くの大差で一位だった。

 これはおそらくeスポーツ大会の影響が大きい。

 ただ十二月には格ゲーの大会がもう一つあるらしく、聖魔勇祭が終わったこのあとはそちらの大会に出るそうだ。

 ちょっとあまりにも働きすぎなような。

 まあVRで格ゲーができるストリーマーは少ないので、呼ばれるのは仕方ない。

 そして淳達より上の、最後の『トップ4』に選ばれたのは茅原一将、蓮名和敬、夏山真紅、後藤琥太郎。

 もはや定番と化した四人だが、後藤がかなり順位を落とした。

 理由としてはプログループの方の練習と依頼された衣装作りに専念していたため露出が極端に減ったためだろう。

 冬の陣でのプロデビュー公表で暫定九位から一気に四位に滑り込んだと先生が驚いていた。


「なんだかあっという間だったなぁ、と思って見てた」

「一年生たち、ですか……?」

「うん。自分たちもそうだけれど、一年生たちもあっという間の一年だったらいいな。頑張っていたことがあんなふうに結果として見えるのいいよね。鏡音くんは特に頑張った一年だっただろうなぁ」

「それは……音無くんも、では……?」


 聖魔勇祭メインのステージがいよいよ幕を開ける。

 一年生から三年生までの、トップ4の登場。

 最初は一年生から。

 鏡音たちがステージの舞台袖で緊張感のある顔をして今か今かと覗き込んでいる。

 間もなく視界を務める『SAMURAI(サムライ)』メンバーたちが手を掲げて一年生のトップ4をステージに招く。

 一年生の四人がステージへ駆け上がる。

 その背中の、なんと頼もしいことだろう。


「音無くんも、頑張ったと思います……。い、一年……プロになるために……その、努力は、冬の陣の優勝で、その、それはもちろん、他のメンバーの方の、努力も伺えます、けれど……証明された……と、思うのです……」

「そうかな? ちゃんと実力になっているかな」

「も、もちろん! です……! すごく、上手くなっておられて……あの……とても去年、入学直後に、声が出なくなっていた方と同一人物、とは……思えない……です!」


 確かに。

 懐かしくなってしまった。


「ぼくは、あの頃の音無くんを……知ってるので……その……そこから、SBOの中で歌が上手かったり、ええと、他にも……」

「俺も。千景くんがデビューライブから上手かったの見てたよ」

「は、う」


 お互いに。

 ドルオタなので。

 東雲学院芸能科の、学生セミプロオタクなので。

 見てきた。


「来年も頑張るから、見ててね、千景くん。俺も見てるから」

「ひゃ、ひゃ、ひゃぁい」

「イチャイチャしないでもらえますかぁ?」


 ヒョコ、っと突然真ん中に入り込むように現れたのは魁星。

 千景を睨むように唇を尖らせてから、淳に顔を向ける。


「俺のことは?」

「え?」

「俺のことは?」


 拗ねてる。

 親に愛情を与えられずに生きてきた魁星にとって、甘えられる相手は限られているのだから仕方ない。

 つい、そんな子どもっぽい魁星を弟のように感じる。

 なんだかんだ長男なので、そういう感覚になってしまうのだろう。


「ちゃんと見てるよ。魁星のことも」

「本当〜?」

「うん。だってここ一年でモデルの仕事も増えたし、春日芸能事務所に所属も決まったじゃない。すごい成長だと思うよ? 自分ではそう思わないの?」

「それは……まあ……」

「でしょう? 来年はもっと忙しくなるよ、魁星は」


 それは間違いない。

 Repression(レプレッション)として、再来年の始動に向けて今年の淳ぐらい忙しくなる。

 あの二人をまとめるのは、下手したら淳よりも大変なのではないだろうか?

 なんだか思い出したらだんだん可哀想になってきた。

 まあ、だいぶ扱いは上手くなっているみたいだけれど。


「……そ……そう……だよね……」

「え? だ、大丈夫ですか……?」

「大丈夫、大丈夫。魁星、来年から事務所指導で忙しくなるから」

「そ、そうなのですね。えっと……が、頑張ってください……!」

「う……うん、頑張るぅ……。でも、頑張るためにもジュンジュンは俺のこと絶対見ててよ?」

「もちろん。俺は東雲学院芸能科のドルオタだからね!」

「ぼ、ぼくも……! ぼくも、お、応援、いたします……! 東雲学院芸能科の、オタクなので……!」


 胸を張るドルオタ。

 その様子に微妙な表情になる魁星。

 間もなく一年生のパフォーマンスが終わるので、とイベント会社のスタッフが声をかけてきた。

 さて、次は二年生の『トップ4』の出番。


「新座くん大丈夫?」

「だ、だいじょばない……夏の陣より緊張する……」

「なんで?」

「夏の陣の方がでかいイベントじゃん……?」

「いや! なんか! 夏の陣は先輩たちと一緒だったから……!」

「ああ、なるほど……」


 確かにここにいるのは同級生たちのみ。

 先輩たちと一緒にいる安心感は申し訳ないけれど、ない。


「大丈夫だよ。一ヶ月とはいえたくさん練習したし、リハも問題なかったし。今日失敗してもなにかあるわけじゃないし」

「そ、そうですよ……頑張りましょう……!」

「魔王軍メンバー押し退けてのランクインだもんねー。そりゃあ緊張するよねー」

「ひいい、や、やめてぇ……!」

「こら、魁星」



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― 新着の感想 ―
このイチャイチャわちゃわちゃ尊い…… いつまでも見ていたい、けどそろそろ終わりの時が来るんですね
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