第18話(1)
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もう間もなく期末試験が始まるというのに、要は学校を休んでいた。
今日で五日目だ。
祐介は、誰も座っていない後ろの席を見つめた。電話をかけても誰も出ない。誰か要の家を知らないかと訊ねたが、誰も知ることはなく、寧ろ数人の生徒から行くことを止められたくらいだった。
祐介は、ふとC組の佐伯歌穂を思い出した。以前、要が幼なじみだと話していたことがあった。すれ違い際、何度か挨拶をしたことがある程度で、話したことはない。飛び抜けて美人というわけではなかったが、どこか目を引く大人びた雰囲気を持った少女、というのが、祐介の持っている歌穂への印象だ。祐介はC組へ行き、歌穂を呼び出してもらった。
すれ違う程度では気がつかなかったが、目の前に現れた佐伯歌穂は、祐介と大して身長差がない、女子にしては大きい背丈の少女だった。
「こんにちは、二戸神くん」
高すぎず低すぎない、クリアな声が祐介の名を呼んだ。
「こんにちは。ごめんね、突然呼び出して」
祐介は穏やかな口調で言った。歌穂は首を横に振って微笑んだ。
「実は、藤森の家を知っているかなって思って聞きに来たんだ」
祐介がそう言うと、歌穂は「カナちゃんの家?」と、瞳を大きくして復唱した。
「そう。ここ最近、休んでるだろ。期末も近いし、プリントとかノートを届けようかと思って。今日行こうかと思うんだ。でも、電話が繋がらないし、家が分からないし。それで、佐伯さんなら分かるかな、と思って」
「カナちゃん、ずっと休んでるの?」
「うん。知らなかった?風邪だって」
「……そうなんだ」
歌穂は祐介から目を逸らした。要が歌穂の手に触れてから、今日で六日目。六日間、一度も要を見かけていない。歌穂自身、罪悪感を感じながらも、今は要と顔を合わせずらく思い、なるべく要のクラスの前を通らないようにするなど、彼を避けていた。それでも、移動教室や合同授業で時々は会うだろうと思っていたが、一度も会わなかったこともあり、きっと要も自分を避けているのだろうと思っていたのだ。
廊下のタイルに目を向け、何かを考えるかのように黙ってしまった歌穂に、祐介は「佐伯さん?」と、心配そうに声をかけた。
歌穂は我に返ると、すぐに「ちょっと待ってて」と言って自分の席へ戻っていった。
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