第17話(2)
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要が見た歌穂のヴィジョンは、ホテルで三十代半ばぐらいの男と共にいる風景だった。歌穂が男から金を受け取ったヴィジョン、男がシャワーを浴びている最中、スマホの待ち受け画面を見ているヴィジョン。全て、歌穂の目線のものだ。妄想ではない、歌穂の経験した記憶のヴィジョンだった。たった一瞬、触れただけだった為、ヴィジョンはパズルのピースの様に断片的な物だったが、これだけでも十分推測は出来た。
「……意味、わかんねえよ……。金受け取って、知らない男と……」
「知らない人じゃないわ」
「それでも、金受け取ってりゃあ、十分、援交だろ?お前がそう思って無くても、相手はそう思ってるって事だろ?」
「私は」
歌穂はくっきりとした大きな二重まぶたを見開いた。意志の強い、綺麗な顔だち。同年代の女子よりも大人びた、色気のある赤い唇が、ゆっくりと動き出した。
「本気で彼を愛してるの」
「妻子持ちだ」
要は苦虫を噛み潰したような表情をして言った。歌穂のヴィジョンで見たスマホの待ち受け画面には、産まれたばかりの赤ん坊を抱いた女の画像が映し出されていた。
歌穂は消えそうな声で「そうよ」と言った。
「それでも、好きなの」
「誰なんだよ」
「塾の講師」
「……いつから?」
「二ヶ月前。数学担当で。個人的に何度か質問してたら、お茶でもどうって、誘われたの。何度かお茶しながら、数学教えてもらってて……」
要は黙ったまま、感情のない、人形のような表情で歌穂の話を聞いていた。
「私も好意を持っていたから同意したの。奥さんが居るなんて、始めは知らなかった。でも、居ることを知ったら、お金あげるから、今後も会ってくれないかって言われた。始めは断ってた。でも……。もう遅かった。私が、彼を本気で好きになってた。お金はいらないって言っても、けじめだからって、渡されて……」
「そんなけじめ、あるかよ」
要は持っていた箒を壁に投げつけた。歌穂は身体を小さく縮めた。
「罪の意識があるから、そんなもん渡すんだろ?向こうに愛なんかあるかよ。お前、ただ単に遊ばれてるだけじゃないか。だいたい、歌穂も歌穂だ。妻子持ちと分かってて、なんでそいつの言いなりになってんだよ」
「言いなりになんかなってないわよ」
歌穂は声を上げた。
「さっきも言ったでしょう?もう遅かったの。私が彼を愛しているの」
歌穂の言葉に、要は何とも言えない虚脱感に襲われた。
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