表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソング・バッファー・オンライン~新人アイドルの日常~  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
6章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

517/553

エキシビションマッチ決着


「は、はあ、はあ……! せ、せっかくかけてもらった[異常状態耐性]が外れてしまった。っ……」

「はあ、はあ……ご、ごめんなさい……ううう……」

「大丈夫。しっかり。掴まって」

 

 岩の上に辿り着き、エギュンがソンに手を伸ばす。

 せっかくエンロイがベイトを買って出てくれたのに、主戦力と思っていた晶穂をキルできたのに、思わぬ伏兵に追い詰められている。

 歌バフは重ね掛けができるとは聞いていたが、重ね掛けに上限がないとは思わなかった。

 他のゲームとは決定的に違う、これがSBO。

 

「というか、あんなにバフの重ね掛けができるということは、歌える人、一人でボスと戦えるんじゃ……」

「わ、私歌ってみます! せっかく来たのに、このまま負けるの嫌!」

「ソンさん……」

 

 拳を握って決意を新たにするソンだが、唇は[凍え]によって紫色。

 全身が冷水に浸かったせいで、エギュンもガタガタ震えている。

 これではエイムもズレてしまう。

 まさか[凍え]がこんなにリアルなデバフだとは。

 

「いいですね。ソンさん、やりましょう」

「「ッ!!」」

「俺が所属している星光騎士団は騎士をモチーフにしたアイドルグループなので、こと戦闘においては手を抜かぬよう教えられているのです。本気で来ていただけるのは嬉しい。俺も、最後まで全力でやらせていただきますね」

 

 弓矢を向けたまま、大岩の上から声をかける。

 先ほどの威力を先ほどの速度で放たれたら、[鈍足]がついている今の二人には逃れられない。

 体が震えながらもエギュンが銃を構える。

 躊躇なく引き金を引くが、易々を顔を傾けられて回避された。

 体の震えによるエイムの乱れも関係あるが、回避力アップのバフもあってのもの。

 

「弓スキル 必中一矢(ひっちゅういっし)!」

「こっち!」

 

 ソンを掴んでエギュンが滝壺に再び飛び込むことで回避。

 隠れる場所は多いが、座り込んでいた状態から必中一矢(ひっちゅういっし)を避けるにはそれしかない。

 

「プレイヤースキル[魔寄せ付与]!」

 

 ここに来るまででに歌っといた歌デバフ[魔寄せ]発動。

 武器に付与し、エギュンたちが飛び込んだ池の中へ放つ。

 配信を見ていた人間は全員がハッとしたことだろう。

 そこは淳たちが『ホーム』に定めていた場所。

 仕掛けておいた罠が、その瞬間に発動する。

 

『ルルルルルル』

「あぎゃーーーーーーー」

「ぎゃーーーーーーー」

 

 悲鳴。

 それもそのはず、その滝壺の中には淳が呼び寄せ、バイソンがここまで誘導したデンキウナギが飛び出した。

 デンキウナギは三匹で一体の魔物という扱い。

 水中はそこそこのスピードで移動し、獲物と定めた二人を囲い込む。

 囲い込んだら次は放電。

 中ボス、フィールドボス、ダンジョンボスは攻撃が通ると一割程度の痛覚で痛みを感じる仕様。

 しかも放電は一定時間麻痺が付与されて、動けなくなる。

 冷水の中で[鈍足]と[凍え]も付与されているため、HPがただただ減っていくのを視認しながらもがくしかない。

 エギュンに至ってはそれにプラス[毒LV3]が付与されている。

 [毒LV3]は三秒ごとにHPがマイナス5。

 LV3の[毒]ならば約五分で自然回復可能だが、それにはあと三分以上ある。

 彼らがどの程度レベル上げをしたかはわからないが、[凍え]がある状態では長くは保つまい。

 さらにこの状況、ゲーム慣れしている人間でもパニックになって冷静な判断ができなくなってしまう。

 特に、中韓の人はあまり水泳を教わらないらしい。

 先程淳の一撃から逃れるために滝壺に落ちた時、いくら足が水底につくからと言っても水の抵抗を受けながら歩くのは非効率。

 水底を歩くということは、エギュンもソンも泳げない可能性が高いと判断した。

 “凍えにならないように、濡れないのが一番”と淳が始まる前から忠告していたことも相まって、二人とも滝壺の水の中に入ることは想定していなかったはず。

 それでもソンを連れて滝壺の中に逃げ込んだ判断は素晴らしいと思う。

 実際それしか逃れる方法はなかった。

 そして、そこまで追い詰めることが、最初から淳たちのチームの作戦。

 

「〜〜〜♪」


 追加バフを付与。

 [攻撃力上昇LV4][攻撃力上昇LV3][攻撃力上昇LV3][追加付与5]。

 矢をセット。弦を弾く。


「〜〜〜♪」


 きっと配信先では呆れ果てて沈黙が流れていそうだ。

 せいぜい司会や解説はなにか言っているだろうけれど。

 でもまだ終わらせるつもりはない。

 徹底的に、全力で。

 星光騎士団の団長なので、喧嘩には全能力を乗せて戦って、勝つ。

 なにより、これほど楽しく歌を届けられるのは、純粋に気持ちがいい。

 滝の音と混じり合う音と、歌声。

 荘厳な風景を眺めながら、心を込めて鎮魂歌を捧げよう。


「〜〜〜〜♪」


 [攻撃力上昇LV6][追加付与6]。

 弓矢が光り輝く。

 このダンジョンボスすら一撃で屠れるほどのバフ。

 それをデンキウナギと、デンキウナギに囲まれて麻痺している二人に向ける。


「最初に俺をキルしておくべきでしたね。でも、プロの皆さんとSBOで遊べてとても楽しかったです」


 弓スキル 必中一矢(ひっちゅういっし)

 せいぜい二番目に覚える弓の武器スキル。

 解き放たれたそれは、もはや上級の武器スキルレベルの威力。

 命中した瞬間、滝壺が大爆発でも起こしたかのように凄まじい水柱を立てた。

 ヴウウウウー、というプレイヤーキルの音が二つ、重なって聞こえる。

 直後、デンキウナギの討伐ウィンドウ。

 淳の横にバイソンがよじ登ってきた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【宣伝】
『不遇王子が冷酷復讐者の手を掴むまで』(BL、電子書籍)
5cl9kxv8hyj9brwwgc1lm2bv6p53_zyp_m8_ve_81rb.jpg
詳しくはヴィオラ文庫HPまで

『国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!』アンダルシュノベルズ様より発売中!
g8xe22irf6aa55l2h5r0gd492845_cp2_ku_ur_l5yq.jpg
詳しくはホームページへ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ