第25話(3)
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「……ある夢をよく見るんだ。その夢を見る度、事件当時を思い出したんではないだろうかって思って、養父に話してた。でも、話しをした後は、必ずその夢を見ていたことすら忘れて居るんだ。夢は、はじめは覚えていても、所詮、ただの夢だから忘れるんだって、前に養父に言われたことがある」
「なら、どうして、よく見る夢だって分かるんだ?」
要は静かに訊いた。
「その夢を見ると、思い出すんだ。これ、前にも見たなって。その夢を見たときに、そう言えば、前に養父に話したなって思い出す。またあの夢を見たんだって話すと、養父は決まって言うことがある。子供頃、僕が刑事に殺害現場の話しを聞かされたから、それで勝手に記憶を作り出しているのかも知れないって。その後、僕はそうかって思って。気がついたら、その夢を見たことを忘れてる。それで、この間またその夢を見たんだ。だから、今度は養父に言わないでいたらどうだろうと思って黙っていたら、今でも良く覚えてる。僕にとっては、ものすごく怖い夢なんだ」
「血の海の中に自分が立っている夢、か?」
要の言葉に、祐介は目を見開いて顔を上げた。血の気の引いたその顔は、恐怖と困惑が入り混じっている。そういう顔を、要は見慣れていた。心の中で落胆する。やはり、祐介も駄目か、と。
「僕、要に触っちゃったこと、あったっけ?」
「へ?」
予想もしていなかった質問に、要は声を裏返して聞き返した。
「君に触るなって言われていたから、触れないように気をつけていたんだけど」
要は、青白い顔をした祐介の顔を、拍子抜けしたように、ぽかんと口を開けて見つめた。
「いつの間に触れてたんだろう。ごめん」
「え……。いや」
頭を下げる祐介に、要は戸惑いながら「大丈夫だから」と答えた。何が大丈夫なのか、自分の言葉にも首を傾げた。いつだろうか、と考え始めた祐介に、要は宮崎たちに襲われたときだと答えた。
「そうか!僕、必死で。君の腕掴んだんだっけ。ごめんな、本当」
要は口元に手を当てて噴き出した。祐介は眉を顰め、首を傾げる。
「ごめん。笑い事じゃないのは分かってるんだけど、何だか可笑しくて」そう言うと、要は咳払いをして、祐介を見た。
「それで。俺にどうして欲しいんだ?」
祐介は神妙な面持ちで、要を正面から見た。
「僕の過去を、見て欲しいんだ」
遠くで、犬が一斉に鳴き始めた。
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