第16話(3)
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歌穂は炒め物を終えると、大鍋で沸かしていた湯に生麺を解し入れた。
「もう出来るから、お箸とか用意してくれる?」
歌穂が麺を見ながら言う。
要は黙って立ち上がり、テーブルを拭き、箸を置くと歌穂の隣に立ち、丼にスープの素を入れ、沸かしてあった湯でのばした。
歌穂はそれを見て、手際よく麺を湯切りし、丼に取り分け、炒め野菜を豪快に麺の上に乗せた。
「これ、カナちゃんのね」
野菜は麺を完全に覆い隠し、山となっている。要は礼を言うと、ふたり分の丼をお盆にのせ、テーブルに運んだ。
ふたりがテーブルに着くと、ラーメンを食べ始める。歌穂特製の野菜たっぷりラーメンは、ラーメン屋で食べるラーメンよりも美味しく感じた。そして、鮭のムニエルを思い出していた。そうだ、あの時、一人で食べるより、誰かと一緒に食事をすることが嬉しかったのだと、思い出した。嬉しくて、心が温かくなった。歌穂の優しさが有り難く、それだけで、何もかもが美味しく感じたのだ。たった今も、そうだ。
「うまいよ」
要は素直に感想を述べたが、歌穂は小さく咽せ、咳が収まると笑いだした。
「なんか、おいしいって、無理矢理言ってない?さっき、私があんな話ししたから」
要は食べるのを止め「そんなことないよ」と目を大きくしていった。
「本当、うまいよ」
歌穂は大きく頷くと「ありがとう」と言い、再びラーメンを食べ進めた。
食事が終わり、要が食器を洗っていると、歌穂はカウンター越しに「最近さ」と話し始めた。
「カナちゃん、何だか最近毎日楽しそう」
要は目だけを上げて、歌穂をちらりと見ると「そうか?」と言って、すぐに目を洗い物に向けた。
「そうだよ。二戸神くんと一緒にいるようになってから」
要は返事をせずに、眉だけ上げて見せた。
「二戸神くん、はじめっからカナちゃんのこと、嫌がってなかったんだよね?」
要は二年に上がった初日を思い出した。増悪の「心の声」だけは、どんなに力を押さえても聞こえてきてしまう。あの時、教室に入ってきた要を見て、大半の生徒が「面倒臭い奴が同じクラスだ」と心から嫌がっていた。一部の女子からは「気味が悪い」という感想までが聞こえてきた。だが、そのくらいの悪態は、要にとっては大したこと無かった。小学校の頃を思えば、あの頃の方が、もっと地獄だった。特殊能力のお陰で、クラス中から嘘つきだの化け物呼ばわり、気がつけば、全校生徒からエイリアンなどと呼ばれていた。そこへ来ると、現在はクラス中が自分を「単なる潔癖性」と思っていての心の声である。エイリアンと言われるよりも、何倍もましだった。
そんな中、二戸神祐介だけは違っていた。要が話しかけても、何も「声」が聞こえてこなかった。始めは、要の事を知らないのだと思っていたが、要を知ってからも、面倒臭いだの、気味が悪いだの思うことが、一切無かった。それどころか、普段の心の声が、二戸神祐介という人間からは、一切聞こえてこないのだ。
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