第18話(2)
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
しばらくしてメモを持って戻ってきて、祐介にそれを渡す。手渡されたメモに視線を落とすと、羊のイラストがプリントされた可愛らしいメモ用紙に、綺麗で読みやすい文字が並んでいた。裏を返すと、簡単な地図と道順が書かれている。
「ありがとう。助かるよ」
「先生に聞こうとは、思わなかったの?」
意地悪さは一切感じない口調で歌穂は言った。祐介はくりっとした瞳を歌穂に向ける。光りの当たり具合からか、祐介の瞳はチャコールグレーに見える。
「先生に聞けば、一番早かったと思うけど?」
歌穂の言葉に、祐介は「そうか」と納得するように頷いた。
「その選択肢をすっかり忘れていたよ」
そう言って気持ちのよい笑い声を上げる。その声は、とても心地のよい響きを持っていて、要が彼を気に入るのも分かる気がした。
「今日の放課後にでも、行ってみるよ。あ、よかったら、佐伯さんも一緒に行かない?」
祐介の突然の申し出に、歌穂は驚いた顔をして見せた。
「え?私……私は今日、塾があるのよ」
「そうか」
「ごめんね」
「いや、いいよ。これ、ありがとう。じゃあ」
にこやかな表情で手を振って立ち去ろうとしている祐介の腕を、歌穂は咄嗟に捕まえた。
大きな瞳を益々大きく見開いた祐介は、歌穂の顔と掴まれた自分の腕に、何度も目を往復させている。歌穂は何故、掴んでしまったのか自分でも分からなかった。「ごめん」と言いながら祐介の腕を、そっと放す。
「あ、あの」
黙ったまま、真っ直ぐ澄んだ瞳を歌穂に向けている祐介の瞳を、歌穂は目を逸らさずに見返した。
「これからも、カナちゃんと仲良くしてね。カナちゃんを、よろしくね」
その言葉を聞いた祐介は、小さく噴き出した。歌穂は笑いもせず、真剣な眼差しで祐介を見つめている。祐介は笑いを抑えながら「なんだか」と、言い軽く咳払いをした。
「佐伯さん、お母さんみたい」
「え?」
その言葉に、歌穂は顔が熱くなるのを感じた。
「うん。大丈夫だよ」
祐介は笑顔で軽く答えたが、歌穂は首を横に振った。
「どんなことがあっても。この先もずっと」
その顔は真剣だった。頬は赤く染まってはいたが、恥ずかしさからではない、どこか必死にも見て取れた。祐介は笑顔を消して歌穂を見つめた。
返事を聞くまで目を離さない、とでも言うかのように、歌穂は潤んだ瞳で祐介を見つめている。祐介は彼女の思いを察したかのように、目を細め、ゆっくり深く一度頷くと、「大丈夫」と静かに答えた。
「僕は、要の友達だから」
落ち着いた祐介の声は、歌穂の心に暖かく静かに響いた。歌穂は小さく微笑むと、祐介に向けていた瞳を、ゆっくりと閉じた。
「じゃあ」
祐介は軽く手を挙げ、その場を去っていく。背筋を真っ直ぐに伸ばし、どこか優雅に歩く祐介の後ろ姿を、見えなくなるまで歌穂は見続けた。
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