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ソング・バッファー・オンライン~新人アイドルの日常~  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
4章

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IG夏の陣、三日目(6)



「これって俺たちが敗退してたら俺たちの曲も用意していたんですかね……?」

「してたやろうなぁ……。朝科ちゃんたちの呆れ顔が目に浮かぶようやわ……。絶対許可とってへんやろ」

「い、いいんですかぁ? さすがに権利的にまずくない?」

「んー、そこは完全に学生セミプロ限定の特殊ルールが適応されとるな。学生セミプロはプロと違って規制が少しゆるく設定してあんねん。たとえばグループオリジナル曲に限定はされてへん。曲名公開とサブスク配信されとればOKの括りや。つまりセーフ。まして同じ学院のグループやし、側から見ると負けた級友の曲なんて言われたら応援したくなる心理やん? さすがこういう(こす)いことは石動ちゃんの右に出るもんおらへんなぁ……」


 ただそれをここで持ってくるというのがさすが勇士隊の石動上総、という話だ。

 学生にだけ許された特権を、ここぞというところで使ってきた。

 辞めるつもり、と言っていたので元々なりふり構わない戦法を取るつもりだったんだろう。

 朝科たちの嫌そうな顔が、宇月や後藤にも浮かんだ。

 同じことをされたら花崗たちも顔を歪ませる自信がある。

 まあ、さすがに魔王軍のメンバーほどのお色気は出せないようだけれど。

 

「色気が足りないですね」

「あ、ナッシーが復活した」

「でもアレはアレでいいー! 勇士隊のベストメンバーによる魔王軍のベストメンバーの時にしか歌われない曲を披露されるなんてIGのステージじゃなきゃあり得ないです! これはこれで超レア! しかもなんという完成度の高さ! まるで持ち歌と言われても初見は納得しますよ、これ! 勇士隊といえばやんちゃ坊主集団と定評があるのに!」

「やんちゃ坊主集団」

「定評あるんや」

「納得はする」

 

 後藤、花崗、宇月が淳の解説にツッコミを入れてしまう。

 これは仕方ない。

 

「そんなやんちゃ坊主集団がお色気担当の魔王軍の楽曲を完コピしたらこうなるという結果! それは意外にも色っぽい! さすがに色気までは完コピできないにしても、やんちゃ坊主集団の勇士隊の新たな一面が解き放たれている! すごい、好き!! 石動先輩と柴先輩かっこいいのにいつもの子どもっぽさがゼロ! いや、ギャップで言ったらいつもヒーローごっこ大好きを公言している蓮名先輩が一番ヤバい! なにあれ、別人!? 別人格!? 誰!? ずるい! 高埜先輩と苗村先輩は元々そういう色っぽいところがあったけど、完全開放されてる! すごい! あの人たちいつもふざけてるだけの集団じゃないんだ!」

「結構言いたい放題してるね、ナッシー」

「でも言ってることはようわかる。悲しいけど」

「ですね……」

 

 スタッフも若干困惑の顔で淳を見ている。

 さっきまで瀕死で倒れていたのに、急にめちゃくちゃ喋り出したらそりゃあそんな目で見られるだろう。

 そこに星光騎士団の新曲専用衣装に着替えた綾城が戻ってきた。

 結果はわからないが、少なくとも星光騎士団は決勝に駒を進めたので次は星光騎士団団長としてステージに立つのだ。

 

「……なんか淳くん、めちゃくちゃ喋ってるけどどうしたの?」

「あーーー……なんかオタクスイッチが完全にオンになりっぱなしみたいで」

「ああ、内容がわかると確かに~ってなるね」

「せやね」

 

 そりゃどうしたのってなるわ。

 

「ごめんね、先に決勝進出のインタビューが入るらしいんだ。特番用のインタビュー室に来てって頼まれているから、全員来てもらっていい?」

「あ、そうか。普通に休んどったけどそれもあったんやね」

「一年生だけは休ませてあげられないかなぁ、珀先輩。ナッシーとブサーは臨界点突破してるんだけどクオーはまだ回復してないみたいで休ませたいんだよね」

「ああ、そうだね。……あとちょっと今の淳ちゃんは公共の場に出していいのか怖いしね」

「「わかる」」

 

 花崗と宇月の強めの完全同意。

 これはこれで話題になりそうなのだが、いつもこのテンションだと誤解されるのはまずい。

 呼びに来たスタッフさん的には「面白いのでぜひ」と言われたのだが、二、三年は渋った。

 

「淳ちゃん、インタビュー、行ける?」

 

 仕方ないので綾城が本人に希望を確認することにした。

 まだ勇士隊の二曲目を見ていないのだが、仕事ならば仕方ない。

 

「え、あ、はい。行きます?」

「じゃあ魁星くんと周くん、こたちゃんひまりちゃんはそのまま休んで少しでも体力を回復していて。淳くんも無理しなくていいからね」

「え? 綾城先輩と宇月先輩と俺、ですか?」

 

 変な組み合わせだなぁ、と思ったら「団長と次期団長と団長候補の括りだよ」とにっこり微笑まれた。

 思わず宇月の方を見ると、「第二部隊の隊長なんだから当たり前でしょぉ」と腕を組んで見下された。

 実際は宇月の方が背が低いので、見上げられてはいるのだけれど。

 

「……き、気を引き締めます」

「さっきの感じでいてほしいみたいだから、聞かれたらたくさんアイドルについて語って大丈夫だって」

「え、じゃあたくさん喋ります」

(こいつ絶対倒れるじゃん……クオーにナッシーとブサーの二人のこと頼んでおかないと明日の一年生の仕事に支障出そう~……もぉ~……明日も仕事あるって忘れてるんじゃないのぉ。体力配分教えたつもりだったんだけどなあ~……)

 

 もしかしたら一番しっかりしているのは宇月かもしれない。






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