第22話(1)
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数日後の期末試験に向けて、祐介は苦手な数学と睨み合いをしていた。なかなか思うように解けない計算に、半ばうんざりとしながら、やっと答えを出すことが出来ると、奇声に近い声を上げ、ペンを勉強机に投げ出す。すると、部屋のドアをノック音がし、養父の宗介が顔をのぞかせた。
「祐介、電話だぞ」
祐介は椅子の背もたれに寄りかかり、頭を後ろに反らせた態勢のまま「誰から?」と、怠そうな声を出した。
「フジモリとかいう、男から」
宗介の言葉に、祐介は勢い良く身体を起こし、養父から固定電話の子機を受け取った。
「もしもし?」
「あ、もしもし、祐介?オレ、オレ」
受話器から、妙に明るい声が聞こえてきた。まだ鼻声ではあるが、先日の不機嫌さは何だったのかと思わせるほど、機嫌の良い声だ。
祐介はにやりと口角をあげると「どちらのオレ様で?」と気取った声で聞き返す。
「ひっでえな、わかってんだろ」とぼやいたが、名乗ろうとはしなかった。祐介は続けて言った。
「ああ、詐欺師さん?」
「ひっど!なんだよ、詐欺師って。詐欺師じゃねえよ」
電話の向こうで喚く声に、祐介は堪えきれずに笑った。口を尖らせ怒る要の顔が浮かんだのだ。普段、教室では見せることのない要のもう一つの顔だ。
「オレオレ、なんて、ちょっと前まで流行ってた詐欺師の台詞じゃないか」
「藤森だよ。ちゃんとおじさんに名乗ったよ」
「はいはい、分かってるよ。で、どうしたの?急に電話してくるなんて」
祐介は笑いながら要をあしらい、用件を聞く。
「祐介、今日何か用事ある?」
「ううん。特別に何も」
「じゃあ、暇ってことだな。良かった」
要は安心したように、ひゅう、と口笛とも言葉ともつかない音を漏らすと、「ところでさ、」と、明るい声で言葉を続ける。
「今、オレ様が何処にいるか、お分かり?」
突然の質問に、祐介は「へ?」と素っ頓狂な声を出した。と、同時に、玄関のチャイムが家の中に響いた。まさか、と呟きながら、祐介は子機を持ったまま勢い良く玄関へ走りドアを開けた。
木戸の向こうにスマホを耳に当て、満面な笑みを浮かべて手を振っている要が立っている。
「よっ」
祐介は声の出し方を忘れたかのように、口をパクパクと動かし、要の笑顔を見つめた。
要はスマホを切ると、おどけるように両肩を軽く持ち上げた。
「ど、どうしたの?」
「遊びに来たんだ」
その言葉に、祐介は徐々に頬を緩め、そして、いつもの笑みを浮かべ「いらっしゃい」と要を迎え入れた。
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