第37話(2)
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
「ここなら、誰にも聞かれずに済むでしょう」
要の声が聞こえた。
「誰かに聞かれたら、不味い話しなのかな?」
養父である宗介の声が聞こえてきた。笑いが含まれた声で、祐介は宗介が今どんな顔で話をしているのか想像がついた。
「俺と言うより、二戸神さん、あなたが困ると思って」
要がどんな顔をしているのか、想像がつかなかったが、要の言葉に宗介が動揺したような感じは分かった。
穏やかな口調で、一見、いつも通りではあるが、何かを誤魔化すような笑いの混じった声に、祐介は目を閉じて、耳を澄ませた。
「私が?それは、一体どんな話しだろう」
要は、肩に掛けていたバックパックの中から一枚の写真を取り出し、「これを見てください」と、宗介に手渡した。
小さな公園が映っていた。特別変わったところは何もない。ただの風景写真だ。
宗介は写真を手に取り眺めると、微かに目を見張ったが、すぐに平静を装い、「これが、どうかしたのかな」と静かな声で訊ねた。
要は小さく頷くと、「風景に、見覚えはありませんか?」と声を落として言った。
宗介は、再び写真に目を落とした。小首を傾げ、じっくりと眺める。その顔は僅かだが、硬直している。
「さあ、どこかな」
興味の無さそうな抑揚の無い声で、要に写真を返した。
要は写真を受け取りながら、宗介の強張る顔を見つめ、静かに言った。
「信じられないと思いますが、俺は、人に触れると、その人の過去の記憶を見ることが出来るんです」
その言葉に、宗介は要を一瞥した。
「この間、あなたの肩に触れたことで、俺はあなたの過去を見ました。俺が見たヴィジョンの中に、よく知った風景があった。おじさんの肩から手を放す寸前に見たもの」
要は手元に、写真に目を落とした。
「以前、この公園の近くに、祖父の家があったんです。子供の頃、祖父の家に行く度、俺はここで遊んでいました。ヴィジョンが見えたのはほんの一瞬でしたが、俺にはどの場所かすぐに分かりました。この写真の公園は、最近のものです。遊具の色は変わりましたが、それ以外は昔と何一つ変わっていません」
冷静を保とうとしているのか、宗介は鼻から深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。
弱々しい擦れた声が漏れてきた。要は目を上げて宗介を見る。
「その……君がみたという、ヴィジョンとやらは……。どういった、ことだろうか……」
唇が震え、思うように言葉を発せない。喉を潤そうと、宗介はごくりと唾を飲み込もうとしたが、その唾すら、殆ど口の中にはなかった。
遠くの方で、夕方の時刻を知らせる「夕焼け小焼け」の音楽が微かに聞こえてきた。
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