第36話(2)
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
「カナちゃん」
名前を呼ばれ、要は重い頭をゆっくりと持ち上げた。
歌穂は、手に持った分厚い本を要の前に置くと、開いたページの一か所を指差した。
要はその記事を読んだ。
「これだ……。日付は……」
二人が見ていた本は、過去の新聞記事だ。
「歌穂。この年代の同じ日付、ほかの新聞でもあるだろうか」
「たぶん」
そう言うと、二人はほかの記事を探した。
要が塾講師を殴ってから、歌穂が奴と会っているかどうかは、要には分からなかった。聞く気もなければ、知りたくもない。ただ、あの日以来、要は歌穂を連れ出し、図書館やCDショップを歩き回った。
だから、少なくとも、この数日間は会っていないはずだ。
歌穂は何も言わず、何かを詮索するでもなく、要の「調べ事」を手伝った。
要は最後の記事を読み終えると、深く息を吐き出した。
「これで、繋がった……」
歌穂は黙って小さく笑みを浮かべる。
「もう、大丈夫なの?」
「うん。ありがとな、歌穂」
その言葉に、歌穂は小さく首を横に振る。
「約束、守ってよね?」
そう言って、小首を傾げ、何もつけていなくとも艶のある赤い唇が、そっと口角を上げる。要は一瞬、その笑みに見とれたが、すぐに目を逸らし「もちろん」と返事をした。
自分の手を見つめる。白い手袋の指先は、埃をかぶった本を何冊も手に取っていたせいか、随分と汚れていた。その指先を、じっと睨み付ける。
そして、これから自分が起こす行動を、頭の中でシミュレーションを始めた。
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