第24話(3)
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「俺は、他人に触れることで、その人の過去を見ることが出来る」
要は静かに目を閉じた。祐介を見ることが出来なかった。どんな顔をしているのかと思うだけで、怖かった。耳も塞ごうかと思った。祐介の疑いの、心の声が聞こえてこないように。だが、祐介の心の声はいつもと変わらず、何も聞こえては来なかった。変わりに聞こえてきたのは、ペットショップから出てきた店員が、何かに対し、とても腹を立てている心の声だけ。要は瞑っていた目を、微かに開いた。
隣りに座る祐介から、「なるほど」と、呟くような声が聞こえた。
「だから、潔癖性の振りをしたのか。潔癖性だと印象付ければ、無闇に人が要に触れることは少なくなるからね。なるほど」
祐介の声は静かで、誰に話している風でもなく、独り言のようにも聞こえた。
「潔癖性より、厄介な体質だったんだね」
「信じて、くれるのか?」
要は目を開いて僅かに祐介に顔を向けた。要の視界には、祐介の靴が目に入った。コンバースの黒い靴は、履き慣らされボロボロだ。
「うん。信じるよ」
要は顔を上げて祐介を見た。祐介はにっこりと口角をあげると、両腕を頭上に上げ、微かに呻き声を上げながら背中を反らし、ベンチから立ち上がると、フェンスに近寄り街を見下ろす。
「僕はあまり人の噂とか信じないんだ。自分で触れて、会話して。自分の感じたものを信じるようにしてる」
ペットショップから犬が吠える声が聞こえる。一匹が騒ぎ出すと、何匹かが一斉に吠えだした。暫くすると、その声も収まった。
「でも、一つだけ。要の噂の中で、気になっていた噂があった。誰にも言っていないような秘密を、要は知っているっていう噂」
祐介は要の目の前に立ち、静かな声で言った。
「ヤクザと繋がってる、なんてくだらない噂もあったけど、そんなことで、人の秘密なんか分かる訳がない。ヤクザだってそんな暇じゃないだろう。ただの高校生の日常生活を一人一人見てる訳がない。そう思うだろ?」
話を振られた要は口の中で「そうだな」と呟くように返事をした。
「そんな何の信憑性も無い噂より、僕は子供の頃に見たTV番組を思い出した。もし、要があの子であるなら、君は人の心が読めるんじゃないかって」
要は何も言えず、目の前に立つ祐介を見上げた。逆光で祐介の表情はよく見えない。自分がどんな顔をしているのかすら、分からない。
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