表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】Memory lane 記憶の旅  作者: 星野木 佐ノ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/113

第28話

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

いつもより少し長いですが、1話そのまま載せます。

よろしくお願いします。


 要達はデパートを出ると、どこへ行くときめもせず、なんとなく左の通りへと歩き出した。

 祐介は記憶の糸をたどろうとしているのか、真剣な表情で俯き、終始黙ったきりだった。

 要はふと、反対側の通りに目を向けた。その瞳の先に映ったのは、歌穂の姿だった。隣を、この間のヴィジョンで見た男が歩いている。腕を組んで、笑いながら要が行く方向とは違う方角へ歩いて行く。

 要は歩みを止め、その姿を目で追った。


「要?」


 少し先を歩いていた祐介が、ぼんやりした表情のまま振り向き、声をかけてきた。

 要は祐介に顔を向けると、生唾を飲み込み「祐介、ごめん。俺、ちょっと用事思い出した」と言った。

 なぜか声が上ずっている。

 祐介は特別何も聞くこともなく「わかった、じゃあ。今日はありがとう」と言って手を軽く上げると、前を向き歩き出した。

 要は「ああ、またな」と祐介の背中に向かって言うと、祐介とは反対方向へ走りだした。

 歌穂の姿が見当たらない。

 スクランブル交差点へ来ると、人ごみの中に歌穂を見つけた。

 要は見失わないように凝視する。歌穂達が待っている信号が青に変わり歩き出した。要は自分が待っている信号を睨みつけた。やっと青に変わると、走って歌穂を追った。





 歌穂達は映画館に入って行った。幸い、今流行りの大型映画館ではなく、二種類の映画しか上映していない小さな映画館だった。歌穂好みを考えればいい話だ。こちらに違いないと思ったチケットを一枚購入すると、要は静かに隠れるように映画館へ足を踏み入れた。

 ポップコーンや飲み物を買っている二人の姿を見つけ、要は足早にトイレに逃げ込むように入った。

 映画上映時間ぎりぎりまでホールでチラシなどを見て過ごし、館内が暗くなってから中に入って行った。

 身を低くして、横目で歌穂を捜す。場内にはそれなりに客が居て、二人は真ん中辺りの席に座っていた。

 ビンゴ、と心の中で呟くと、要は歌穂たちの席から少し離れた斜め後ろの開いている席に、静かに腰を下ろした。身体を椅子に深く沈め、静かに二人を見る。

 映画本編が始まると、いかにも歌穂が好きそうな映画だと思いながら、襲ってくる眠気と戦いながらも、要は目を開いて映画と、二人を見ていた。

 映画が終わると、要は益々身を隠す様に身体を低くし、歌穂達が出て行くのを見て、席を立った。


「何をやってんだろ、俺は……」


 そう、小さく呟くと、なんだかとても惨めに感じた。それでも、足は歌穂達の後を追い続けた。

 カフェに入り、歌穂の好きそうな店を練り歩く。そして、二人は細い通りへ入っていた。

 要はその通りの前で足をとめた。


「本当に俺は……なにやってんだよ……」


 ぼんやりと二人の後姿を眺める。建物の中に入っていく歌穂の後姿を見るか見ないかで、要は踵を返し、来た道を足早に歩き、その場から離れた。

 二人が入っていったのは、ホテルが犇めく通り。

 歌穂の腕を掴んで、止めるべきだっただろうか、そんな考えが頭をかすめる。だが、塾講師と一緒にいた歌穂の笑顔を思い出すと、小さく唇をかんだ。

 自分の知らない歌穂がそこには居た。見たことのない、はにかむ笑顔や、童心に返ったかのように嬉しそうに手をたたく姿。自分はそんな顔を歌穂にさせた事は一度もない。そう考えると、何もできない自分に虚しさを感じた。





最後まで読んで頂き、ありがとうございます!


同時進行でbooks & cafeが舞台の現代恋愛小説

『光の或る方へ』更新中!

https://book1.adouzi.eu.org/n0998hv/




「続きが気になる」という方はブックマークや☆など今後の励みになりますので、応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ