第40話(2)
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九月に入り、数日が過ぎた頃、亜矢から電話がかかってきた。
いつも通り、指定された場所へ行き、金を渡すと、宗介は祐介に会わせるように言った。今日こそ、頷かせようと思った。一日でも早く祐介を引き取るために。亜矢は相変わらず何も言わない。宗介は帰ろうとする亜矢の手を取った。
「頼むから、一度会わせてくれないか」
亜矢は何も答えず、黙って宗介の顔を睨み付けた。宗介の目を覗き込み、何かを疑うかのようにしみじみと見る。宗介は若干、戸惑いはしたが、もう一度「頼む」と言った。
「ねえ」
亜矢は先ほどと打って変わって、猫なで声で宗介に話しかけた。
「あなた、本当は既に祐介に会ってたりしない?」
宗介は内心ドキリとしたが、何を言っているんだと言わんばかりに首を横に振り、顔を顰め「居場所も分からないのに、どうやって会うんだ」と溜め息混じりに言った。
亜矢は蛇のような絡みつく瞳を宗介に向けていたが、宗介の言葉を信じたのか、目を逸らし「そう」と言ったきり、それ以上は何も言わなかった。
「頼むから、会わせてくれ。亜矢」
亜矢は宗介の手を振り払い、再び睨み付けた。
「駄目よ」
「なぜ」
「連れて行かれたら困るわ。私が暮らしていけない」
「働けばいいだろう」
しつこく食い下がる宗介に、亜矢は訝しげな表情を見せた。
「何なのよ。私がどう生きようと勝手でしょう?だいたい、私を捜してただなんて偉そうに言っていたけど、本気で私を捜そうとしたの?たいして離れた場所でもないところに私は居た。なのに、見つからなかった。本当は、あなたが父親に頼んで私と別れさせたんじゃないの?」
「違う!」
「父親なんか嫌いだとか言って、結局、その父親の背中追いかけて精神科医やって、今でも変わらず、父親の言いなり」
「……」
何も言い返せなかった。亜矢の言うとおりだった。何も答えない宗介に、亜矢は鼻で笑った。
「あなた今、幸せなんでしょう?だったら、私の幸せ、奪わないでよ」
そう言うと、亜矢は立ち去った。
宗介は亜矢を追うことが出来なかった。その場に立ち尽くし、亜矢の後ろ姿が小さくなるまで、その背中を睨み付けるように眺めていた。
その月、宗介は会社に頼み込んで今まで使っていなかった有給を全て使い、一ヶ月の休みを取った。
なるべく、祐介との時間を過ごしたかったのだ。
児童相談所に匿名で連絡をし、虐待を受けてることを通報しようかなど考えた。しかし、勘の鋭い亜矢のことだ。すぐに宗介だと分かれば、祐介がどうなるか分からない。祐介を自分の元に引き取るためには、やはり亜矢と正面から話し合わなくてはいけないと思った。
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