第37話(1)
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改札を出ると、突然、後ろから声をかけられた。
振り向くと、目の前に見覚えのある青年が立っていた。
「きみは……」
青年は会釈をすると、「こんにちは」と澄んだ声を出した。
「藤森くん、だったね?」
要はこくりと頷いた。
「この間は、大丈夫だったかい?心配したんだよ。突然、倒れ込んだから」
要は、「もう、大丈夫です」と静かに言うと、うっすらと微笑んだ。
「出掛けていたのかな?今から帰るのかい?」
宗介は祐介によく似た穏やかな口調で言った。要は俯いたまま首を小さく横に振る。
「二戸神さんを、待っていたんです」
宗介は心底驚いたように目を見開き「私を?」と、自分を指さし、要は顔を上げ、真っ直ぐ宗介を見た。
「はい。お話ししたいことがあるんです。祐介のことで。少し、お付き合いいただけませんか?」
*******
スマホで時間を確認し、再びジーンズのポケットにしまう。
祐介は、駅から少し離れた高台にある公園へ来ていた。
今朝、二週間ぶりに要から電話がかかってきた。家の前に居ると言われ外に出ると、要が青白い顔で立っていた。
二週間ぶりに会う要は、明らかに睡眠が足りていなそうな充血した目に、目の下には濃い隈を作っていた。食事もまともに取っていないのだろ、頬は痩け、元々線の細い要の身体は、益々細く見えた。
祐介の心配もよそに、要は突然本題に入った。
「祐介。お前は本当に自分の過去、知りたいんだな?」
確認を取るように訊ねた。深刻な表情を寄せる要に、祐介は真剣な眼差しを向け、「ああ」と短く答える。
要は祐介を説得するように、遠回しながらも「知らない方が良い」と、何度も警告した。
祐介は要の不器用さに、小さく笑う。
「要は、嘘が嫌いなんだね。父さんからは、何も見えなかったと言えばいいのに」
そう言うと、要は僅かに苦笑をして首を横に振った。
「あれだけ大胆に叫んじゃって、しかもこの二週間、お前から何度も連絡があったのに、俺は連絡取らなかったんだぜ?それで、何も見えなかった、何も分からなかったよ、なんて、お前に通用しないだろう」
「そうだね」
祐介は、眉を寄せ微笑む。
要は再び真剣な顔つきで祐介を見た。
「どんな答えが出ても、後悔しないな?」
「うん」
「辛い答えになる。覚悟しておけよ」
「事件が事件だ。辛くない答えだとは思ってないよ。それに、要に頼んだときから、覚悟は出来てる」
「そうか……」
要は小さく顎を引くと、「それじゃあ、頼みたいことがある」と言って、祐介に幾つか指示をした。
祐介はその指示に従い、今、公園で要と養父が来るのを待ってるのだ。
祐介はふと周りを見回した。ケヤキの木とツツジが植わっており、ベンチが幾つかあるだけで、他には何もない。小さな噴水が設置されていたが、水は出ておらず、苔だらけでけっして綺麗ではない。公園というより、散歩コースのような場所だ。蛇行した煉瓦の道が、公園の隣にある文化ホールへ続いている。今日は何の公演もないのだろう、人気がなく、静かだ。
見放し台の様に、一カ所開けた場所がある。そこから、街を見下ろすことが出来た。そこが、要に指定された場所だ。公園内の街灯が、端から一つずつ明かりを灯しだした。祐介の立つ、見放し台にある街灯にも、明かりがついた。じぃっと、電気が流れる音が聞こえ始める。
祐介は、柵の近くへ寄り、街を見下ろした。空は夕焼け色に染まり、高台から見下ろす街中の風景は、まるでミニチュア模型の様にも見えた。そろそろ要が宗介と会って、こちらに向かって来ている頃だ。
ふと、複数の足音が聞こえてきた。
祐介は慌ててツツジの垣根へ身を隠した。
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