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【完結】Memory lane 記憶の旅  作者: 星野木 佐ノ


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第33話(1)

いつも読んで頂き、ありがとうございます。





 誰も居ない、真っ暗な部屋の電気を付けると、ダイニングテーブルの上に、ラップのかかった皿が置いてあった。まだ、出来上がってからさほど時間が掛かっていないようで、ラップは乳白色に曇っているだけで、大粒の雫は付いていない。

 テーブルの上には、良く見慣れた文字のメモが置かれていた。文字は二種類。一つは、母親のもの。もう一つは、歌穂のものだった。



「おかえりなさい。今日は、調子が良かったので、ご飯を作りに来ました。歌穂ちゃんにも手伝ってもらったのよ。冷蔵庫に、他の総菜を作って入れてあるので、食べきれなかったら明日にでも食べてください。   母」


「カナちゃん、おかえり。お鍋に、ミネストローネが入ってます。温めて食べてね。また来ます。 歌穂」



 要はメモを読むと、ラップを外した。魚介類のピラフとスペインオムレツ。冷蔵庫の中には鯛のカルパッチョ、グリーンサラダ、洋梨のタルトが入っていた。

 どこかのランチメニューコースのようだと思った。女子はこういった洒落たものが好きだ。だが、育ち盛りの男子としては、見た目だけで何か物足りなさを感じた。ピラフもサラダも、皿に盛ってある量としては申し分ないのだが、何か腹に溜まらなそうな気がした。それでも、こうして食事の用意がされていることは、有り難いことだと思った。

 要は着替えと手洗いを済ませると、台所へ行きスープの入った鍋に火をかけた。まだ多少温かかったため、すぐにぐつぐつと気泡が浮かび上がる。

 どれもとても美味しかった。物足りないだろうと思っていたが、ジャガイモがたくさん入ったスペインオムレツが、意外と腹にどっしりと収まった。

 食べ終わり、食器を片付けていると、ふと心に影が差した。もう少し早く帰ってきていたら、母親と鉢合わせたかも知れない。母親は、どんな思いで遅い時間までこの部屋にいて、どんな思いで料理を作っていたのだろう。自分が帰ってくるかも知れないと、分かっていて、六時過ぎまで居たのだろうか。それとも、歌穂と料理をすることで、時間を忘れてしまっていたのだろうか。大抵は三時頃に来て、五時前には帰っていると聞いている。それもあって、どんなに暇な日でも、要は五時以降に家路についた。今日はたまたま、祐介の家で長居をしてしまったこともあり、帰宅が七時を回っていた。

 洗った布巾を干し、寝室へ向かう。

 ベッドに腰を下ろすと、頭の中は母親のことから祐介のことに切り替わった。

 手袋を着けていない自分の手を見つめる。傷一つ無い、母親に似た長い指。形の整った爪。自分の力を、誰かのために使おうと思ったのは、今回が初めてだ。人の過去を見るのは、色々な意味で辛くなる。精神的なストレスも溜まる。それでも、祐介に頼まれて断らなかった事に、当初は自分自身、驚いた。今までだったらどうだろう、頼んだのが他の人間だったら、どう答えただろう。

 きっと、どれも断っただろう。

 祐介だから、断らなかった。





最後まで読んで頂き、ありがとうございます!


同時進行でbooks & cafeが舞台の現代恋愛小説

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