第19話(2)
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さり気なく辺りに目を向ける。
何もない部屋だった。まるでモデルルームのようだ。必要最低限の物が揃っているだけで、生活臭を感じないリビング。綺麗なカウンターキッチン。家族全員、潔癖性なのだろうか、と祐介は思っていた。目に見えるところに物を置きたがらない、そういう家族なのだろう。自分の家とは大違いだった。決して、自分の家が汚いという事ではない。養母は掃除好きで、いつでも綺麗にしてくれていた。花を飾る事が好きで、玄関やリビングには何かしら季節の花が生けられていた。その脇には、必ず家族写真が置かれている。毎年春になると写真館へ行き、家族写真を撮るのだ。その写真が一年ずつ増え、今ではリビングにあるキャビネットの上には、重なるように写真立てが置かれている。
「悪いね、待たせて」
要がラグマットの上に胡座をかいて座ると、軽く咳をし、鼻を啜った。
「まだ悪そうだね。薬飲んでるの?」
祐介は心配そうに顔を曇らせ、手に持っていたプリントの束を差し出した。
「うん。飲んでる。これでも熱下がってよくなってる方なんだ」
テーブルの下に置いてあるティッシュを取ると、鼻をかんだ。
「この時期に風邪引くって、珍しいよね」
「いやあ、さすがに。髪も乾かさず、ろくに服も着ないで窓開けたまま寝ると、風邪引くね。この時期でも」
「それじゃあ、風邪引くね。昼間は暑くても、夜はまだ風が冷たいし」
祐介は要が広げてみているプリントを指さして説明を始めた。
「こっちが、各教科で配られたプリントで、こっちが僕のノートのコピー。テストに出るところ、赤線でチェック入れ直してあるから、見ておいて」
プリントを一枚一枚ゆっくり捲りながら、「わかった」と要は返事をした。祐介のノートのコピーにざっと目を通し終え、顔を上げて「ありがとう」と礼を言うと、祐介はいつもの笑顔を見せ、「どういたしまして」と頭を軽く下げた。
湯が沸ける音がして、要は台所へ向かった。
「綺麗な部屋だね」
ソファに座ったまま、祐介が言った。要は黙ったまま紅茶を淹れた。ティーパックを捨て、マグカップを二つ持って、再びラグの上に座る。
「ありがとう」
祐介はマグカップを受け取ると、少しだけ口を付けた。
「よく、家が分かったな」
要はマグカップの絵柄をぼんやりと見つめながら言った。
「佐伯さんに聞いたんだよ。最初、堀田とかに聞いたんだけど、知らないって言われて。ふと、佐伯さんを思い出したんだ。そう言えば、幼なじみって言ってたよなあって」
歌穂の名前を聞いて、要の心臓はどくりと大きな音を立てた。要は顔を上げずに、ぶっきらぼうな口調で「なんで堀田とか佐伯なんだよ」と訊ねる。
「先生に聞こうとか思わなかったのかよ」
「あ、それ、佐伯さんにも言われた」と言うと、祐介は苦笑した。
「全然思いもしなかったんだよ。なぜか。堀田は一年の時、同じクラスだったんだろ?だから知ってるかなって思ってさ」
「一年で同じクラスだとなんで知ってるって思うんだよ」
「だって、堀田とは普通に話ししてるだろ。堀田も、藤森は良い奴だって、前に言ってたし。要を助けに行くときだって、率先して来てくれたし。仲良いんだなって、ずっと思ってたから」
要は目だけを上げて祐介を見た。
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