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追放された令嬢は塔を目指す  作者: 斎木リコ


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第四十七話 探索は順調です

 その後の探索も順調です。あれからも迷路にある行き止まりに置かれた箱からは、振れば宿った精霊の力ですさまじい切れ味を見せる精霊の短剣、姿が見えなくなる妖精の織った布、三十の術式が封じられていて使用者が意図した時に魔法が振るえる魔法の腕輪、投げれば必ず敵の急所に命中する投げナイフなどが出ました。


 三十三階、三十四階と進み、現在三十五階に到着しています。


「まさか、三十四階と三十五階の間の階段にも、大型の魔物が出るとは思いませんでした」

「そうね。しかも、大きな鳥……あの階段が大きかったのは、あの魔物の為だったのかしら」


 三十四階から三十五階へ上がる階段は、これまのでような大きめのらせん階段ではなく、テラスへと続く階段でした。


 そこに、大型の鳥が舞い降りたのです。まあ、やることはいつもと変わりありませんでしたが。


「まさか、あの鳥の魔物にもニカお嬢の竪琴が利くとはなあ」

「意外でしたね」

「物は試しでやってみたけど、うまくいって良かったわ」


 大型の魔物も、眠らせてしまえば怖くありません。後はカルさんが一気に切って終わりました。


 この大型の鳥が落としたのは、こぶし大の薔薇石と、羽根を模した金の胸飾り、それに小瓶に入った水薬です


 箱のように説明書きがないので、どんな効能があるのかはわかりません。これは後で協会に見てもらいましょう。


 ぐるりと両脇から半円を描くように上に上る石造りの階段を上り、テラスへと到着しました。目の前にはガラスの掃き出し窓。


 ガラス窓の向こうには、室内が見えますね。あそこが、三十五階なんでしょうか。


「まずは、行ってみましょう」


 それもそうですね。




 見上げる程の掃き出し窓を開けて室内に入ると、そこは居間のような部屋です。


 客人を迎える場所というよりは、家族がくつろぐ部屋といったところでしょうか。


 もちろん、部屋ですからここから違う場所に行く為の扉もあります。しかも二箇所。


「これ、どちらを開ければいいのでしょうか?」

「どっちも同じ所に通じてるんじゃねえの?」

「その場合もありますけれど……」

「二つある以上、別々の場所に通じている事も念頭に置いておいた方がいいわ」

「ここに入る時ニカお嬢も言っていたが、行ってみればいいんだよ。何なら、ベーサお嬢の使い魔を飛ばしてさ」

「あ」


 その手がありました。


 早速、両方の扉を開けて向こうを覗いてみます。……どちらも別の場所に通じてますね。しかも、扉の向こうは部屋などではなく、またしても庭園です。


 しかも、庭園の端に出るのではなく、左右に広がっているのです。本当に、迷宮というのはおかしな場所ですよ。


 どちらの庭園にも、使い魔を飛ばしてみました。後は地図がどう出来上がるかですね。


 念の為、扉ごとに地図を作成するようにしました。


「では、出来上がるまで休憩していましょうか」

「そうですね」


 室内なので、テーブルと椅子、それに飲み物と食事を出しておきます。少し考えて、テラスに天幕も出しました。入浴その他の為です。


 ここまで歩き続けでしたから、食事の前に入浴を薦めておきました。今はニカ様とカルさんがそれぞれ別の天幕で入浴中ですよ。


「はあ……」


 一人になると、あれこれ考えてしまうのは悪い癖です。とうとう、迷宮も三十五階まできました。


 文献にあったという水場は、一体何階にあるんでしょう。そして、その水は本当にサヌザンドの王宮を元に戻してくれるのでしょうか。


 もし、解呪の水が見つからなかったら。もし、見つかった解呪の水が魅了の力を解除出来なかったら。


 考えてもどうしようもない事ばかり、頭を巡ってしまいます。いけないいけない。悪い事ばかり考えていては、本当になってしまうと母が言っていました。だからいい事だけを考えていなさいって。


 お母様……お元気でいらっしゃるかしら。


「ああ、気持ちよかった。ベーサ、先にお湯をありがとう」

「いいえ、どういたしまして。では、私も失礼して汚れを落としてきます」

「ええ」


 ダメだったらどうしよう、と考えるより、成功した後の事を考えましょう。


 王宮が正常に戻って、お父様の冤罪を晴らして、それで……


 それから、私はどうすればいいのかしら。




 休憩中にも、地図は出来上がっていきます。三十五階はまたかなり広い階層ですね。


 上に行けば行く程広くなるなんて……


「こりゃ、使い魔がいなければ地図を作るだけで一苦労しそうだな」

「本当にね」


 カルさんとニカ様も、描かれている途中の地図を眺めながら眉をひそめます。


 確かに、二十一階以上は魔法が使えないと、かなり厳しいですね。確か、大きな組には魔法を使う人もいると聞きましたが、どの程度の腕前なのでしょう。少し気になります。


 もっとも、魔法は工夫次第で使い方が広がると言われていますから、例え魔力の少ない人でも油断は出来ません。いえ、直接戦う訳ではないのですけど。


 三十五階にも、迷宮はあるようです。行き止まりに箱の印が出ました。今度は何が入っているんでしょう。

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